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ワイズ、Citrixユーザー向けゼロクライアントの新製品「Wyse Xenith 2」

 ワイズテクノロジー株式会社(以下、ワイズ)は6日、Citrixユーザー向けゼロクライアントの新製品であるWyze Xenith 2をリリースした。仮想化デスクトップによって、セキュリティの強化やクライアントの管理コスト削減を検討している大企業や、仮想化デスクトップ環境の導入を検討している企業向けの製品とのこと。

 特長としては、初代の製品よりも30%小型化したことや、起動時間が6秒と短いこと(スタンバイ状態からは2秒で復帰)、またパフォーマンスを強化することでCAD/CAMなどのアプリケーションを仮想化デスクトップで実現できる点にある。価格はオープンとしながらも、他のシンクライアント製品と同様に3万円代での提供を予定しているそうだ。

Wyse Xenith 2
ジェフ・マクノート氏

 米Dell Wyse マーケティングおよび戦略最高責任者兼顧客対応責任者のジェフ・マクノート氏によれば、アメリカでは様々な企業が仮想化デスクトップ環境の導入を進めているという。IDCの出荷台数の調査によれば、仮想化デスクトップ市場は現在24億ドルの規模があり、2016年までに38%伸び、33億ドル規模に発展するという。さらに仮想化デスクトップの導入は、アジアにおいて2016年までに2倍になるそうだ。

仮想化デスクトップの導入が加速
アジアの仮想化デスクトップ市場

 実際に日本においてシンクライアントやゼロクライアントの導入も進んでいるという。ワイズテクノロジー株式会社 日本法人代表 松浦淳氏によれば、「数千台、数万台規模による仮想デスクトップの導入事例が増えている」と述べ、ワイズの場合この2年で売り上げが急激に伸びているとのこと。この伸びは今後も続いていくだろうと松浦氏は予測する。

松浦淳氏
ワイズの売上推移

 また、松浦氏は2011年の日本のシンクライアント市場(出荷シェア)において、ワイズのシンクライアントの製品が30.9%となり、ワイズがシンクライアントの市場においてナンバーワンのシェアになったと語る。また、4位のNEC社とはフルOEM契約を結んでいるため、そのシェアを合わせるとワイズの製品のシェアは40%を超えるそうだ。

 さらに、シンクライアントよりもセキュアで管理コストを低減できるゼロクライアント製品においては、世界の出荷台数でナンバーワンであるとジェフ・マクノート氏は述べ、シンクライアント、ゼロクライアント市場において、ワイズの優位性を強調する。

2011年シンクライアント出荷シェア(日本国内

 ワイズの製品が伸びている理由として松浦氏は、仮想デスクトップに求められるニーズが数年とは大きく変わった点を指摘する。「従来のシンクライアント端末自体にゼロクライアントやハイエンドなどバリエーションが増えたことや、モバイル、スマホ・タブレットといった端末への対応が求められるようになってきている」。

 実際にワイズ社の販売比率を見ると、2009年ではワイズ独自のOSであるWyse ThinOSが大半を占めていたが、2011年ではWindows EmbeddedやMobile(ラップトップやタブレットなど)の比率が高くなっており、仮想化デスクトップを導入する企業が増えてきていることにより、ユーザーニーズの多様化が進んでいると松浦氏は語る。また、モバイル向けのWyse PoxketCloudが北米に次いで日本でダウンロード数が多いのも、日本のユーザニーズの多様化の表れではないかとした。

2009年度の日本市場におけるWyse製品販売比率
2011年度の日本市場におけるWyse製品販売比率
多様化するユーザーニーズ

 そのようなユーザーニーズに対して、ワイズではハードウェアよりもソフトウェアに力を入れている点をジェフ・マクノート氏は挙げる。実際にワイズのエンジニアの95%はソフトウェアのエンジニアで、残り5%がハードウェアのエンジニアだという。今後も、ソフトウェア領域には力を入れ、クライアントとの連携を強化していくそうだ。

 特にセキュリティ、バーチャリゼーション、マネジメント、プロビジョニングの4つの領域に注力し、仮想化デスクトップに関連するアプリケーションはどのようなものでも提供できるようにし、どのようなデバイスでも同じように使えるようにするのが目標であるとジェフ・マクノート氏は強調する。

ソフトウェアとクライアントの連携

 仮想化デスクトップの導入においては、セキュリティと管理容易性の2つの指標が大切だという。ジェフ・マクノート氏によれば、この2つが仮想化環境におけるTCO(総保有コスト)の大部分を占めるからだそうだ。

 まず、現在あるPC資産を利用しようとしてセキュリティの観点からコストが増加する。また、クラウド環境とクライアント環境の両方にソフトウェアがあることで管理が倍になり、情報システム部門の管理コストが高くなるとのこと。

 長期的に見た場合、仮想化デスクトップの導入によって、それらのコストを大きく下げる事ができると松浦氏は語る。仮想化デスクトップ環境の導入は1年では難しく長期的な視点が求められると言えるだろう。

目的別の製品選定

 また、ジェフ・マクノート氏はアメリカで発表されたばかりで、日本の市場投入は来年を予定しているCloud Client Managerについて紹介した。

 Cloud Client Managerは、企業規模を問わず、様々なデバイスを管理できるソフトウェアだ。「フルマネージド」「BYOD」「セルフマネージメント」の3つの特長によって、デスクトップやタブレット、シンクライアント、ゼロクライアントなど、様々な端末に対応し、個人所有のデバイスもセキュア管理できるようになるという。

 管理画面ではユーザーが利用している端末の状態を管理でき、さらにデバイスの位置情報も合わせて把握できるそうだ。これによりデバイスの最適な利用が可能になるとジェフ・マクノート氏は語った。BYODなど多様化する企業内のデバイスに対応するため、今後日本の企業において注目される可能性の高いソリューションと言えそうだ。

Cloud Client Maneger
ユーザーと端末の管理

 最後に、デルのワイズ買収について基本的に現在のまま、業務や顧客の対応に変化はないそうだ。日本においても、それぞれの顧客のチャネルを重視し、両社のビジネスを壊さないように、相乗効果をはかっていくとのこと。

(曽我一弘=パイソンネットワークス)