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日立、2016年度中間決算を発表 減収も最終利益は16%増

 株式会社日立製作所(以下、日立)は、2016年度(2016年4月~9月)の連結業績を発表した。売上収益は前年同期比9.4%減の4兆3537億円、営業利益は同15.0%減の2328億円、税引前利益は同15.9%減の2141億円、当期純利益は同16.3%増の1135億円となった。

業績のハイライト

 日立の代表執行役執行役専務 CFO、西山光秋氏は、「売上収益は為替換算の影響や日立物流の持分法適用会社化、空調事業の再編などにより減収。だが、為替や再編の影響を除くと4%の増収となっている。また、最終利益は1135億円となり、16%増の成長を確保した。法人所得税費用の減少、非継続事業損失がなくなったことが影響している。売上収益では、自動車や鉄道などが成長している」と総括した。

日立の代表執行役執行役専務 CFO、西山光秋氏

 国内売上収益は前年同期比8%減の2兆4161億円、海外売上収益は同11%減の2兆1306億円。海外売上比率は49%。為替の影響を除くと、前年同期比3%増となっており、52%の構成比になるという。地域別では欧州が前年同期比15%増(為替影響を除くと前年同期比27%増)となり、鉄道関連事業の成長が牽引している。北米においては、売上高が前年同期比12%減となったが、為替影響を除くと前年並の実績。

 「ストレージ、サーバー事業のリソースを、サービスおよびソリューションにシフトしている。北米は、最先端市場であり、IoT事業において重要な地域。ソリューションの提供先として、あるいは協創先として重視していく」と述べた。

国内・海外売上収益

 事業部門別では、情報・通信システムの売上収益は、前年同期比7%減の9270億円、調整後営業利益は前年同期から56億円増の556億円、EBITは同256億円減の196億円となった。

 フロントビジネスの売上収益は前年同期比5%減の6475億円、調整後営業利益は前年同期から27億円増の482億円。ITプラットフォーム&プロダクツの売上収益は前年同期比8%減の3510億円、調整後営業利益は前年同期から22億円増の52億円となった。

 「事業部門別では、為替影響を除くと8セグメントで増益となっているが、為替を含めると、情報・通信システムだけが増益となっている。情報・通信システムは、中国市況の悪化によるATM事業の停滞が減収につながっているが、情報ネットワークを中心とした構造改革効果や、プロジェクトマネジメントの定着などにより増益。営業利益率は前年度の5%から6%へと1ポイント改善している」とした。

 また、「フロントビジネスは、営業利益で、計画より100億円上振れしている。金融、公共を中心に、サービス、ソリューション事業が堅調であった。前年度には金融ではメガバンク需要、公共ではマイナンバー需要があったが、それが無くなっても、高い水準の需要がある。サーバーなどのハードウェア事業は市場が縮小しているが、フォーカスする製品を決めて、開発リソースを集中させる。ハードの厳しい状況を、ソリューション、サービスできちっとカバーしていく」とした。

事業部門別売上収益と調整後営業利益

 IoTプラットフォームである「Lumada」は、2016年度上期時点で、170件のユースケースがあり、これを2016年度中に200件にまで拡大する計画を示した。

 「製造業向けの生産改善、予兆診断などのソリューションを中心に、第2四半期だけで、10件のユースケースが増加。また、顧客との協創だけでなく、自らもIoTを活用して改善に取り組んでいくことにも力を注いでおり、当社の大みか事業所において、工場シミュレーターと作業改善支援システムを導入。経営の業務データと現場データを結んで、一元的に見える化することで、リードタイムを50%短縮することに成功したという。さらに、部品在庫の変動に影響する生産および出荷計画などの各種データを一元的に把握し、在庫過剰の兆候を察知するソリューションを構築。原因を突き止めることで、過剰在庫を削減てきた」という。

 また、クラウド型協創環境「Lumadaコンピテンシーセンター」を通じて、顧客がデータの利活用を迅速に展開することができる検証環境をメニュー化し、クラウド上で提供を開始したという。

 西山CFOは、「Lumadaは、まだPoCの段階のものも多く、売上高、利益といった数値をいえる段階にはない。Lumadaを活用したSI、サービス、製品などの数値は、目に見える形になった時点で公表したい。Lumadaは、日立全体にとって、ビタミンのような効果を持つものという表現もあっているだろうが、効果を定量化することもできると考えている。Lumadaの中核部分を担当するサービス&プラットフォームBUは、2800億円の売上高を3300億円にする計画を掲げている」とした。

Lumadaの展開状況

 一方、社会・産業システムの売上収益が前年同期比8%増の1兆298億円、調整後営業利益が前年同期から17億円減の150億円。電子装置・システムの売上高は前年同期比2%減の5375億円、調整後営業利益は前年から12億円減の304億円。

 建設機械の売上高は前年同期比8%減の3349億円、調整後営業利益は前年同期から105億円減の54億円。高機能材料は売上高が前年同期比12%減の7032億円、調整後営業利益は前年同期から50億円減の556億円。

 オートモーティブシステムの売上高は前年同期比4%減の4718億円、調整後営業利益は前年同期から64億円減の206億円。生活・エコシステムの売上高は前年同期比27%減の2874億円、調整後営業利益は前年同期から57億円減の61億円。

 その他(物流・サービスなど)の売上高は前年同期比42%減の3593億円、調整後営業利益は前年同期から125億円減の146億円。金融サービスの売上高は前年同期比1%減の1792億円、調整後営業利益は前年同期から22億円減の213億円となった。

2016年度連結決算の見通しは据え置き

 2016年度の通期業績見通しはそのまま据え置き、売上収益が前年比10.3%減の9兆円、営業利益は同14.9%減の5400億円、税引前利益は同16.8%減の4300億円、当期純利益は同16.2%減の2000億円とした。

2016年度(2017年3月期)の連結決算の見通し

 「為替の前提レートを1ドル110円から100円に、1ユーロ120円から110円に変更したことで、売上収益で1800億円減、営業利益で270億円減の影響があるが、上期の営業利益が計画より約300億円の上振れとなったほか、構造改革の進捗、原価低減の効果もあり、通期見通しは据え置いた。事業部門別には、情報・通信システムは見通しを据え置いているが、為替の影響などにより、電子装置システム、高機能材料、オートモーティブ、生活エコシステム、金融サービスで修正をしている」という。

 また、設備投資については、製造・サービスで3800億円の計画を3500億円に、金融サービスでは700億円から675億円に、合計では4500億円から4175億円に下方修正した。

 「事業環境に対応して投資を厳選しており、工場の有効活用などの全体最適化を図ることに加えて、投資をM&Aに振り向けていくという狙いがある。2018年までの3カ年で2兆円の投資を予定しているが、そのうち、設備投資で1兆円、M&Aで1兆円を計画している。Lumada関連などのフロントビジネス関連で6割を投資する方針である」とした。

事業部門別売上収益と調整後営業利益の見通し

 なお、2018年度を最終年度とする中期事業計画に関しては、「景気回復の遅れや中国市況の低迷など、計画立案時よりも状況は厳しくなっている。為替の影響も大きい。だが、原価低減、構造改革の加速、事業ポートフォリオの再編、サービスを中心としたビジネスモデルの転換に取り組み、収益性改善と資産効率性をあげるという方向性には変わりがない」と述べた。