IAサーバーは前年比微増、クラウド化が今後のけん引役に?~JEITA
2010年度のサーバー/ワークステーションの出荷統計を発表
一般社団法人 電子情報技術産業協会(JEITA)は、2010年度のサーバーおよびワークステーションの出荷実績を発表した。
■IAサーバーは前年比微増、下位・中位クラスが全体需要を支える
JEITA サーバ市場専門委員会の末永司委員長(東芝ソリューション 業務ソリューション事業部長) |
総出荷実績 |
これによると、IAサーバーの出荷台数は、前年比微増の31万4259台(前年実績は31万3097台)、出荷金額は1%減の1928億9000万円となった。そのうちブレードサーバーは、前年比5%増の4万310台となった。
価格帯別では、300万円以上の出荷台数が23%減の1181台、出荷金額が31%減の114億6200万円。100~300万円未満の出荷台数が8%増の8217台、出荷金額が11%増の239億9500万円。50~100万円未満が7万6589台、出荷金額が1%減の517億3200万円。50万円未満の出荷台数が2%減の22万8272台、出荷金額は2%増の1057億100万円となった。
JEITA サーバ市場専門委員会の末永司委員長(東芝ソリューション 業務ソリューション事業部長)によると、「下位、中位クラスが全体の需要を支えている。ブレードサーバーの出荷台数は上半期は良かったが、下期は前年を下回っている。サーバー統合や仮想化への動きによって、ブレードサーバーへの需要が集中した。またIAサーバーにおいて、下期の需要が停滞しているのは、震災の影響というよりも、2008年のリーマンショックの影響で、2009年度下期から回復があり、2010年上期まで続いていた反動によるものとみている」という。
業種別には製造業向けが出荷台数で前年比15%増の6万2855台、出荷金額では16%増の348億1500万円と大幅に成長。一方で第一次産業、公共関係、販売業などが2けたの落ち込みとなった。サービス関係は若干構成比を高めたが、金融業ではマイナス成長となったという。
IAサーバーの出荷実績 | ブレードサーバーの出荷実績 | IAサーバーの産業別の出荷実績 |
■「UNIXサーバーの需要はそこそこあった」
また、UNIXサーバーの出荷台数は1万3725台、出荷金額は1112億7300万円となった。
同調査は参加企業による自主統計であり、市場全体を網羅したものではないが、本年度の調査対象から旧サン・マイクロシステムズが抜け、10社となったため、UNIXサーバーにおいては前年比の公表を避けた。台数が前年比3分の2程度となっているのは、統計参加企業の変更が影響した。「金額では4000万円以上の大規模システムが下支えしており、UNIXサーバー全体の需要はそこそこあったとみている」とした。
IAサーバーとUNIXサーバーを合計したオープンサーバー全体では、出荷台数が32万7984台、出荷金額が3041億6300万円となった。
メインフレームの出荷台数は前年比20%減の450台、出荷金額は30%減の825億6300万円となった。台数は過去5年間に減少傾向があり、大型、中型、小型のいずれもが前年実績を下回る結果となった。
独自OSサーバーは、出荷台数が前年比12%増の984台、出荷金額が3%増の65億5100万円。ワークステーションの出荷台数は7万3665台、出荷金額は121億1800万円となった。
メインフレームの出荷実績 | UNIXサーバーの出荷実績 |
■クラウドが今後の需要をけん引
なお、2011年度以降の見通しについては、「国内消費は依然として停滞しており、また東日本大震災の影響もある。IT投資の絞り込みや効率化が進むが、その一方で、クラウドコンピューティング、スマートコミュニティなどの社会を取り巻くインフラ環境への変革に向けた対応を進めていくことが予想され、そのなかでサーバー需要が喚起されるだろう」とし、サーバー需要の拡大が期待できる主な領域として、「クラウドコンピューティングの進展に伴うデータセンターの構築、増強を含めたクラウド対応システムの構築および新たな発生するサービスへの対応」、「省電力のための最新機器への更新」、「事業継続計画(BCP)に沿ったシステム環境の分散配備、バックアップなどの構築」、「省スペース化、省電力化のためのサーバー統合」などをあげた。
IAサーバーは幅広い用途で需要が拡大するとし、2011年度には出荷台数で31万5024台、出荷金額で1919億4800万円、2013年度には34万6369台、2051億9200万円に達すると予測した。また、UNIXサーバーは2011年度には出荷台数で1万2093台、出荷金額で1022億1900万円、2013年度には1万721台、933億6000万円とマイナス成長を予測。メインフレームは、2011年度の出荷台数が375台、出荷金額が509億7400万円、2013年度には339台、501億8600万円とした。
IAサーバーは、データセンター、クラウド用途などに広がっていくことになるが、性能の向上により、1台あたりの金額が台数の伸びほどは金額は伸びないと予測した。
メインフレームは高度の信頼性を要求される社会インフラシステムの中核としての需要が継続。リプレース需要によって、台数では微減の傾向が続くとし、UNIXサーバーは基幹システムを担う需要が増加するものの、下位クラスへのシフトも予想されるとした。
IAサーバーの需要予測 | UNIXサーバーの需要予測 | メインフレームの需要予測 |
■年間総消費電力量は試算を下回る
サーバー年間総消費電力量の推移と予測 |
一方、同協会では、2010年度のサーバーの年間総消費量電力量に関する試算も発表。2010年度は、当初予測を下回る結果になった。2010年度は64億kWhとなり、2009年に予測した68億kWhを下回っている。
理由としては、プロセッサのマルチコア化、製造プロセスの微細化、2.5型ディスクの採用などの技術改良により、サーバー単体の消費電力が抑えられたこと、サーバーのパフォーマンス向上により、効率の高いサーバー利用が進展していることなどをあげた。
JEITA サーバ市場専門委員会の西崎亨副委員長(三菱電機インフォメーションテクノロジー テクノロジー・サービス業本部テクノロジー・サービス営業統括部長)は、「2007年度をピークに年間総消費量電力量は削減傾向にある。IAサーバーは2005年モデルに比べて、電力消費量を約4割削減できる。最新サーバーに置き換えるだけで使用電力量の削減が可能になる」とした。