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不透明だった栽培原価、農業ICTで明瞭に~大分県の衛藤産業

富士通の食・農クラウド「Akisai」導入事例

 富士通株式会社は22日、ICTで農業経営を効率化する食・農クラウド「Akisai(秋彩)」を、農業法人である有限会社衛藤産業に導入、運用を始めたと発表した。

 衛藤産業は、面積15ヘクタール、圃場数55(ハウス・露地)の農場で、エン麦・キャベツ・サツマイモ・スイートコーン・スイカ・生姜・白ネギ・白菜・ライ麦などを栽培する大分県の農業法人。

 導入したのは、Akisaiの「生産マネジメント」。日々の作業実績や生育情報といったデータをモバイル端末やセンサーでクラウド上に収集。分析・利活用することで収益や効率性を高める“農業経営”を実現する。

Akisaiの製品体系。データの収集・分析・利活用を基に、農業の経営・生産・販売を支援する

 衛藤産業では「コスト集計」「圃場台帳」「写真検索機能」を活用。従来、栽培に関するコスト集計に関しては、納品伝票や日報などに記載された数字をExcelに入力して管理していた。しかし、品目ごとなどの細かな栽培コストを把握することは難しく、大まかな目標原価を基に商談せざるを得ない状況だった。

 また、日々の作業記録も紙の日報で管理していたため、記録データを分析して栽培技術の向上に役立てることはできず。見回りの際に写真を撮って圃場ごとの様子を観察するにしても、その作業負荷は大きく、従業員間でどう共有するかに頭を悩ませていた。

 「生産マネジメント」では、日々の作業実績や農薬・肥料・資材といったデータをモバイル端末などから簡単に入力できる。入力データやスマートフォンで撮影した圃場の写真を従業員全員で共有することも可能だ。

 これにより「圃場ごとの作業・生育の進ちょく状況の確認、振り返りの効率化」「施肥・防除状況の見える化による適期作業の実現」「データ活用・共有による従業員全体の栽培技術の向上」といった効果が上がったほか、蓄積されたデータから圃場ごとのコストを可視化・見直しを実現。「導入前と比較して肥料コストを約30%削減した」という。

 また、商談時の価格付けの根拠が明確となり、時には強気の交渉も実現。「単位面積あたり売上高が1.3倍に達する見込み」と、まさに経営に直結する効果が上がった。

Akisaiの製品体系。データの収集・分析・利活用を基に、農業の経営・生産・販売を支援する

川島 弘之