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日本オラクルのクラウド事業がさらに加速、キーワードは「Digital AID by POCO」

 日本オラクル株式会社が打ち出した2017年度(2017年5月期)の事業戦略は、同社のクラウド事業がさらに加速していることを示すものになったといえよう。

 日本オラクルの杉原博茂社長は、昨年、同社が設立30周年を迎えたことに触れながら、「これまでの30年間は、データベースだけを売ってきた会社だったが、いまから2年前に、今後は、クラウドでナンバーワンを取ると宣言した。そのときには、多くの人がポカンとしていた。だが、日本オラクルは、2016年度はすべての業績指標で過去最高を達成した。クラウドの成長率は当初予想の16~32%増を上回って39.3%増となり、新規ライセンスの売上高は3.9%増。SaaSの新規顧客数は150社、PaaSの新規顧客数は200社となった」とアピール。

 また、「クラウドビジネスが大きく成長する一方で既存製品も成長。クラウドという新たなビジネスを伸ばしながら、昔からのシステムを否定せずに展開している。システムプロダクトも2年ぶりにプラス成長となっており、ExaDataが好調。ハードとソフトが統合した『無分別智の世界』の提案が受け入れられている」などと、独自の表現を交えながら、その成果について触れた。

日本オラクル 取締役 代表執行役社長兼CEOの杉原博茂氏

 2016年度の業績は、売上高が前年比5.7%増の1702億円、営業利益が6.7%増の502億円、経常利益は6.3%増の502億円、当期純利益は11.0%増の335億円。売上高は6期連続の増収となり、過去最高を記録。営業利益では、5期連続増益となり、こちらも過去最高の利益を計上した。また、日経225における株価の平均成長率が16.3%減とマイナス成長であるのに対して、日本オラクルの株価が9%増になっていることに触れながら、「2016年度期間中に時価総額は508億円増額した。私が2014年度に社長に就任して以来、1471億円増になった」と語った。

2016年度の業績
日経株価の平均成長率を超える成長を遂げた

 そして杉原社長は、「クラウドナンバーワンを宣言してから、今年は3年目に入る。『社会に貢献するクラウドカンパニーへ』を新たに掲げ、Digital Disruptionの世界に対応していく。だが、日本オラクルが考えるとDigital Disruptionとは、これまでのものをすべて否定して、新たなものを提案するというのではない。目指しているのは、Digital AID by POCO(Power of Cloud by Oracle)。デジタルやクラウドの力を使って、補助する、助成する、助けるということに取り組んでいく」とした。

 2016年度は、「POCO」を前面に打ち出していたが、2017年度の事業戦略のなかでは、「Digital AID by POCO」が、日本オラクルにとって、重要なキーワードになるという。

 それを示すように、昨年までのPOCOの方針のなかでは、

1.SaaS/PaaS/IaaS事業の拡大
2.エンタープライズ営業の強化
3.システム事業の拡大
4.地域ビジネス成長への貢献

2017年度の重点施策

の4つを挙げていたが、Digital AID by POCOでは、これらの4つの最重要項目を継続しながらも、新たに「0」を設けて、

0.オラクルと他社との違い、それは、テクノロジー・カンパニーであること

を加えてみせた。

 「Amazonなどとの最大の違いは、30年間にわたってデータベースを提供し続けてきたテクノロジーを持つ会社であるということ。チップ、サーバー、ストレージ、エンジニアドシステム、アプリケーション、クラウドまでのすべてを提供できる。セキュリティにおいても、堅牢な環境を提供できる。早い、安い、簡単だけでなく、安心、安全も提供する」と自信を見せる。

 一方で、杉原社長は、2017年度における4つの最重点施策の具体策についても説明した。

 ひとつめの「SaaS/PaaS/IaaS事業の拡大」では、ERPクラウドに重点的に取り組む姿勢をみせる一方、パートナーとのクラウドプラットフォームにおける協業拡大、中堅および中小企業の開拓に加えて、OPN Cloud Programの推進を掲げ、「OPN Cloud Programへの参加パートナーは、戦略的に増やしていく考えであり、2017年度中に500社の参加を目標にする」という。

 2つめの「エンタープライズ営業の強化」では、製造、金融、流通/サービス、通信/公益、公共の5つのインダストリー別組織体制とともに、それぞれの担当としてバイスプレジデントを配置。これを「5奉行」と称してみせた。さらに、大口顧客へのソリューション一体提供の強化、日本企業の海外事業支援に取り組むという。

 3つめの「システム事業の拡大」では、コンバージドインフラ戦略の推進とともに、ビッグデータやIoTにおけるストレージ製品のビジネス成長に取り組む姿勢を強調。「特にコンバージドインフラへの取り組みについては、ぜひ、これからの動きに着目してほしい」と語った。

 4つめの「地域ビジネス成長への貢献」としては、新たに中国・四国支社を任命し、7支社7支社長体制としたことに加えて、47都道府県のすべてにおいてオラクルソリューションの導入を目標とすることや、地域における営業社員の採用を促進する考えを示した。

重点施策の具体策

 「これまで導入されることがなかった中堅、中小企業にも、日本オラクルの製品が導入されはじめている。40年の歴史を持つおこわの専門店である米八グループは、850人の社員数の企業だが、Oracle ERP Cloudを採用。特別なトレーニングを行うことなく利用を開始し、複数店舗の売上げ情報をリアルタイムに、一元的に管理し、原価や利益を分析できるようになった。所有するITでは、大企業だけがターゲットであったが、使用するITの世界に入り、中堅、中小企業にも使える環境が整った。これは、地域格差を解消することにもなる。POCOによって、デジタルデバイドの問題を解決していく」と語った。

 さらに、米本社が活用している「Accelerated Buying Experience」という言葉を引き合いに出して、「これからは、より短時間で、シンプルに活用できる新たなプロセスを提供する。日本オラクルは、もっともつきあいやすい会社を目指す」などと述べた。

 なお、事業戦略説明後には、デザイナーの山本寛斎氏と、「日本元気プロジェクト」に関して対談。杉原社長は、山本寛斎氏がデザインしたジャケットに着替えて登壇した。
 日本オラクルは、山本寛斎氏がプロデュースするイベント「日本元気プロジェクト 2016 スーパーエネルギー」において、オラクルのソーシャルメディア管理のクラウド「Oracle Social Cloud」を提供。同イベント参加者やファンとのデジタルコミュニケーションを推進するために、ソーシャルメディア上のコミュニケーションを把握、分析することで支援する。

 「日本元気プロジェクト 2016 スーパーエネルギー」は、7月21日に、東京・千駄ヶ谷の国立代々木競技場第二体育館において開催。人間のエネルギーを結集させたファッションショウによって、「震災以降のニッポン」や「ニッポンの未来」を見据えて日本中の人々を応援。元気を創り出し、感動を共有することを目的にしたイベントで、約3000人の来場が見込まれている。

事業戦略説明後、デザイナーの山本寛斎氏と対談。杉原社長は、山本氏デザインのジャケットに着替えて登壇