ニュース

日立の2016年度第1四半期連結決算は減収減益に、事業ポートフォリオ変更と円高が大きく影響

 株式会社日立製作所(以下、日立)は29日、2016年度第1四半期(2016年4月~6月)の連結業績を発表した。

 売上収益は前年同期比7.9%減の2兆1304億円、営業利益は同20.7%減の914億円、税引前利益は同23.1%減の1097億円、当期純利益は同2.7%増の564億円となった。

2016年度第1四半期連結決算の概要

 日立 執行役専務CFOの西山光秋氏は、「売上収益は、日立物流の持分法適用会社化や空調事業の再編による事業ポートフォリオの変更に加え、円高の影響を大きく受け、前年同期を下回った。売上収益の減少にともない、営業利益、税引前利益ともに減益となったが、当期純利益については前年同期から14億円増加した。これは、税前ベースで上場会社が減益になった一方で、上場以外のグループ会社などの業績、および日立物流の売却益を含めてプラスになった」と総括した。

日立 執行役専務CFOの西山光秋氏

 売上利益の増減要因は、為替影響で1200億円、日立物流の再編で740億円、空調事業の再編で610億円のマイナスが発生し、その他で714億円のプラスがあったという。調整後営業利益の増減要因は、為替影響で150億円、日立物流の再編で30億円、空調事業の再編で70億円のマイナスが発生し、その他で11億円のプラスがあったとしている。

売上利益・調整後営業利益の増減要因

 国内売上収益は前年同期比6%減の1兆470億円、海外売上収益が同9%減の1兆834億円。「海外売上比率は51%となり、前年同期から1%下がったが、為替の影響を除くと実質53%であった。地域別の売上収益では、高機能材料の需要減などにより、中国が前年同期比19%減、ASEAN・インドが同23%減と大きく減収した。一方、欧州は、アンサルドブレダ社およびアンサルドSTS買収による鉄道事業の増収で、同25%増となった」という。

国内・国外の売上収益

 情報・通信システム事業の売上収益は前年同期比4%減の4350億円、調整後営業利益は前年同期から32億円増の122億円、EBITは前年同期から76億円減の7億円。そのうち、フロントビジネスの売上収益は前年同期比4%減の2947億円、調整後営業利益は13億円増の117億円、EBITは2億円増の111億円。ITプラットフォーム&プロダクツの売上収益は同4%減の1716億円、調整後営業利益は4億円改善し10億円の赤字、EBITは75億円悪化し102億円の赤字。消去他の売上収益は313億円の赤字、調整後営業利益は15億円、EBITは1億円の赤字となった。

 なお、2016年度から情報・通信システム事業のサブセグメントの名称を、「システムソリューション」から「フロントビジネス」、「プラットフォーム」から「ITプラットフォーム&プロダクツ」にそれぞれ変更している。

 売上収益は、海外子会社における為替換算影響に加え、海外向けATMの販売が減少したことや前年同期に大口案件を計上した公共システムが減収になったことなどにより、前年同期比4%減となった。一方、調整後営業利益は、通信ネットワーク事業を中心とした事業構造改革の効果などにより、前年同期から32億円増加した。EBITは、調整後営業利益が増加したものの、通信ネットワーク事業を中心に固定資産減損などの事業構造改革関連費用を計上したこと、為替差損を計上したことなどにより、前年同期から大きく減少したという。

事業部門別の業績(1)
事業部門別の業績(2)

 また、事業部門別の業績では、社会・産業システムの売上収益は前年同期比11%増の4830億円、調整後営業利益は62億円減の43億円。電子装置・システムの売上収益は前年同期比1%減の2559億円、調整後営業利益は21億円減の136億円。建設機械は売上収益が前年同期比9%減の1613億円、調整後営業利益は28億円減の21億円。高機能材料の売上収益は前年同期比13%減の3514億円、調整後営業利益は37億円減の275億円。オートモーティブシステムの売上収益は前年同期比3%減の2329億円、調整後営業利益は35億円減の73億円。生活・エコシステムの売上収益は前年同期比31%減の1398億円、調整後営業利益は65億円減の6億円。金融サービスの売上収益は前年同期比2%減の892億円、調整後営業利益は13億円減の107億円となった。

 事業ポートフォリオ改革の状況については、「日立物流を、5月19日付で持分法適用会社化した。また、日立キャピタル株式の譲渡実行日は、当初8月を予定していたが、10月以降に延期する」とした。英国のEU離脱の影響にも触れ、「2016年度第1四半期の英国の売上収益は736億円で、売上構成比の3%となる。英国のEU離脱決定による、英国および欧州事業への直接的な影響は軽微である」との見解を述べた。

 2016年度の通期見通しは、期初見通しを据え置き、売上収益が前年比10.3%減の9兆円、営業利益は同14.9%減の5400億円、税引前利益は同16.8%減の4300億円、当期純利益は同16.2%減の2000億円を見込んでいる。

2016年度の通期見通し