NEC、Ethernetを通じてPCをスケールアップできる技術「ExpEther」
応用アプライアンス事業部 技術部長の岡山義光氏 |
製品構成 |
日本電気株式会社(NEC)は24日、ネットワーク(Ethernet)を利用してコンピュータの構成を拡張する技術「ExpEther(エクスプレスイーサ)」に対応した製品群を発表した。6月22日より販売する。
ExpEtherとは、コンピュータ資源をEthernetにつなげて利用できる技術。言い換えると、PCI Expressバスを一般的なEthernet上に拡張する“PCI Express over Ether”を実現するもので、「コンピュータとネットワーク(Ethernet)の垣根を越える、世界初の画期的技術」(応用アプライアンス事業部 技術部長の岡山義光氏)としている。
製品構成は、ホストコンピュータに搭載する「ExpEtherボード」、CPU/GPU/HDDなどの各種デバイスを搭載し、離れた場所に設置できる「ExpEther I/O拡張ユニット(以下、拡張ユニット)」、遠隔からホストサーバーに接続するクライアント端末「ExpEtherクライアント」の3種類。
ホストコンピュータのPCI ExpressスロットにExpEtherボードを搭載し、拡張ユニットにはCPU/GPU/HDDなどのデバイスを搭載する。ExpEtherボードと拡張ユニットにはそれぞれ「ExpEtherエンジン」が実装されており、同エンジンがEthernetを通じてPCI Expressパケットをやり取りする。「すると、ホストコンピュータはあたかも自身の内部に接続されたかのように、拡張ユニットに搭載されたリソースを活用できる」(同氏)という。
ExpEtherボード | 拡張ユニット |
ExpEtherクライアント |
PCI Expressバスを一般的なEthernet上に拡張する技術 | 実際の接続イメージ |
拡張ユニットは増設も可能だ。このため、従来であればサーバーの筐体サイズや電源容量などの制限によって拡張できなかった各種デバイスを、制限なしに接続して利用可能となる。また、構成フリーで利用できるのもメリットで、「例えば、GPUを複数搭載した拡張ユニットをつなげば、スーパーワークステーションとして利用できるし、HDD/データベースエンジンを搭載した拡張ユニットをつなげば、データベース専用サーバーに早変わりする」(同氏)という。
さらにホストコンピュータと拡張ユニットとの接続にはEthernetを利用するが、データ転送にはTCP/IPを使用せず、ホストコンピュータに内蔵されたデバイスでの転送と同じ高速データ転送(DMA転送)するため、高い処理性能を実現できるのも特徴。ただ、TCP/IPを使わないため、ルータ越えはできない。「そこが最大の制限事項と言えるが、L2 over L3といった技術も出てきているので、早晩解決できるだろう」(同氏)としている。
構成フリーで利用できるのも特徴 | TCP/IPは使わずDMA転送するため、高速データ転送が可能 |
ExpEtherクライアントは、ホストコンピュータからディスプレイ、キーボード、マウス、USB、サウンドなどのインターフェイスを切り出したもので、ホストコンピュータを遠隔から操作することができる。ホストコンピュータや拡張ユニットは遠隔地に設置することができるため、実際に操作する場所のスペース節約にも貢献する。
すでに大阪大学で採用が決まっており、「この事例でも、ホストコンピュータと拡張ユニットをサーバールームに置き、教室にはExpEtherクライアントだけを置くことで、従来高性能PCを教室に置いていたことに起因する、スペースや騒音の問題を解消している」とのこと。稼働開始は2012年10月からで、吹田、豊中、箕面の3キャンパスで合計約600台の高性能PCにExpEtherの技術を適用する予定という。
価格は、ExpEtherボードが2万5000円から、拡張ユニットが4万円から、ExpEtherクライアントが3万5000円から。既製品の販売のほか、OEMやLSI販売なども進め、2012年度から3年間で関連製品も含め150億円の売上を目指す。