ニュース
IIJ、ネットワーク、SaaS、クラウドサービスを2012年から海外で本格展開
2011年10月26日 06:00
IIJグループでは2010年に旧AT&Tジャパンのビジネスを買収し、IIJグローバルソリューションズを設立。ネットワークサービスの海外展開を開始。タイで駐在員事務所をバンコクに開設、中国では上海市で2012年2月より現地法人を立ち上げる。
IIJ 代表取締役社長の鈴木幸一氏は、「かつては国益とインターネットのハブ論というものが一体になっていたが、インターネットは“接続する、トラフィックを運ぶ”という時代から、クラウド・コンピューティングの時代になってきた。アジア各国も従来のハブ論から、サービスの品質で選ぶように変わってきている」として、物理レイヤの時代からサービスレイヤの時代への移行を指摘。
「今後ネットワークをベースにしてさまざまなプラットフォームサービスを作って事業化していく、クラウドのプラットフォームをアジア・米国でも展開していきたい。米国ではすでに事業展開しているが、アジア展開について新しい取り組みを開始する」として、北米とアジア10数カ国でビジネス展開を行うことを表明。「まずは4~5年で100億くらいの売上げ規模を目指して展開する」と述べた。
IIJ GIOのクラウド基盤とAT&Tジャパン時代に培ったノウハウでグローバル展開へ
IIJグローバルソリューションズ代表取締役社長 岩澤利典氏は、「日本のマーケットが人口の減少にともない縮小していくと、家電や自動車だけでなく、さまざまな業種で海外展開の動きが活発になってくるだろう。また大震災後、事業継続性の観点からもグローバルネットワークのニーズが高まっている」とグローバル展開への背景を説明。
そうした市場ニーズに応えるべく、「ネットワークをベースにして様々なプラットフォームサービスを作って事業化していく、クラウドのプラットフォームをアジア・米国でも展開していきたい」と述べた。
岩澤氏は、「回線が止まるとビジネスが止まってしまう。いかに止まらない形でネットワークを提供していくかが重要になる。海外では、ローカルのキャリアの品質は日本に比べて厳しいものがあり、冗長化する必要がある。そんな中で、グローバルなキャリアとローカルなキャリアの回線をニーズに合わせて提案できるソリューションを用意する」とAT&Tジャパン時代からの経験と提携の蓄積による強みを強調。
グローバルネットワークアウトソーシングサービスでは、IIJグローバルの国内でのノウハウを活かして海外展開すると同時に、AT&Tジャパン時代から培ってきた経験を含めた資産も活用。「『回線だけが必要』とか、『セキュリティも含めて』、『データセンターもいっしょに』など、全体としてのソリューションを提供してほしいというニーズがある。現地のSIerも含めてソリューションを拡充していく」とした。
岩澤氏はまた、世界200カ国以上をカバーする国際インターネットVPNサービス「Net de! World」について「海外側のインターネット回線からVPN装置までワンストップで提供。VPN装置の故障時のオンサイト保守にも対応する」と述べた。IIJグローバルでサービスをワンストップで提供し、支払い処理もIIJグローバルのみ、国内1社への支払いで済むため、顧客企業では事務的な煩雑さもなくなるとした。
グローバルネットワークアウトソーシングサービスも国際VPNも、ヘルプデスクはAT&Tジャパン時代から培ってきた多言語でのサポート体制を提供。日、英、中の3カ国語による多言語ヘルプデスク機能を提供。エンドユーザーヘルプデスク機能も提供する。
また、ルーターなどのネットワーク機器の設定を自動化し、運用開始を遠隔で行うIIJ独自のサービス「SEIL Management Framework」(以下SMF)についても海外展開を行う。岩澤氏は、「SMFは、国際ネットワークのような広域にわたるネットワークの負荷を大幅に軽減するのに有効」だと説明。
SMFは、センター側から接続情報を自動的に設定する仕様で、ジュニパーネットワークス社と提携を進めているという。日本国内では、すでにSMF機能をジュニパーネットワークス社のルーターに搭載するソフトウェアを日商エレクトロニクスが開発し、日本国内で提供中だが、これをアジア地域を中心に、ジュニパーネットワークスとともに拡販を準備中だとした。
また、ソフトウェアルーターについても、IIJ独自開発のルータ「SEIL」の機能は、ソフトウェアルータ「SEIL/x86」としてすでに提供されており、このソフトウェアルータの海外展開も準備中であると述べた。SMF機能を利用したIIJグローバルのVPNサービス「IIJ Global Smart WANサービス」についても、海外で順次展開する予定だという。
SaaS型サービスでは、資産管理サービス「GLASS(Global Asset & Security Management Service)」と、マネージドビデオ会議サービスの海外展開を予定している。これらのサービスも日・英・中の多言語でサポートを行う。
「GLASS」は、「GLASS」はIIJのクラウドサービス「IIJ GIO」を基盤として構築したSaaS型の資産管理サービス。ネットワーク機器、サーバー、タブレット端末やスマートフォンなどPC以外の機器を含めたIT資産の統合管理機能を持ち、国内外のIT資産とセキュリティを本社で一元的に管理できる。また、不正PC接続の検知および遮断、リモートコントロールなど従来のSaaS型資産管理サービスでは対応していない拡張機能も提供できる。岩澤氏は、「日本から海外進出する企業にとって、大きな課題のひとつとなるITガバナンス強化に有効」とメリットを強調した。
マネージドビデオ会議サービスは、グローバル環境でのビデオ会議サービス。クラウド型相互接続サービスである点が特徴で、顧客企業内だけでなく、顧客企業同士がテレビ会議をすることができる。
岩澤氏は販売について、「海外展開は1社では厳しいので、複数のパートナーと提携を行い展開していく。販売パートナーは、特にアジアではこれから大きく成長が期待できるマーケットなので、現地の企業の需要を取り込んでいくことが重要と考えている」とコメント、中国などアジア市場では現地パートナーが非常に重要になると述べた。
クラウド基盤サービス「IIJ GIO」も世界展開へ
IIJグループではクラウド基盤サービス「IIJ GIOサービス」自体も海外展開を進めている。IIJ 執行役員 第三事業部長 兼 国際事業推進室長の丸山孝一氏は、「日系企業の海外へのビジネス展開のサポート、および現地のクラウドサービス需要の拡大を捉えるため、海外でも日本と同様に「IIJ GIO」を利用できるよう、環境を整備する」と述べた。
すでに米国では今年2月よりクラウドホスティングサービス「Point Red」を、8月よりプライベートクラウドサービスを提供している。さらに年内に、パブリッククラウドサービス「IIJ GIO」の提供を開始する予定だ。
中国では、2012年2月に現地法人を設立し、同月よりプライベートクラウドサービスの提供を予定。2012年度上期よりパブリッククラウドサービス「IIJ GIO」の提供を予定。その他のアジア・欧州各国では、2012年度より順次提供を予定している。
クラウドサービス「IIJ GIO」の海外展開にあたっては、「インフラ提供や運用、販売などにおいて現地パートナーと提携してビジネスを展開する予定だが、とりわけ販売パートナーについては、日系企業だけではなく現地企業も取り込めるようなパートナーと各国で提携する」。
メールサービス、セキュリティサービス、仮想デスクトップサービスなど日本で展開中のSaaSサービスの提供も検討しているという。すでに200社ほどとなったIIJ GIOのSaaSパートナーの海外進出のサポートも行っていきたいとした。
「IIJ GIO」ではユーザー比率の高い魂胆津プロバイダー向けのIaaS基盤とソリューションの提供も予定。現地携帯電話キャリアとの提携による課金ソリューションの提供や、現地パートナーとの提携によるコンテンツのローカライゼーションの提供などを予定する。
クラウド基盤としてのコンテナ型データセンターの海外展開も検討中だという。丸山氏は、「海外では数十台を設置する国内のデーターセンターと違って、コンテナ型1台だけを工業団地に設置するなど、小規模なデータセンターも検討していくことになるだろう」と述べた。
海外進出の拠点となるのは、米国は1996年に設立したIIJの100%子会社であるIIJ Americaで、ニューヨーク、ロサンゼルス、サンノゼの3拠点を持つ。中国では2012年2月にIIJグローバルの100%子会社として現地法人「IIJ Global Solutions China」を設立し、現地の大手キャリアやSIerと提携して事業を展開していく。
アジア諸国では、今年10月に設立したバンコク(タイ)の駐在員事務所を手始めに、2012年度以後にシンガポール、ベトナム、マレーシア、インドネシア、インド、香港などに現地法人や駐在員事務所を順次設置していく予定だという。
欧州では、サービスプロバイダーやSIerなどとの提携やM&Aにより、事業基盤の確立を検討しており、2012年度中の各種クラウドサービス提供を目指している。