ニュース
米Red HatのホワイトハーストCEOが来日会見、「パブリッククラウドはRed Hatに好影響を与えている」
MBaaSや学校向け技術者育成プログラムなどを発表
2016年10月6日 06:00
レッドハット株式会社は5日、自社イベント「Red Hat Forum 2016 Tokyo」を開催。それに合わせて、米Red HatのCEO、ジム・ホワイトハースト氏と、アプリケーションプラットフォームビジネス シニアバイスプレジデントのクレイグ・ムジラ氏の来日会見を開催した。
同時に、同社のMBaaS(Mobile Backend as a Service)を中心とするモバイルアプリケーションプラットフォーム「Red Hat Mobile Application Platform」において、日本のアシアル株式会社と協業して、モバイル開発基盤「Monaca」とUIフレームワーク「Onsen UI」をサポートしたことを発表した。
また、学生向けの技術者育成プログラム「Red Hatアカデミー」を日本でも同日提供開始したことを発表した。
なおホワイトハースト氏とムジラ氏は、同イベントのジェネラルセッションでも講演した。その内容については別記事でレポートする。
「Red Hatは“DISRUPT”で伸びる」
ホワイトハースト氏はまず、9月下旬に発表した2017会計年度第2四半期の決算内容から、58四半期連続で売上高の伸びを記録したことを紹介。さらに、売上高の71%がインフラ関連製品(Red Hat Enterprise Linux:RHELなど)であると説明し、「(パブリッククラウドがRed Hatに悪影響という懸念の声について)パブリッククラウドはRed Hatに好影響を与えている」と主張した。
また、同社のビジネスモデルであるサブスクリプションビジネスが前年比で19%伸びているという数字を挙げて、「この5年間、サブスクリプションが勢いよく伸びている」と説明した。そのほか、契約数の81%がチャネル販売で直販が19%という数字も紹介。さらに、地域別では特にAPAC(アジア太平洋地域)が伸びていると語った。
氏は「Red Hatがこれから先も伸びる。なぜか」として、「現在は大きな変化の中にあり“DISRUPT”が起こっている。そして、それはオープンシステムのエコシステムから出ている」と説明。「ITはもはやバックオフィスのものではなく、収益そのものに寄与している」と、ITとオープンソースの重要性が増していると語った。
さらに、オープンなLinuxや仮想マシンなど、時代ごとに一環してアプリケーションとそれが動くサーバーを分離できるようにしてきたことを「Red Hatの提供する価値」と位置づけ、「現在では物理サーバー、仮想サーバー、プライベートクラウド、パブリッククラウドの4つのどこでも同じようにアプリケーションを動かせるようにして、ロックインを排除していく」と語った。
デジタルトランスフォーメーションのためのRed Hat製品
ムジラ氏も、「ITの役目が、顧客管理システムやERPだけでなく、ビジネスの根幹に関わるようになってきた」とデジタルトランスフォーメーションを説明。そこにおけるRed Hatの製品やビジネスについて語った。
「そのためには迅速にソフトウェアを開発しなくてはならない」と氏は語り、その3つの要件として、よりマイクロサービスの「アーキテクチャ」と、アジャイルとDevOpsの開発の「プロセス」、そしてクラウドベースインフラの「プラットフォーム」を挙げた。
このプラットフォームとしてムジラ氏はコンテナプラットフォーム「Red Hat OpenShift Container Platform」を紹介。さまざまな開発言語への対応や、リッチなミドルウェアサービス、LinuxコンテナやKubernetesといったLinuxベースの技術をその特徴とし、「パブリッククラウドでもオンプレミスでも使える」と説明した。
またRed Hat OpenShift Container Platform上で動かすマイクロサービスに、同社のJBossミドルウェア各種が対応していることを紹介した。
そのほか、6月に買収したAPI管理ソリューションの3scale社についても紹介した。APIを使う側に情報を提供するもので、Red Hat Mobileとも連携しているという。
企業向けモバイルアプリケーションプラットフォームでMonaca/Onsen UIに対応
同社のMBaaSを中心とする企業向けモバイルアプリケーションプラットフォーム「Red Hat Mobile Application Platform」において、日本のアシアル株式会社との協業も発表された。アシアルの、HTML5ベースでモバイルアプリを作る「Apache Cordova」をベースにしたモバイル開発基盤「Monaca」と、HTML5ベースのUIフレームワーク「Onsen UI」をサポートする。
Red Hat Mobile Application Platformでは、MBaaSサービスのほか、それを利用するモバイルアプリなどの開発環境も備えている。Monaca/Onsen UIのサポートは、その開発環境とは別に、Monaca/Onsen UIを使って開発されたモバイルアプリをRed Hat Mobile Application Platformで使えるようにするものだ。Red Hat Mobile Application Platform用のOnsen UIテンプレート「Onsen UI App Templates for Red Hat Mobile Application Platform」と、Monacaのデバッガのための「Monaca Debugger for Red Hat Mobile Application Platform」が提供される。
なお、Monaca/Onsen UIとRed Hat Mobile Application Platformを組み合わせた企業向けモバイルアプリケーション開発は、日立が早い段階から採用し、日立+アシアル+レッドハットで事例を構築してきたという。
学校法人向け技術者育成プログラム「Red Hatアカデミー」開始
学校法人向け技術者育成プログラム「Red Hatアカデミー」の提供を、日本でも同10月5日に開始することも発表された。
Red Hatアカデミーは、同社のIT技術者育成プログラムを学生向けにカスタマイズしたカリキュラム。学校法人(大学、専門学校、高専)を通じて提供する。2018年2月末を目途に、全国で約100学校法人への導入を目標とする。なお、米国で2014年、ヨーロッパで2015年に開始した。
対象製品は、OpenStack Platform、RHEL、JBoossミドルウェアの3種類。OpenStack Platform(1コース)とRHEL(3コース)は10月から、JBossミドルウェア(JBos EAPおよびアプリケーション開発の2コース)は2017年4月から開始する。
年会費で、学校法人あたり10万円(税別)。認定資格試験の受験料についても、社会人向けに比べ50%安価な価格(税別1万8000円/学生)を設定する。
初導入ユーザーとして、東京電子専門学校(学校法人電波学園、東京都豊島区)が10月3日よりOpenStackコースを高度情報システム科(4年制)で正規科目として開講。2017年にはRHELのコースも順次開始する予定だ。