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日本マイクロソフト、Windows AzureクラウドサービスのIaaS機能を正式提供開始

企業のオンプレミス環境とクラウドをつなぐVPN機能も

インフラストラクチャサービス

 日本マイクロソフト株式会社は17日、クラウドサービス「Windows Azure」において、「インフラストラクチャサービス」の正式提供を開始したと発表した。2012年6月よりTechnology Previewとして提供してきたIaaS機能「Windows Azure 仮想マシン(Virtual Machine)」(以下、仮想マシン)と、Windows Azureと企業のオンプレミス環境などを接続するVPN機能「Windows Azure 仮想ネットワーク」(以下、仮想ネットワーク)の両機能が利用できる。

 2010年から商用サービスを開始したWindows Azureは、インフラ機能に加えて、OSやミドルウェア層を含めてたPaaSとして提供されてきた。これは、「IT部門にとって負担になる運用を当社にお任せいただき、ユーザーは本来の業務であるアプリケーションの構築に専念していただく」との考え方に基づくもので、その方針の下で各種の機能強化が行われてきた。

 しかしユーザーにとっては、Windows以外のOSを含めたさまざまなシステムをクラウドへ移行したいというニーズも当然存在するし、異なるミドルウェアを含めて、もっと柔軟にクラウドを利用したいという要望もある。

 今回正式版となった「仮想マシン」機能は、こうした声に応えるものだ。サーバープラットフォームビジネス本部 クラウドプラットフォーム製品部の吉川顕太郎部長は、「この機能はWindows Server 2012 Hyper-Vをベースにしているので、ローカルで作ったVHDを持ってくることも、クラウド環境からローカルへダウンロードすることもできるし、Hyper-Vを使っているホスティングパートナーのシステムにも移行できる、ポータビリティの確保されたシステムである」と、その特徴を説明する。

 また「仮想マシン」では、Windows Server 2012/2008 R2以外に、CentOS、Ubuntu、openSUSEの各Linuxディストリビューションに対応するため、従来のWindows Azure(PaaS)では対応できなかった、Windows以外のシステムとの連携も可能になったとのこと。

従来はPaaSのみだったWindows Azureが、「仮想マシン」機能によってIaaSまで拡張された。PaaSよりは、ユーザー自身で管理しなくてはならない領域が増えるものの、システム利用の柔軟性はIaaSの方が上だ
Windows以外にLinuxもサポートされる

 そして、従来のPaaS機能と新しいIaaS機能は、いずれもWindows Azureの中に併存する形になるため、運用側はこれらの機能を統合管理することができるのも、大きな強みになる。吉川部長は「PaaSが持つ、運用を事業者に任せられるという特徴と、IaaSの持つ柔軟性を共存させられるのがWindows Azureの強みだ」と、これをアピールした。

PaaSからIaaSまでを組み合わせて利用できる
サーバープラットフォームビジネス本部 クラウドプラットフォーム製品部の吉川顕太郎部長

 一方で、既存の企業システムとの連携を意識した機能が「仮想ネットワーク」だ。Windows Azure上でVPNを提供し、ユーザー企業のイントラネットとセキュアに接続可能になるため、イントラネットをクラウド環境へ拡張することができる。これによって、Windows Azureを用いたハイブリッドクラウドが、これまで以上に利用しやすくなる。

 こうした状況を受け、業務執行役員 CTOの加治佐俊一氏は「PaaSからスタートしたWindows Azureは、こうしたインフラストラクチャサービスの提供により、フルスタックの展開が可能になった。パブリックでも、プライベートクラウドでも、すべてがそろった状態のサービスを提供できるのは当社だけだ」と述べ、その優位性を強調していた。

業務執行役員 CTOの加治佐俊一氏
シームレスなハイブリッドクラウド環境を実現する

 なお今回は同時に、価格面の見直しや「仮想マシン」におけるインスタンスの追加なども行われた。例えば「仮想マシン」機能のLinuxインスタンスを約25%値下げして4.99円/時間としたほか、PaaS機能のWindows Azureについても、約33%値下げした6.65円/時間へ変更されている。

 「仮想マシン」のインスタンスでは、RDBやSharePoint Serverなど、大容量メモリを必要とするアプリケーションに向け、1インスタンスあたり最大56GBのメモリを使える「メモリ集中型インスタンス」が利用可能となった。

 さらに、日本マイクロソフトでは国内独自の取り組みとして、パートナーとの協業強化を挙げている。加治佐氏は、「企業内で作り込まれたソリューションがたくさんあり、それをそのままクラウドへ移行するニーズがある。また、オープンソースソフト(OSS)を含めた開発環境という意味では、これからビッグデータを含め、さまざまな技術の進展が考えられる。パートナーとの連携は当社のコアになるので、一緒に盛り上げていきたい」などと述べ、システムインテグレータ、ISV、ハードウェアベンダーなどさまざまな立場のパートナーと協業していく姿勢を示した。

 これらのパートナーソリューションは、同日より順次パートナーから発表されていく予定だ。

(石井 一志)