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横浜市と日本マイクロソフト、教育・女性支援・オープンデータで連携拡大

今回の連携協定はMicrosoft Surface Pro上に日本マイクロソフトと横浜市の両者が署名を行った。左から、横浜市教育委員会 教育長の岡田優子氏、横浜市長の林文子氏、日本マイクロソフト 代表執行役社長の樋口泰行氏

 横浜市および横浜市教育委員会と日本マイクロソフト株式会社は7月29日、2010年6月から締結している連携協定を拡大することを発表した。これまで取り組んできた人材育成支援の強化に加え、新たに女性の多様な働き方の支援、オープンデータ活用推進を盛り込み、都市が抱える課題に対して「対話と協働」により取り組んでいくとしている。

 日本マイクロソフト 代表執行役社長の樋口泰行氏は「この3年間、マイクロソフトは非常に良い形で横浜市の人材育成に貢献できたと思う。今回の連携拡大により、横浜市が国際都市としてのプレゼンスをさらに高めていけるよう、積極的な支援を行っていきたい」と語っている。

 今回の協定の正式名称は「横浜市及び横浜市教育委員会と日本マイクロソフト株式会社とのICTを活用した人材育成及び市内活性化に関する連携協定」で、有効期間は1年間となっている。2010年6月9日に締結した横浜市立横浜サイエンスフロンティア高等学校(以下、サイエンスフロンティア高校)における「将来を担う科学者などの人材の育成支援」にかかる協定を拡充したもので、

1.人材育成支援の取り組みをほかの市立高校にも拡充
2.ICTの活用による女性の多様な働き方の支援
3.オープンデータの推進による市内経済の活性化

の3点において横浜市とマイクロソフトが連携/協力していくことがうたわれている。

 今回の連携拡大は、マイクロソフトがサイエンスフロンティア高校に対して行ってきた人材育成支援が高い成果を上げてきたことがベースになっている。

 日本マイクロソフトでCTO(最高技術責任者)を務める加治佐俊一氏による授業、ソフトウェア開発者やWebデザイナーをめざす生徒が自宅で学習/活用できるようにするための無償プログラム「Microsoft DreamSpark」の提供、Windows 8アプリ開発ワークショップやプログラミング講座の実施などが行われてきたが、横浜市の林文子市長は「3年間で目を見張るようなすばらしい成果を上げることができた。この取り組みをほかの横浜市立高校の生徒8000名にも広げ、将来、科学者やエンジニアになりたいという子どもたちを育成/支援していきたい」と語っており、当初の予想以上の実績を得られたことが伺える。

 横浜市教育委員会 教育長の岡田優子氏も「現役の一流サイエンティストである加治佐CTOの授業は、生徒たちの目の色が違う。授業の内容が未来を作っていくのだと実感できる」とその効果の高さを強調する。

 今後、マイクロソフトと横浜市はほかの横浜市立高校に対してもDreamSparkの無償提供やプログラミング講座の実施を行っていく。

本連携のベースとなったのは2010年6月に締結された横浜サイエンスフロンティア高校における人材育成支援
横浜サイエンスフロンティア高校で挙げた成果を8000名の横浜市立高校の生徒にも拡げていく

女性の能力を発揮できる社会へ

 2点目の女性支援は、「待機児童ゼロ」などの施策で知られる横浜市としては使命とも言うべき取り組みだと言える。林市長は「女性の能力を活用し、発揮できる社会にしていくことは日本という国にとっても最も重要なミッション」と語り、これまで女性や若者に対して数々の就労支援を行ってきたマイクロソフトの力を生かしたいとしている。重点的な支援対象者は

・女性起業家
・子育てなどの理由からフリーランスで働くことを希望する女性
・困難を抱えたまま働くことができない女性

で、こうした女性たちに向けた起業家育成セミナー、ITスキルトレーニング、テレワーク事例やノウハウの紹介などをマイクロソフト主催で行っていくとしている。樋口社長は「マイクロソフト自身も全社的にテレワークを採り入れ、女性の能力を生かす環境を作ってきた実績がある。そのノウハウを多くの女性に伝えていきたい」と積極的な支援を行うことを約束している。

「待機児童ゼロ」を実現した横浜市にとって女性支援は重要なミッション。マイクロソフトの協力を得て女性の就業機会の拡大を図る

横浜市のオープンデータへの取り組みを支援

 3点目のオープンデータの推進は、横浜市がこれまで行ってきた官民挙げてのオープンデータにかかわる取り組みを、マイクロソフトがさらに支援していく形で行われる。
 林市長は「横浜市はオープンデータ流通推進コンソーシアム(総務省)や電子行政オープンデータ実務者会議(内閣官房)などに参加してきた実績がある。市民の関心も強く、横浜オープンデータソリューション発展委員会によるオープンデータカタログサイト“横浜オープンデータポータル”も開設されており、市全体がオープンデータで新しいビジネスを起こそうと動いている」と横浜市の積極的な姿勢を強調する。

 マイクロソフトはこうした横浜市の機運を後押しするべく、同社のクラウドサービスであるWindows Azureを無償提供するほか、市内企業へのMicrosoft BizSparkの提供、オープンデータの活用を推進するアイデアソンやハッカソンの開催、マイクロソフトがグローバルで蓄積してきたオープンデータのノウハウや事例の紹介、といった施策が予定されている。

 「Windows Azureのマーケットプレイスでは国連、欧州政府、米国政府、世界銀行など、多くのデータセットを提供しており、Excelへの直接ダウンロードなども可能。グローバルでオープンデータの流通基盤を支え、オープンデータによるアプリ開発を支援してきたマイクロソフトの実績を、横浜が国際都市としてのプレゼンスを上げるために役立ててほしい」(樋口社長)。

横浜市は官民挙げてオープンデータへの取り組みが活発な自治体として知られており、今回のマイクロソフトとの連携による経済的効果も大きく期待されている

 林市長と樋口社長は同じ時期にダイエーの再建事業で力を尽くした間柄でもある。「前職でも連携した林市長と再びこうした形で手を取り合えるのは光栄」(樋口社長)、「世界最高のICT技術をもつマイクロソフトの実績と横浜という街がもつパワーを組み合わせ、横浜から世界へと情報を発信していきたい」(林市長)と互いのポテンシャルに期待感を表明する両者。人材育成、女性支援、オープンデータ推進という3つの大きな課題を、1年の間にどれだけ前進させることができるのか、特に新しい取り組みであるオープンデータ推進による経済的効果に関しては今後とも各方面から注目が集まりそうだ。

横浜市長の林文子氏
日本マイクロソフト 代表執行役社長の樋口泰行氏

五味 明子