EMCジャパン、“1台ですべてのニーズに対応可能”なSAN/NAS統合ストレージ「VNX」
高機能な「VNXシリーズ」とシンプルな「VNXeシリーズ」 |
EMCジャパン株式会社は15日、ユニファイドストレージ「EMC VNXファミリ」を発表した。ミッドレンジSANストレージ「EMC Celerra」とNAS製品「EMC CLARiX」の両ブランドを統合し、SAN/NAS両方に対応した新しいファミリとして展開するもので、高機能な「VNXシリーズ」と、機能を絞ってシンプルな構成にしたエントリー向けの「VNXeシリーズ」から構成される。VNXシリーズは同日より販売を開始し、出荷は2月28日の開始予定。一方のVNXeシリーズは4月の発売を予定している。
■パワフルな万能ストレージのVNXシリーズ
テクニカル・コンサルティング本部 プロダクト・ソリューションズ統括部 中野逸子マネジャー |
SAN/NASに対応できる汎用性を生かし、ストレージ統合などに活用できるという |
新製品のうちVNXシリーズは、ミッドレンジ/ローエンド市場向けに、「1台ですべてのニーズに対応できる、パワフルな万能ストレージ」(テクニカル・コンサルティング本部 プロダクト・ソリューションズ統括部 中野逸子マネジャー)として設計された製品。具体的なプロトコルとしては、NASはNFS/CIFS/pNFS/MPFSに、SANはFC/iSCSI/FCoEに対応し、パフォーマンスが要求されるデータベースから、メール、ファイルサーバー用途まで、多くのニーズに1台で対応できるという。
また、EMCジャパンがCLARiXとCelerraで培った冗長化の技術やデータの保全を図る機能をベースにしているが、ハードウェアはすべて一新されており、最新CPUであるXeon 5600番台の採用、メモリの大容量・広帯域化などによって、基本性能を大きく向上させた。バックエンドのインターフェイスは6Gbps SASで、SAS HDDと大容量のニアラインSAS HDD、SSDを混在可能。SAN/NAS双方に対応した自動階層化機能の「FAST VP」と、SSDをキャッシュに利用する「FAST Cache」の両機能を搭載し、既存製品と比べて3倍のパフォーマンス向上を実現した。
管理ソフトウェアはCLARiXやCelerraと同様、「EMC Unisphere」を利用し、SAN/NAS共通のわかりやすいGUIを用いて、構成・管理や監視などを一元的に行える。さらに、シンプロビジョニングにも対応するほか、重複除外と圧縮の機能を備え、最大50%のデータ量削減を可能にしている。
加えて、「仮想化向けストレージとして、業界でもっとも進んだインテグレーションがなされている」(中野マネジャー)のも特徴。仮想サーバーの処理をストレージにオフロードするVAAIや、レプリケーション機能、パス管理機能など、多くの面でVMwareとの統合・連携が行えるようになっている。また、VMware、Hyper-Vの管理画面からのストレージ管理を行えるため、運用管理機能についても統合が進んでいるとのこと。
FAST VPとFAST Cache | 仮想化向け機能も充実している |
ラインアップとしては、中位機の「VNX5300/5500/5700」、最上位機の「VNX7500」と、FC SANのみをサポートし、自動階層化も利用できない「VNX5100」の計5モデルが用意され、VNX5100を除く各モデルで、SANのみ、NASのみ、SAN/NAS両方の3通りの構成が可能になっている。搭載可能な最大ドライブ数と容量は、VNX5300が125基・240TB、VNX7500が1000基・1974TBと、十分な拡張性を持つ。
価格は、2.4TB(300GB SAS HDD×8)構成のVNX5300の場合、NASのみで211万4490円、SANのみで237万9615円、SAN/NAS両方では271万3620円となっている。
■機能を絞ったシンプルなVNXeシリーズ
一方のVNXeシリーズは、「中堅企業や管理者のいない拠点などでも簡単に導入できる、シンプルさを追求した製品」(中野マネジャー)という。機能面では、FAST VPやFAST Cache、QoSなどがVNXシリーズから省略されている代わりに、専門知識がなくても、仮想環境やファイル共有環境などを設定可能な、5つのウィザード機能が盛り込まれた。
ラインアップは、2Uサイズで設置がしやすい「VNXe3100」と、最大120ドライブを内蔵できる3Uサイズの「VNXe3300」を用意するが、価格や具体的な発売日は、今後発表されるとのことである。
■VNXファミリは、伸びている市場のための戦略的製品
代表取締役社長の山野修氏 |
販売ターゲットと戦略 |
代表取締役社長の山野修氏は、このようなユニファイドストレージの市場投入の理由について、「システムごとに、バラバラに導入されてきたストレージの台数を統合したい、管理面も統一したい、といったニーズも強く市場には存在する」という点を指摘。こうしたユーザーの要望をキャッチアップし製品化されたのが、VNXファミリだと説明する。
また別の側面では、ハイエンド(3000万円以上)のストレージ市場が縮小する反面、ミッドレンジ(500万円~3000万円)、ローエンド(500万円以下)の市場で伸びが見込めるという状況からも、ミッドレンジのストレージ製品が後押しされているのだという。山野社長は、「当社は特に高性能、高信頼のハイエンド市場で主に販売してきたが、伸びているミッドレンジ以下の市場のための製品として、簡単、効率的、お手ごろなVNXファミリを発表する」と新製品を紹介した。
なお、ミッドレンジやローエンドの市場が伸びている背景には、増えていくデータを効率的にためていきたいというニーズや、ストレージ全体の高機能化と不況によるIT投資の抑制により、ミッドレンジ以下のストレージでの十分だと考えている企業が増えたことが挙げられるとのこと。このようにミッドレンジの需要がハイエンドの市場を侵食しているため、売り上げの面では、EMCジャパンにとっても痛しかゆしになる可能性はある。
この点を問われた山野社長は、「機能面でハイエンドとかぶるお客さまは確かにいらっしゃるだろうが、ハイエンドの『Symmetrix VMAX』は信頼性が高く、ミッションクリティカルな用途でのお客さまは、引き続きそちらを選択されるだろう。容量だけがあればいい、ということであればミッドレンジに移るかなと思っている」と述べ、ある程度は仕方ないとの見方を示していた。
VNXシリーズの販売については、EMCの既存顧客のうち、ファイルサーバーの見直しを図ったり、SAN/NAS統合による効率化を計画したりしている企業、仮想化環境向けストレージを検討している企業などを対象に、ハイタッチの営業部隊とパートナーの共同体制で取り組むとのこと。また、新規の顧客についても、パートナーとの共同で広く拡販を図る。
VNXeシリーズはさらに広く取り組むため、ディストリビュータ経由で全国へ展開する計画で、4月までにこの体制の整備を行っていく予定だ。