キヤノンMJとキヤノンITS、ティア4をクリアするデータセンターを建設


 キヤノンマーケティングジャパン株式会社(キヤノンMJ)とキヤノンITソリューションズ株式会社(キヤノンITS)は4月19日、敷地面積1万6532平米、2300ラック相当の新データセンターを西東京に建設、10月にサービス開始すると発表した。西東京データセンターは、キヤノンMJグループで拡大するアウトソーシングサービス事業、クラウドサービス事業の中核拠点となる。

 東日本大震災以後、データセンター需要は高まると同時に、より高い省エネ性能やセキュリティ、堅牢な立地などを求める企業が増えている。キヤノンMJおよびキヤノンITSは、こうしたニーズに応えるため、150億円を投じて西東京データデンターを建設するもの。

 キヤノンMJおよびキヤノンITSは、最新設備を備えた西東京データセンターを中核として活用し、グループのクラウドサービス基盤「SOLTAGE」やBPOサービスを強化することで、アウトソーシングサービス事業を拡大する狙い。キヤノンMJグループは、ストック型ITサービス事業は、データセンターサービス、システム運用サービス、クラウドサービス、BPOサービス、保守サービスで構成される“ストック型ITサービス”事業全体で、2015年に約500億円の売上を目指す。


西東京データセンターの紹介動画


「ティア4」レベルの最新ファシリティ、3Dボディスキャナも備える7段階のセキュリティ

 新たに建設する西東京データセンターは、地盤が強固な武蔵野台地に位置し、海岸線から遠く津波や液状化の危険度が低い。また、近辺に活断層もなく、東京都の「地震に関する地域危険度測定調査」では、建物倒壊・火災・避難すべてでもっとも危険度の低い「1」にランクされた場所だという。

 また、東京では大災害の発生時には環状7号線を境に、外から内側へは車が入れなくなる規制が行われるが、環状7号線より外側のため非常時にもアクセスできる立地にある。

 米国ではデータセンター業界の企業が集まり設立した組織「The Uptime Institute(TUI)」が作成した基準「Tier Performance Standards」がデータセンターの信頼性基準として普及しつつある。このティア(Tier)は建物・電気設備・空調設備・セキュリティについて、それぞれティア1からティア4まで4つのレベルを規定している。今回建設する西東京データセンターは最高レベルとなる「ティア4」を満たす施設となっているという。なお、米国では地震リスクに対する規定はないが、日本では地震による予想最大損失額(PML:Probable Maximum Loss)が規定されており、ティア4ではPML 10%未満となっている。

新データセンター 5つの特長施設概要ティア4レベルのファシリティ

 また、耐震・免震構造でも、水平加速度を低減する基礎免震構造のほか、清水建設の独自技術である縦揺れ制震構造を採用。制震ダンパーおよび縦揺れを低減する架構計画により、地震時の縦揺れによる上下動応答加速度波形で見て、上下動応答を30%程度低減することができるという。

 設備面ではこのほか、床荷重1平米あたり1.5トン、1ラック当たりの提供電源最大20kVA、床下高さ1000mmなどハイスペックを実現。そのほか、局所空調機による冷却や、アイルキャップ空調方式もオプションで利用可能としている。

 セキュリティ設備では、有人受付、ローターゲート、3Dボディスキャナー、X線検査装置、エレベーター内ICカード認証、生体認証、ICカード認証・暗証番号、電子錠などのラックキーなど7段階のセキュリティを装備。監視カメラを設置した。とくに、3Dボディスキャナを備えたデータセンターは国内ではまだ非常に少ないという。

 データセンター全体の消費電力については、国内データセンターではPUE 1.5~2.0が一般的であるところ、高効率な空調システムなどにより、PUE 1.4となっている。PUEはデータセンターにおけるエネルギー効率を示す基準で、「データセンター全体の消費電力÷IT機器の消費電力」で求められ、「IT機器の消費電力=データセンターの全消費電力」であるときにPUE=1.0となる。

 また電力供給については、2つの変電所から電力供給を受けるほか、万一の停電の場合には、UPSに切り替わると同時に自家発電装置が起動、自家発電により72時間稼働できる設備を備えた。自家発電装置の燃料供給についても複数の燃料供給会社と優先供給契約を締結するという。

 システム運用サービス面では、運用サービスの業務設計や運用管理、改善、24時間365日の監視などITILをベースとした運用・保守サービスを提供。キヤノンITSの沖縄データセンターを活用したバックアップサービスやディザスターリカバリー(災害時復旧)サービスも用意するという。

耐震・免震設備。縦揺れ制震構造を採用した床荷重、空調や冷却、床下高さ1000mmなど、高い基準を満たす仕様を採用引き込み回線のキャリアには制限がなく、柔軟な設計が可能


PUE 1.4の設計システム運用サービスのイメージシステム運用サービスの全体概要


関連情報
(工藤 ひろえ)
2012/4/19 11:00