「インフラへのフォーカスが強みだ」、日本HPがソフトウェア事業戦略を説明


米HP アジアパシフィック&ジャパン HPソフトウェアソリューションズ バイスプレジデントのアンソニー・マクマホン氏
依然として、メンテナンス費用が企業のIT予算の中で大きな割合を占めるのは、企業にとっての課題だ

 日本ヒューレット・パッカード株式会社(日本HP)は5日、ソフトウェア事業に関する説明会を開催。米HP アジアパシフィック&ジャパン HPソフトウェアソリューションズ バイスプレジデントのアンソニー・マクマホン氏らが、同事業に関する解説を行った。

 企業における昨今のトレンドとしては、IT予算の多くが保守や運用といったメンテナンス費用に使われており、イノベーションのために使えるのは、全体の3割くらいにすぎない、といった問題がある。これは、昔から繰り返し言われていることだが、マクマホン氏もこれを大きな問題として指摘し、「当社が自動化や管理のツールによって支援することで、IT投資をイノベーションに使い、ビジネスと、より整合性がとれるようにする」と述べる。

 また、企業内のさまざまな業務部門や子会社で、別々の方向を向いてIT化が行われいては、全体の整合性がとれなくなってしまう。そのため、全体のガバナンスをきちんと利かせてた上で、ITを整備する体制も必要だ。このためHPでは、企業のキーとなるプロセスを、HP自身が持つベストプラクティスを使って統合・自動化し、ビジネスの要求の変化に、ITシステムが俊敏に応えられるように支援を行っていくとする。

 一方では、クラウドコンピューティングが普及するのに従って、CIOの役割も変化してきたという。これまでは、社内の各ソリューションを開発し、業務部門に提供してきたため、CIOはそれらすべてをコントロールすることができた。しかし、クラウドサービスなど外部のものを含めた複数のソースから、エンドユーザーに対してサービスを提供するようになったため、「CIOの役割は、サービスの仲介者に変わってきている」(マクマホン氏)。従って、こうしたクラウドサービスについても、きちんとしたコントロールを持たないといけない。

 そこでHPでは、多くのサービス、ソフトウェア企業を買収し、そのポートフォリオを拡充。これらの製品を用いることで、ビジネスの観点から、開発・監視・運用などを行えるようにしている。日本HP 執行役員 HPソフトウェアソリューションズ統括本部長の中川いち朗氏は、「クラウド時代は、どのサーバーやネットワークがどのビジネスに影響しているのかがわかりにくい。そこで、どのビジネスに影響を与えているかを、サービスのレベルで監視する」と述べ、ビジネス視点でのIT資産を管理できることを重要さを強調。その上で、自動化の技術を使い、その簡素化を支援するとした。

日本HP 執行役員 HPソフトウェアソリューションズ統括本部長の中川いち朗氏HPのソフトウェアポートフォリオ

 HPのソフトウェア製品の多くは、Mercury、Opswareなど、もともとは社外の製品として開発されたものだった。こうした企業を買収することによって、ポートフォリオを大きく拡充してきたわけだが、現在は、自前の開発製品であるOpenViewを含めて「HP Software」ブランドに統合され、「すべてがリアルに連携している」(中川氏)。単体でも、業界でシェア1~2位と高い評価を受けている製品が、相互に連携することで、最大のビジネス効果を上げる。ここに、HPの強みがあるのだという。

 ただし中川氏はこの点について、「全体の連携がとれないと、ガバナンスが利かなくなるため、ソリューションとしての提案ができないと、本当の価値がない。必ずしも全部当社のソフトを使ってもらうということではなくとも、連携ソリューションとしての提案は必須だろう。その中で、全部ではなく、一部だけを使っていただく、ということは当然ある」と述べ、現実的にはヘテロジニアスな環境での利用も十分あり得るとする。

 また、大きな競合となるIBMの場合は、「新しいアプリケーションの開発という、フロントの部分にフォーカスを置いているものが多い」(中川氏)。一方、HPはアプリケーションのベースとなるインフラにフォーカスしている点が、IBMの戦略と異なるのだという。これについて、中川氏は、「新しいアプリケーションの構築は確かに大事だが、そのベースになっているインフラに、コストの7割をかけている日本の現状においては、インフラのコストを解決するのが、今、もっとも重要なことではないか」と述べ、自社のソリューションの強みを訴えた。

国内での施策

 国内の営業戦略については、まず大企業向けに、コンサルティングビジネスを強化し、企業全体のIT業務の標準化といったところから、トータルに支援する体制を整える。また、品質管理、運用管理、情報管理といったソリューションの切り口でスペシャリティセールスチームを立ち上げ、より深い営業支援を実施。さらに、中規模以下の企業については、パートナーとの協業をより密にしていくほか、新規パートナーの開拓も積極的に進めるとした。

 なお、クラウドについても積極的に訴求する考えで、「通常のベンダーは、お客さまの社内システムのクラウド化を支援するだけ。しかし当社では、自身がクラウドサービスを提供できるほか、クラウド事業者のインフラ提供としても、大きな支援ができる」という点を強調。今後も、ひろくビジネスを行っていくとしている。

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(石井 一志)
2010/8/5 16:40