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IBMクラウドで日本企業のアプリケーション変革を支援、日本IBMクラウド事業戦略説明会

 日本アイ・ビー・エム株式会社(以下、日本IBM)は6日、2017年のクラウド事業に関する動向説明会を開催した。

 日本IBM取締役専務執行役員でIBMクラウド事業本部長の三澤智光氏は、3月に米国で開催されたカンファレンス「IBM InterConnect 2017」の発表内容を中心に紹介した。

日本IBM取締役専務執行役員の三澤智光氏

 カンファレンスでは、米IBMのジニー・ロメッティCEOが、IBMクラウドは企業が活用するにあたって最適なプラットフォームであることを改めて伝えたと説明。企業がデジタルトランスフォーメーションを実現するために必要な機能、信頼性、セキュリティを提供する「Enterprise Strong」、これまで活用できなかったデータを企業が活用できるようにする「Built to data」、提供するあらゆる機能やサービスがコグニティブを活用して価値を提供する「Cognitive to the core」であるという3つの要素を備える点が、IBMクラウドの特徴だとした。

InterConnectでのIBM全体メッセージ

 IBMがクラウド戦略として掲げる「Lift & Shift」は、企業のアプリケーションを今後どのように変えていくのかと、それに対してIBMがどのような手伝いができるかということを総称したものだと説明。企業のアプリケーションを「変えなくてよいもの」「変えたほうがよいもの」「これから新しく構築するもの」の3つに大別し、それぞれにどのような提案ができるかを紹介した。

 「変えなくてもよい」アプリケーションについては、オンプレミスに残すという選択肢も当然あるが、ベアメタルを活用したクラウド上で稼働させるという提案もできるのがIBMクラウドの特徴だとした。

 一方で、「変えたほうがよい」アプリケーションについては、アーキテクチャーの変更を含めてクラウド上で稼働させることを提案。「これから新しく構築する」アプリケーションについても、マイクロサービスアーキテクチャを活用し、クラウドネイティブなアプリケーションとして構築することを提案していくとした。

 さらに、「変えなくてもよい」としたアプリケーションなど旧来のシステムについても、そのシステムを利用するフロントエンドサービスなどの俊敏性に追随できるよう、連携のためのAPIを作ることがますます重要になっていくと説明。IBMではこうした企業のステップの手伝いをしていきたいとして、これらを総称して「Lift & Shift」と呼んでいるとした。

IBMのクラウド戦略「Lift & Shift」

 こうした戦略により、IBMは日本企業がクラウドの能力を100%活用し、コグニティブ機能を実装したエンタープライズアプリケーションを構築することを支援していくとして、そのためにはマイクロサービスアーキテクチャの活用が必要だと説明。現時点では、多くの企業がクラウドネイティブ環境での高可用性を確保するという観点でマイクロサービスアーキテクチャを捉えているが、アプリケーションをビジネス単位で実装することで変化にも対応しやすく、継続的な改善を実現する開発ライフサイクル全体の管理を実現できるというメリットがあるとして、こうした点を顧客にも訴えていく必要があるとした。

 アプリケーション開発においては、マイクロサービスの設計から開発、運用に至るシステム開発のすべての工程を、IBM Bluemix上で包括的に支援するフレームワーク「Open Toolchain」の拡充を進めていると説明。Open Toolchainは、GitHubをベースに使用するとともに、顧客がすでに利用しているツールを組み込む形で自由に利用が可能で、チーム体制での開発にも対応。開発ワークフローの自動化と可視化を実現する。

 三澤氏は、「いま、日本の企業がクラウドネイティブなアプリケーション開発や、マイクロサービスアーキテクチャを取り入れたアプリケーション開発をいきなりできるかというと難しいが、Open Toolchainを使うことでその敷居がずいぶんと下がるのではと思う」と導入のメリットを説明した。

Open Toolchainを活用したアプリケーション開発

 さらに、マルチクラウドやオンプレミスといった多様なシステムインフラ環境を、一元的に管理できる「IBM Cloud Automation Manager」の提供も開始した。

 IBM Cloud Automation Managerは、Bluemixのサービス(無償)としての提供のほか、オンプレミスソフトウェアとしても提供。開発したアプリケーションをどのサービスにデプロイするのが適切かを、IBMクラウドだけでなく、Amazon Web Services(AWS)やMicrosoft Azure、さらにはオンプレミス環境も含めて自動的に判断して管理できる。これにより開発ワークフローの自動化および可視化、ガバナンスの向上を実現するとした。

多様なインフラの一括管理を実現するIBM Cloud Automation Manager

 三澤氏は、ベアメタル、バーチャルサーバー、コンテナ、PaaS基盤のCloud Foundry、サーバーレス環境であるOpenWhiskと、IBMクラウドは用途に合わせたさまざまなコンピューティング環境を自由に組み合わせて、アプリケーションの開発を行えると説明。また、クラウド/マルチテナント環境の「Public」に加え、パブリッククラウド上に顧客ごとの専有環境を構築するシングルテナントの「Dedicated」、さらにオンプレミス環境の「Local」と、企業の要件に合わせて多様な選択肢を提供できる点が、IBMクラウドならではの特徴だとした。

ビジネス要件に合わせたコンピューティング環境の提供
企業の要件に合わせて多様な選択肢を提供