約7割の企業がクラウド・コンピューティングに関心~JEITA

2010年12月調査のユーザー動向調査を発表


2010年における投資スタンスと投資予算の推移
IT化におけるフォーカス状況と注目テーマへの重視度

 一般社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)サーバー事業委員会は、ユーザー企業におけるクラウド・コンピューティングの需要動向およびサーバー導入動向などについて調査を行い、その内容をこのほど発表した。

 309社から有効回答を得ており、従業員数1000人以上が25%、300~999人が28%、50~299人が35%、50人未満が12%という構成比となっている。

 調査は2010年12月に実施しており、同委員会では、「東日本大震災発生以降では、ユーザーの意識や投資計画に変化があると思われるが、その意向については反映されていない」としている。

 発表した調査内容によると、企業のIT化における注目テーマとして、「サーバー統合化による運用効率化」、「仮想化システムの活用」、「ネットワークセキュリティの確立」が重視されているほか、「クラウド・コンピューティングの導入」が前年調査の10%から、今回の調査では17%に増加。順位も10位から、6位に上昇したのが際立った。

 「サーバー統合化、クラウド・コンピューティングに対する意識が高まっているのが目立つ。また、東日本大震災後の現在の状況であれば、BCP対策やシステムの省電力化に対する意識変化があるだろう」とした。

 さらにクラウド・コンピューティングに対する評価については、「ITの新しい利用形態としてやや評価できる」が56%、「新しい利用形態として非常に便利かつ有効と考える」が29%となっており、「購入所有から利用へのパラダイムシフトはおおむね評価されている」とした。

 運用管理からの解放や、イニシャルコスト削減、従量課金型への移行などの点で有用性が評価されているとの結果も出ている。


クラウドに対する評価価値クラウドの有用性

 パブリッククラウドの活用状況については、すでに活用済みとした企業が18%となった。前年の調査ではわずか3%にとどまっていたことに比べると大きく進展。さらに、活用準備中の3%、活用検討中の12%、関心ありの38%を含めると約7割が活用指向性を示しているとした。パブリッククラウドにおいては、SaaSの活用が進展しており、PaaSの活用は4%にとどまった。


パブリッククラウドの活用動向パブリッククラウドでは、SaaSがもっとも利用されているという

 プライベートクラウドでは、すでに利用済みとしている企業は6%と、パブリッククラウドに比べると低いが半数以上の企業が関心を示していることが浮き彫りになった。

 JEITA サーバ市場専門委員会の西崎亨副委員長(=三菱電機インフォメーションテクノロジー テクノロジー・サービス業本部テクノロジー・サービス営業統括部長)は、「大手企業を中心とした調査では、プライベートクラウドの方が圧倒的に利用されているという結果が出るケースもある。今回の調査は従業員数で1000人未満の企業が多いこともあり、パブリッククラウドの利用の方が進展している結果が出た」とした。

 プライベートクラウドへの期待要素としては、「導入コスト削減」、「運用管理負荷削減」、「ITリソースの有効活用」が3つに集中しているという。


プライベートクラウドの活用状況プライベートクラウドの期待要素
データセンターの設置場所

 データセンターの設置場所については、「非常に気にする」が42%、「やや気にする」が38%と、約8割が場所を気にすることが明らかになっており、海外のデータセンターについては、情報セキュリティ体制や障害時のサポート対応に不安があるとの声が多いという。同協会では、「国内に使いやすいデータセンターを提供することが求められている」とまとめた。

 一方、企業のIT投資については、2010年度に増加するとした企業が全体の35%、2011年度が37%となり、2009年度の26%に比べて増加傾向にあることがわかった。

 「東日本大震災の影響もあり、不透明感はあるが、それでも2011年度のIT投資は戻りつつあると分析している」という。

 サーバー導入のきっかけは、サーバーの老朽化や故障による購入というリプレース需要が57%に達し、次いで新しいソリューション導入による購入が42%、サーバー統合化による購入は20%、サーバー仮想化のための購入が18%となった。「サーバー統合化による購入は前年調査では14%だったことと比較すると着実に増加している」という。


サーバー台数増加の理由サーバーを購入したきっかけ

 また、サーバーを選定する要素としては、「コストパフォーマンス」が複数回答で72%と最も高い構成比になったほか、「信頼性/可用性」、「処理能力」が3大要素となっている。省電力はわずか6%で9位にとどまっているが、「東日本大震災後のこれからは、重要な選定要素のひとつになると思われる」としている。

 さらに、サーバー統合・集約化については、2010年度調査で50%のユーザーが、すでに統合・集約済みとしており進展していることを示した。


サーバーを選定する要素サーバー統合集約化動向

 ブレードサーバーの活用比率は、2010年度には42%のユーザーが利用済みとしており、2008年度の25%、2009年度の34%に比べて増加傾向にある。仮想化技術については、2010年度調査で45%の企業が利用済み、10%が利用計画中としており、また、非常に注目が12%、やや注目が20%と9割近いユーザーが高い関心を寄せている。2009年度の利用済み37%、利用計画中の12%、非常に注目の13%、やや注目の22%からも進展していることがわかる。


ブレードサーバーの活用度合い仮想化技術の活用動向

 なお、JEITA サーバ市場専門委員会・西崎副委員長は、「今回の調査結果には反映されていないが、東日本大震災以降、BCPの観点からプライベートクラウドを活用したり、サーバー分散を行ったりしたいというニーズがある。さらに、サーバーの台数を減らしたいといった要求や、免震構造のデータセンターへ移行させたいといったニーズも顕在化している」などとした。

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