ニュース

Equinix、O-BICの支援により大阪に初のグローバル・データセンター設立へ

大阪進出を目指すグローバル企業に、トップクラスのIT基盤を提供

 エクイニクス・ジャパンでは9日、大阪外国企業誘致センター(Osaka Business Investment Center、以降O-BIC)支援のもと、大阪では初めてのグローバル・データセンター(IBX:International Business Exchange)「OS1」を設立すると発表した。またIBX設立に際しては、ケイ・オプティコムと関電エネルギーソリューションの協力も得る。新データセンター設立は、2013年内の予定。

 ケイ・オプティコムは関西一円に敷設した光ファイバケーブルを活用して、OS1の顧客に高付加価値通信サービスの提供をめざしており、異ルート構成による高信頼性を実現する、OS1専用のインターネットやVPNなどの回線サービスを提供し、ルータやサーバーなどの構築から運用保守までを提供する。

 また関電エネルギーソリューションは、関西電力グループの一員として電力事業で培ってきた技術力およびノウハウを持つ。関電グループの総合力を生かしたユーティリティサービスで、ユーザー企業の省エネや省コスト、省CO2のサポートを行うほか、エクイニクスが世界で展開するデータセンターの設計やメンテナンススキームと、自社に蓄積した技術や知見、経験を融合させ、OS1の構築と運用をバックアップする。

大阪に世界レベルのデータセンターを設置することを歓迎

O-BIC事務局長/大阪商工会議所国際部長の丸山新二氏

 O-BICは、大阪府をはじめ大阪市、大阪商工会議所ら官民一体で2001年に設立、運営された組織で、外国企業の大阪誘致および活性化に注力し続けている。2012年度までの誘致実績は312件。このうち米国企業が36件、国別で第3位(1位中国、2位韓国)となっている。

 O-BIC事務局長/大阪商工会議所国際部長の丸山新二氏は、「なんといっても世界トップクラスの通信事業者が利用し、かつデータセンターサービス業界ではグローバルシェアNo.1というEquinixが、大阪に世界レベルのデータセンターを設置するのだから、この地のITポテンシャルがさらに向上することにむすびつくだろう」と歓迎の意を表した。

 同時に「同社顧客の間でも、北京や上海、メルボルンなどと並び大阪でのデータセンター設置を希望する声が多い、と聞く。こうした顧客の反応は極めて心強く追い風になる」と期待を寄せた。

 Equinixは、米国シリコンバレーに1998年に起業したデータセンター事業を専業とする企業で、世界15カ国、31都市でビジネスを展開、100拠点以上にデータセンターを所有している。顧客はコンテンツをはじめ検索、eコマースなど4000社以上を抱え、ワールドワイドにおける年間収益は約19億ドルという。

 Equinix アジアパシフィック プレジデントのサミュエル・リー氏は「当社はすでに世界中にデータセンターを100以上擁している。これらはインターコネクション、すなわちすべてがネットワーク接続された環境にあり、これをわれわれはプラットフォーム・エクイニクスと呼ぶ。これを促進させてビジネス・エコシステムを作り上げていくことが目標。いまアジア太平洋地域は当社にとってもっとも急成長を遂げており、現在18のデータセンターがあるが、中でも日本はデータセンター・サービスに対する需要は極めて大きく、このたびわれわれが大阪にデータセンターを一番乗りで設置し19に増やせることは、この上ない喜び」と感想を述べた。

 「特にわれわれの強みは相互接続性。ネットワーク・ニュートラルなデータセンターとして、世界900以上のネットワーク・サービスへの接続と顧客間の接続性を提供すること。これをグローバルにもローカルにもビジネスでお役立ていただきたい」とアピールした。いまEquinixでは、日本および世界のグローバル・データセンター拡張に10億ドル以上の投資を行っているという。

EquinixのIBXグローバル拠点マップ
左から、Equinix アジアパシフィック プレジデントのサミュエル・リー氏、エクイニクス・ジャパン 代表取締役の古田敬氏、ケイ・オプティコム 代表取締役副社長の山崎幸郎氏、関電エネルギーソリューション 代表取締役副社長の水野孝則氏、O-BIC事務局長/大阪商工会議所 国際部長の丸山新二氏

 一方、エクイニクス・ジャパン 代表取締役 古田敬氏は「日本では2000年からビジネスを展開、この13年間、国内では200社以上の顧客を擁することができた。これまでに東京に3つのデータセンターを設置したが、2013年8月には4つ目が大手町に開設する」と着実なビジネスの成長を説明する。

 そしてこのたびの大阪市でのグローバル・データセンター開設について、古田氏は「グローバルなデータセンタープラットフォームがますます拡張していく中、われわれの戦略としても大阪を中心とした関西圏という市場をしっかりと位置付けたい。その背景の一つに、世界を結ぶインターネット回線は海底に敷設された光ファイバケーブルで接続されており、それが日本に陸揚げされる場所が、一つが東京近辺、もう一つが実は志摩近辺である点があげられる。これは、見方を変えれば東京も大阪も世界に同等に接続され、同等の価値を持つことを裏付けている」という。

 このことは、丸山氏の話にもあったが、エクイニクスが毎年同社のグローバルな顧客にとるデータセンターの望ましいポジションをたずねるアンケートの中で、大阪が常に上位4~5社にランクされるという結果にも反映されている。

 「それだけ大阪の市場は、グローバル・ビジネスを展開する企業にとって不可欠。そこにエクイニクスも貢献していきたい」とアピールした。

大阪をグローバルなインターコネクション・プラットフォームに組み込む意味

OS1が目指すところ

 なお、OS1は、コロケーション・スペース約3000平方メートル、800超ラック相当の収容設備数(開設時は320ラック相当の予定)で最新の免震構造を採用、災害時のリスクが少ない大阪市中心部に位置し、BCP(事業継続計画)の観点からも最適ロケーションを追及している。

 いま大阪は東京に次いで国内第二の経済圏でもあり、2008年~2012年までの年平均でインターネット・トラフィックは68%、その通信帯域も56%増加しているという(TeleGeography-Global Internet Geography Asia Reportから)。

 900以上の国際・国内の通信事業者も集結する同社IBXデータセンターの一つとして、OS1は国際化を推進し、大阪のネットワーク中心地である堂島とも直接光ファイバで接続し、グロ-バル・ネットワーク・ハブとして、大阪の交際通信基盤強化を目指している。

大阪におけるIBXデータセンター(OS1)

顧客同士をつなげるのがIBXの役割

 また今回クラウド Watchでは、昨今のデータセンター事情をサミュエル・リー氏にインタビューする機会を得たので、それもお届けしよう。

――設立以来、さまざまなデータセンターのユーザーを見てきて、昨今大きく変わったと思うか。

Equinix アジアパシフィック プレジデントのサミュエル・リー氏(左)とエクイニクス・ジャパン 代表取締役 古田敬氏(右)

 Equinixは13年前、米国に初のデータセンターを設立したが、このときはニュートラルなインターネットトラフィックとしてのインターコネクションに基づくビジネスモデルだった。

 その後ネットワークが拡張し、顧客数も増大した。こうした顧客の中で注目すべきは、GoogleやYahoo!など大きなコンテンツプロバイダも、われわれのデータセンターにアクセスしたいといってきたことだ。それは彼らが、われわれの大きな帯域幅を持つネットワークにアクセスすることで、ビジネスをさらに拡大させたいというニーズがあったからである。

――GoogleやYahoo!は、なぜ自らのデータセンターだけではビジネスが困難なのか。

 確かに、彼らも独自に大きなデータセンターを持っている。ビジネスが成長すれば、その方が経済的な面もあろう。しかし、彼らは独自のコンテンツを外部に向け発信していく必要があった。そうなると、彼らの外部ネットワークと接続しなければならない。

 そこでEquinixに白羽の矢がたてられた。彼らはEquinixのデータセンター内に接続ポイント(ポイント・オブ・プレゼンス:PoP)を設け、彼らのデータセンターとわれわれのデータセンターを光ファイバで接続している。

――それらの企業のビジネス拡大に伴う課題として考えられることは?

 ネットワーク上における重複、つまりムダを省きコスト面で効率化を図ったビジネスを展開したいという意向が大きかったと思う。当時は、より大きな帯域幅を得る場合は、ATTやNTTなどといった業者から調達するという手だてしかなかった。しかもバックアップのために、複数社との契約も余儀なくされた。

 しかしEquinixは、われわれのデータセンターを使いながらも、顧客の多くを占めるサービスプロバイダなどまで活用できるといったメリットを彼らにもたらすことが可能だ。しかも安価なインターコネクションを提供できる。まさに彼らにはベストな選択肢を与えることができたのではないか。

――Equinixでは、データセンターのことを一方でIBXと呼んでいるがその訳は。

 われわれのデータセンターには需要も供給も同時に存在する。ここで大切なのはお互いの存在をどのようにして知ることができるかだ。そこで顧客に対してMarketplaceと呼ばれるポータルを設け、例えば東京や香港で行っているサービスに関するリストをそのポータル内に預ける。そしてサービスを受けたい企業がアクセスすれば、その内容を確認でき、問い合わせも可能となる。

 こうしたことから、データセンターをわれわれはIBXと呼んでいる。われわれのビジネスモデルは、13年前とは大きく異なり、われわれの顧客同士がつながる、つまりビジネスにおける交流を深めるという形態に変ぼうを遂げたのだ。

――データセンター事業にとってもっとも重要なものを3つ挙げるとすると。

 すでに幸運にも、われわれは4000社のグローバルな顧客を擁しているが、第一はより多くの顧客獲得だ。いま順調に新規ユーザー企業も増え続けてはいるが、同時に大切なのは、第二の重要なファクタにもなるが、これまでの顧客への需要を満足させうるキャパシティを維持し続けることだ。現に、四半期ごとの収益でみると、既存の顧客からが約70%を占めるほどとなっている。

 そして第三がネットワーク技術そのものである。いま、われわれが重視しているアジア地域で、ベストかつ適切なデータセンター設置場所をリサーチすることはそれほど困難ではない。

 というのも、この地域はすでに十分なパワーを備えており、光ファイバ・ネットワークを整備しているところが多いから。われわれには10名ほどのコンストラクションおよびエンジニアリング、コントラクトなど各役割を持つチームが日々リサーチし続けている。

真実井 宣崇