日本HP 岡副社長、「PC事業は今後もコア事業として継続」を改めて強調
~スレートPC発表会で
日本ヒューレット・パッカード株式会社(日本HP)は11月29日にWindows 7を搭載したスレートPC「HP Slate 2 Tablet PC」を発表した。発表会で、同社副社長執行役員パーソナルシステムズ事業統括 岡 隆史氏は、2011年度決算を踏まえた事業方針や、8月に大きく報道されたPC事業の見直しについて改めて説明を行った。
■2011年度決算~売上は3%減だが、利益率は1%近く伸びる
日本ヒューレット・パッカード株式会社 副社長執行役員パーソナルシステムズ事業統括 岡 隆史氏 |
2011年度決算(10月~11月)について、売上は約3.1兆円と対前年比マイナス3%となったが、利益は約1800億円と対前年比13%増、利益率も5.9%と対前年比0.9%と1%近く伸びたと数字を上げた。
8月のPC事業見直し発表があった第4四半期のPersonal Systems Group (PSG)の売上げについては、売上げは対前年で2%減少しているものの、企業向けは5%増と好調。半面、個人向けがマイナス9%となっていると数字を上げた。「個人向け市場では、ユーザーの財布はひとつなので、スマートフォンやタブレットが出てきた時に、ノートPCを買い換えるか、新しいデバイスを買うかという選択になる。モバイル機器が多様化する中で、HPとしてすべての製品を網羅することができなかったのが、個人向けPCがへこんだひとつの要因」だと分析した。
しかし、PC事業全体としては、「台数ではデスクトップ、ノートPCとも堅調に成長、売上げは微減したものの、利益も台数も伸びた。世界的なシェアについても、7~9月も伸ばすことができた。PCは、企業/個人、DT/NB、すべてのジャンルでナンバーワンを堅持。ワークステーションやシンクライアントは引き続き堅調に伸びている」とした。
■PC事業の継続メリットを再確認
岡副社長は、米HPが8月の2011年度第3四半期(5~7月期)決算報告で、PC事業を含むPersonal Systems Group (PSG)のスピンオフなど、大幅な事業再編を計画していることを発表して、「世界最大のPCメーカーであるHPがPCからPC事業から撤退か」と業界に衝撃を与えた件についても改めて説明した。
「PCビジネスに対するHPの期待は、成長のドライバーだった。そのPC市場の成長がスローダウンしたために、事業見直しを発表した。なぜ決まっていないものを発表したのかという点については、事業分離でオペレーションするためには、社内で調査を行う。結果的には、PCビジネスを今後もコアビジネスとして推進することになったが、会社が社外に黙って調査をしても、ワールドワイドで30万人の社員がいるから絶対にばれる。そうなるとインサイダー的な動きをする人間も出てくる可能性もあり、法的にもきれいに対処できるという点からも、発表を行った。」(岡副社長)
岡副社長は、「調査を行った結果、継続するメリットが再確認できた。顧客の消費サイクルなどから、コンシューマーがマイナス成長でも、企業向けは引き続き堅調で、PCはすべての製品セグメントでマーケットリーダーとして市場を牽引していくポジションにいる。また、製品の調達力の点でも、メモリやドライブなど多くの製品と共通する部品がある。PCはいちばん身近に触れられる製品で、いちばんロゴを目にする機会が多い。コーポレートブランド戦略の視点からもコア事業となる」とPC事業継続のメリットを上げた。
2011年度実績 | 米国ではPOS端末、デジタルサイネージ製品なども市場に投入している | PC事業はクラウドなどとのシナジーも追求、今後もHPのコア事業として継続 |
■「いまHPに欠けているのは経営スピードと革新への投資」
市場についても、「日本ではPCはマイナス成長が続いている。景気の変動の中で、PCの導入が景気を無視して進むことはないが、世界に目を向ければPCの普及率はまだ18%と2割を切る。今後ITと無縁でいられる国はないということを考えると、まだまだ伸びしろはある。個人ユーザーの視点でも、5年後も現在のPCのままでいいという人はいないだろう。更新ニーズは堅調に存在し続ける。今後はPCの隣接ビジネスとしてクラウドサービスなど、PCをコアにしたソリューションの市場も生まれている」と説明。先進国以外に目を向ければPC市場は今後開拓の余地が大いにあると指摘した。
その上で、「いまHPに欠けているのは経営スピードと革新への投資。それをいま試されている」とHPの課題を挙げた。今後は、「PC、エンタープライズ、プリンタと分かれているが、それぞれがひとつの顧客組織に対していちばんいいものを提供しようということで、シナジーを出す方向に切り替える。PCはインストールベースで最も多いという点でも大事なビジネスだ」。と述べた。
PC以外の製品については、米国でPCとタッチパネルのついた自販機やITソリューションを組み合わせたデジタルサイネージ製品、PCをベースにしたPOS端末、スレートPCにバーコードリーダーが付いた製品など、バックエンドにソリューションが付いているものもどんどん品揃えしていると紹介。
POS端末については、市場参入して8年ほどだが世界で第2位のシェアを占めていると説明、「PC以外の製品もどんどん進めている」。日本では東日本大震災の影響のひとつとして、シンクライアントのマーケットが非常に伸びており、「来年爆発すると思う」とコメントした。
岡副社長は、今回HPとしては日本市場ではじめてのタブレット製品投入となるが、今後も「こういう使い方をするならこれが一番いいじゃないという製品を出し続けていく」として、今後も製品ラインナップを拡充し、世界シェアナンバーワン企業としてPC事業をコア事業として推し進めることを改めて強調した。