米Citrix 社長兼CEOのテンプルトン氏が“3PC”戦略など説明


米Citrix Systems 社長兼CEOのマーク テンプルトン氏

 シトリックス・システムズ・ジャパン株式会社(以下、シトリックス)は7月7日、米Citrix Systems 社長兼CEOのマーク テンプルトン氏の来日にともない、プレス向けのラウンドテーブルを開催した。テンプルトン氏は、5月に開催した「Citrix Synergy 2011 サンフランシスコ」で発表された、3つのクラウド“3PC”戦略や、「PC era to Cloud era(PCの時代からクラウドの時代へ)」への展開など、新たなコンセプトとあわせて、クラウドやデスクトップ仮想化への取り組みを説明した。

 テンプルトン氏は、まず企業のIT環境が「パーソナルクラウド」へと進化していることを指摘。「これからの企業は、仮想的なコンピューティングインフラをベースに、その上でクラウドサービスを利用したり、さまざまな端末を活用して、ユーザーがより柔軟にビジネスが行える『パーソナルクラウド』環境を実現することが重要となっている。その中で当社は、コンシューマライゼーション(消費者先導型IT)に積極的に取り組んでいるが、これはITにとっての新しい方向性であり、従来のビジネススタイルに大きな変革をもたらすことになる」と述べる。

3つのクラウドによる“3PC”と新製品の位置づけ

 そして、この「パーソナルクラウド」に、「プライベートクラウド」、「パブリッククラウド」を加えた3つのクラウドを“3PC”と定義し、「過去10年間のIT環境を振り返ると、ビジネスで使われるITの中心はラップトップPCだった。しかし、現在は、ラップトップPCだけでなく、スマートフォンやタブレット端末が活用されるようになっており、このことはIT業界に大きなインパクトを与えている。よくポストPC時代とも呼ばれるが、私はそうではなく“3PC”時代に突入したと考えている。3つのクラウドがそれぞれ重要な役割を担いながら、端末に依存するのではなく、利用者を中心にして、非常に柔軟なIT環境を実現していく」との考えを示す。

 さらに、「PC era to Cloud era(PCの時代からクラウドの時代へ)」の流れの中で、これからのクラウド時代では、企業システムにおいてITが担う役割も大きく変わってくるとテンプルトン氏はいう。「従来までのPC時代では、IT導入の大きな目的はTCOの削減であった。しかし、クラウド時代では、『TVO(True Value of Ownership)』の追求が重要になる。つまり、コスト削減だけではなく、ITシステムの所有価値も求められるようになってくるのである。今後、IT部門が目指す最大の目標はTVOになるはずだ」としている。

 また、「Citrix Synergy 2011 サンフランシスコ」では、「パーソナルクラウド」、「プライベートクラウド」、「パブリッククラウド」の“3PC”において、それぞれ新たな製品が発表されたという。

Citrix Receiver for the web

 「パーソナルクラウド」の領域では、「Citrix Receiver」の新バージョンをリリース。今回、「Citrix Receiver」のサポート対象端末として、1000種類以上のパソコンやMacモデル、149種類のスマートフォン、37種類のタブレット、10種類の異なったシンクライアント、そしてiOSやAndroid OS、webOS、Google Chrome OSなどの新しい環境を含むすべての主要なプラットフォームをカバーしている。このほか、あらゆるWebブラウザに対応した「Citrix Receiver for the web」も新たに発表された。

 さらに、「Citrix HDXテクノロジー」について、過去最大規模のアップグレードを実施。パフォーマンスを3倍に向上し、帯域負荷を大幅に軽減。とくに広域ネットワークや外部クラウド環境から配信される動画、音声、3Dグラフィックスなどのリッチメディアサービスに対応している。

 「プライベートクラウド」の領域では、企業のデータセンターの「フロントドア」として、エンドユーザーによるアプリケーションやITサービスの配信・管理を大幅に簡素化する新製品「NetScaler Cloud Gateway」と、企業のデータセンターの「バックドア」として、オンプレミスのデータセンターを外部のクラウドサービスやホスティングサービスに安全かつ透過的に接続する新製品「NetScaler Cloud Bridge」を発表した。

 「NetScaler Cloud Gateway」は、エンドユーザーが、SaaSやWeb、Windowsなどの様々な種類のアプリケーションに対して、それらのアクセスの違いを区別することなく単一の視点でアクセスできるようにする技術。一方、「NetScaler Cloud Bridge」は、データセンターとあらゆる外部クラウドサービスをシームレスかつ安全に接続することにより、ITリソースに無限の拡張性を提供する。

 そして、「パブリッククラウド」の領域では、OpenStackプロジェクトに基づく、新しいクラウドインフラ「Project Olympus」を発表した。OpenStackプロジェクトには、実績あるオープンソースクラウド開発ベンダーやハードウェア/ソフトウェアベンダー計60社が参加しており、この各企業の経験とイノベーションが「Project Olympus」にすべて受け継がれているという。これにより、スケーラブルで効率的、オープンな設計環境である真のIaaSクラウドの構築を可能としている。

 テンプルトン氏は、「今回、“3PC”時代に向けて、幅広い新製品を発表したが、今後も当社では、3つのクラウドの力を集約して、事業をより効果的に展開していく。そして、現在デスクトップ上で行われているすべてのことを、仮想化プラットフォーム上で実現していく」と意欲を見せていた。


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