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キヤノン、ヘッドマウントディスプレイで現実とCGを融合する「MRシステム」
2012年6月18日 11:00
キヤノンは6月18日、現実世界とCGを融合し、製品設計時の開発期間の短縮を実現するMR(Mixed Reality:複合現実感)システムを、2012年7月下旬より発売すると発表した。価格は個別見積もりとなる。
MRシステムはMixed Reality(複合現実感)という名前通り、ヘッドマウントディスプレイに装着された左右一対のカメラで撮影した映像をパソコンに送り、パソコン内の3D CGと合成した画像をヘッドマウンドディスプレイ内部に搭載されたディスプレイに表示する。
近年ゲームや広告などで活用されているAR(Augumented Reality:拡張現実感)もMRの一種で、現実世界の映像にCGを重ね合わせる技術だが、キヤノンのMRシステムは、ユーザーの任意の視点から、実寸大のCG映像を体感できるという特徴を持つ。
具体的にはたとえば、車のCGであれば、3D CGの車の周囲を回って見たり、シートに座った位置から、手を3D CGのスイッチ類に伸ばして操作インターフェイスを確認するといった、CGがあたかも目の前で現実世界に存在しているかのような臨場感を提供することができる。
MRを実現する技術
キヤノンでは、リアルの映像とCGを重ねるために、現実空間とCGの位置を画像処理で合わせるMRシステム専用のマーカーを独自開発。ヘッドマウントディスプレイのビデオカメラが撮影したマーカーを基準として、ヘッドマウントディスプレイの位置と姿勢をリアルタイムで計測できる。1コマごとに推定したヘッドマウントディス例の位置・姿勢に合わせてCGを描画することにより、ユーザーの姿勢の変化や動きに瞬時に対応した合成映像を提供する。
さらに、ビデオカメラの光軸と、小型表示ディスプレイから瞳に入射する光の光軸を一致させることで、ビデオを通しての映像にも関わらず、肉眼と同じような実寸感覚が得られる仕組みだ。
MRシステムのヘッドマウントディスプレイは、高度な光学設計の技術を活かした新開発のビデオシースルー型を採用。映像を重ね合わせるだけではなく、違和感のない視界を実現させるために、特殊な形状の3面から構成される自由曲面プリズムを採用、光学系収差による周辺部分の歪みの少ない映像を実現した。
設計・デザイン分野をメインターゲットに、将来的にはコンシューマ製品への展開も
キヤノンでは、設計時にMRシステムを活用することで、ユーザーの姿勢の変化や動きに瞬時に対応する実寸大の3次元CGを用いて、製品のデザインや操作性の評価などが可能なため、MRシステム導入により試作回数を削減でき、開発期間の短縮でけでなく、コストや環境負荷が低減できるとしている。
MRシステム用にアプリケーションソフトウェアを開発するパートナー向けには、MRプラットフォームソフトウェア開発者用キット“MS-100”、“MS-100L”を用意する。
販売面では、三次元データの業務活用が進んでいる工業デザイン分野や設計分野を皮切りに販売活動を開始。国内市場では、3D-CADを活用したソリューション分野で実績のあるキヤノンITソリューションズが主体となって販売する。海外市場における販売については、今後各国の現地法人が検討していくという。
キヤノンでは、機械設計以外にも、たとえば、工場内にロボットを配置する際に事前にレイアウトに問題がないかシミュレーションにより確認するといった利用や、建築などの用途も想定。さらに、将来的には医療分野における外科手術シミュレーションをはじめとした専門職のトレーニングなど、さらに幅広い分野への展開を検討していくとしている。
キヤノンでは、6月20日から22日まで東京ビッグサイトで開催される3D技術・映像技術の展示会「第20回 3D&バーチャル リアリティ展(IVR)」に、MRシステムを出展する。展示ブースでは、限られた人数にはなるが、来場者も実際にMRシステムを体験できる予定だ。