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キヤノンMJ、2017年上期の連結業績は減収増益

西東京データセンター第2期棟の建設を検討、1期棟は予想より早く満床の見込み

 キヤノンマーケティングジャパン(キヤノンMJ)は26日、2017年度上期(2017年1~6月)の連結業績を発表した。その中で、キヤノンMJの取締役常務執行役員の松阪喜幸氏は、西東京データセンターの第2期棟の建設を検討していることを明らかにした。

 「西東京データセンターは、1期棟が予想よりも早く満床になることが見込まれている。そのため、2期棟の建設について具体的な検討を開始したところである」と述べた。投資時期は2018年度以降になるが、規模や具体的な時期などの詳細については言及しなかった。

 また、2017年度は設備投資として152億円を想定。前年度の132億円から20億円増加しており、特に、2017年度下期に設備投資が増える計画になっているが、「データセンターの内部の強化などに投資をしている」とした。

西東京データセンターの外観

2017年度上期は減収増益

 同社が発表した2017年度上期の売上高は前年同期比0.8%減の3036億円、営業利益は6.3%増の109億円、経常利益は5.4%増の118億円、当期純利益は26.1%増の83億円となった。

 キヤノンMJ 取締役常務執行役員の松阪喜幸氏は、「第2四半期(4~6月)は、イメージングシステムが減収となるものの、ビジネスソリューション、ITソリューション、産業、医療の各セグメントにおいて増収になった」と総括した。

ビジネスソリューションは増収増益

 セグメント別を見ると、ビジネスソリューションは、売上高が前年同期比2.1%増の1709億2600万円、営業利益が同8.6%増の58億7500万円。オフィスMFP(複合機)では、「imageRUNNER ADVANCE C3500シリーズ」を3月に発売するなど、中小企業を中心に新規顧客の獲得と既存顧客のリプレースを強化し、売り上げが増加した。

imageRUNNER ADVANCE C3500シリーズ

 プロダクションプリンティングは、印刷業向けカラーオンデマンド機「imagePRESS C800/C650」が、オフィスプリントの内製化用途の取り込みなどの提案が売り上げ増に貢献。レーザープリンターは、前年同期のカラー機の大規模キャンペーンの反動があったものの、モノクロA3機「Satera LBP8730i」を中心とした大型案件の獲得や、医療分野などの注力業種への拡販が貢献した。

 またネットワークカメラでは、商業施設向けの大型案件に加え、介護福祉、食品などでの案件を獲得したという。保守サービスは、保守料金の単価下落傾向が続いたが、市場稼働台数の増加などにより、プリントボリュームが順調に増加し、売り上げは前年並となった。

 「ネットワークカメラでは、ビルや商業施設、製造業などではまだ監視用途が多いが、画像解析ソフトを活用したソリューション提案を進めていく。店舗の導線マネジメントやイベント会場の人数カウントなどの商談も始まっている」という。

 なおキヤノンシステムアンドサポート(キヤノンS&S)は、セキュリティソリューションが好調に推移したほか、IT機器の保守サービスやビジネスPCの増加などもあり、売上高は前年同期比1.4%増の621億8000万円、営業利益は1億5000万円減の17億6000万円となった。

ITソリューションの売上高は前年並

 ITソリューションは、売上高が前年同期比0.9%減の655億700万円、営業利益が同1.6%減の21億300万円。SIサービス事業において、金融業向けなどの案件が増加したものの、一部顧客案件が端境期となり、売り上げは前年並となった。

 ITインフラ・サービス事業では、データセンターサービスが順調に推移したが、前年同期の基盤大型案件の反動によって、売り上げは減少した。

 エンベデッド事業は、自動車産業向けは伸長したが、製造業の主要顧客向け案件が減少して、売り上げは減少。IT関連ハードウェアやパッケージソフトウェアのライセンス販売などを行っているプロダクト事業は、セキュリティ関連製品やITプロダクト商材などが堅調に推移し、増収となった。

 連結子会社のキヤノンITソリューションズ(キヤノンITS)の売上高は、前年同期比1.2%減の361億4000万円、営業利益は前年から3億1000万円増の21億6000万円となった。

 なお、ITソリューションセグメントとビジネスソリューションセグメントに含まれるITソリューションを含めた「全社ITソリューション」の売上高は、前年並の910億円。また、全社ITセキュリティの売上高は前年同期比7%増になったという。

 「企業の業務効率化やセキュリティ強化などに需要に支えられたほか、中小企業向けIT支援サービスのHOMEの拡大、セキュリティソリューションのESETが好調だった。また、2017年6月には、IoTプラットフォームを提供するZ-Worksと資本業務提携を行い、今後、IoTを活用した介護支援ビジネスを本格化させる」などと語った。

一眼レフカメラは高単価市場を狙う

 イメージングシステムの売上高は前年同期比5.3%減の644億9300万円、営業利益が同20.7%増の20億9300万円。デジタルカメラにおいて、4月にEOS Kissシリーズの新製品「X9i」やミラーレスカメラの新製品「EOS M6」を投入。ユーザーキャンペーンの実施などの積極的な拡販により、ミラーレスカメラの売り上げが拡大した。だが、一眼レフカメラの減収となり、レンズ交換式デジタルカメラ全体も減収となった。

 「カメラに対するニーズが変わってきており、ミラーレスは女性層の購入が増加している。だが、いまだに一眼レフカメラの需要の方が大きく、トータルの利益としても一眼レフカメラの方が高い。キヤノンとしては、どちらもラインアップを強化していく。エントリークラスにおいてニコンの影響があるが、キヤノンは高単価の市場を狙い、ハイアマチュア向けに積極的に販売していく」との姿勢を示した。キヤノンは一眼レフカメラでは約60%、ミラーレスでは約20%のシェアを持っている。

 コンパクトデジタルカメラは、店頭在庫がひっ迫していた昨年末の状況が改善されたことに加えて、新製品の「PowerShot G9X MarkII」などの高価格モデルが順調に推移し、増収になった。

 インクジェットプリンタは、昨年発売した「PIXUS TS8030」などの高単価製品が引き続き順調に推移。ビジネスインクジェットプリンタ「MAXIFY」シリーズも堅調に推移して、売り上げが増加した。

MAXIFYシリーズのMAXIFY MB5430

 なお、キヤノンのインクジェットプリンタは平均単価が15%も向上しており、増益に寄与しているという。また第2四半期だけでは、インクジェットプリンタの販売台数が前年同期比20%増と大きく成長したが、過去1年にわたって、在庫削減への取り組みを強化。2017年3月時点で、在庫が最小規模にまで減少したことによる反動だと説明した。

 インクカートリッジは、プリントボリュームの減少などによって減収になっている。業務用映像機器は、放送局向け案件が引き続き減少。放送用レンズの出荷が低調に推移したことで減収になった。

 産業・医療の売上高が7.8%減の162億1100万円、営業利益は5.3%減の7億7000万円となった。産業機器が、半導体関連市場の設備投資が活況を呈しており、半導体製造装置や検査計測装置などの受注やサービス売り上げが堅調に推移。医療事業では、医用クラウドサービスなどが伸長したものの、前年同期の大型案件の反動によって減収になった。

通期業績見通しは変更なし

 なお、2017年度の業績見通しには変更がなく、売上高が前年比2.5%増の6450億円、営業利益が同4.1%増の288億円、経常利益が同3.1%増の296億円、当期純利益が同9.0%増の198億円と、増収増益を見込んでいる。セグメント別では、イメージングシステムで売上高を30億円減、産業・医療を30億円増とした。

 ITソリューションについては、「ITインフラやサービス事業においては、引き続き金融分野での大型案件や、教育分野におけるキヤノン製品とソリューションとの組み合わせ案件が好調に推移すると予測。また、ESETをはじめとするセキュリティ製品、ITプロダクト事業が好調である。ネットワークカメラやITセキュリティ、データセンターなどの成長領域にリソースをシフトしていく」とした。

 さらに、「インクジェットプリンターやデジタルカメラは、高単価製品の構成比を高め、収益性向上とシェア向上を図る」と述べた。