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Canonical、NTT Com、VMware、IBMなどがさまざまなソリューションを展示~Interop Tokyo 2014

 ネットワーク技術のイベント「Interop Tokyo 2014」の展示会が、6月11日から13日まで開催された。今年は総ブース数1320、総出展社526社で、総入場者数13万2609人となった。

 ここでは、これまでレポートした以外の展示をまとめて紹介する。

Canonical、x86・ARM・POWERのサーバー構築をデモ

 Linuxディストリビューション「Ubuntu」のCanonicalがSDI ShowCaseに出展。x86・ARM・POWERの3種類のCPUアーキテクチャのマシンを並べ、Ubuntuと、OS自動インストールの「MaaS」、クラスター構築オーケストレーションツール「Juju」を使い、OpenStack環境などを構築するところをデモした。

 その中でも、5月に発表されたポータブルなクラスターマシン「Ubuntu Orange Box」が目を引いた。10台以上のHaswell NUC(Next Unit of Computing)ボードを、289.5×228.2×578.9mm(29kg)のコンパクトなボディに格納した製品。クラウドインフラ構築の検証やトレーニングなどの用途を想定している。

 また、ARMについてはApplied MicroのARMv8 64ビットのサーバーSoC「X-Gene」搭載マシンを展示。POWERについてはIBMのPOWER8搭載4Uサーバー「IBM Power System S814」を展示していた。CanonicalとIBMは4月に協業を発表し、UbuntuとPOWER8とで互いに正式サポートしている。

Canonicalブース。x86・ARM・POWERの3つのCPUアーキテクチャでJujuやOpenStackをデモ。正面にはOpenStackの相互運用性検証制度「OIL」のパートナーのロゴが並ぶ
コンパクトな筐体に10台以上のサーバーが入った「Ubuntu Orange Box」。クラウドインフラ構築の検証やトレーニングなどの用途を想定
MaaSの画面。Ubuntu Orange Boxで10台(9台+MaaS自身)のサーバーが動作している
MaaSの制御によりPXEでサーバーが1台起動すると、該当するLEDが点灯する
JujuのGUI画面。ドラッグ&ドロップにより複数台のサーバー構成を設計してデプロイできる
ARMv8 64ビットのサーバーSoC「X-Gene」搭載マシンでJujuとOpenStack
POWER8搭載4Uサーバー「IBM Power System S814」。Jujuにより数分でHadoopやECサイトをデプロイしていた

A10、DDoS防御製品に負荷をかけるデモ

 A10ネットワークスのブースでは、2月にリリースされたDDoS防御専用製品「Thunder 6435 TPS」や、CGN(Carrier Grade Nat)の仮想アプライアンス「vThunder CGN」の動くサーバー、ADC「Thunder 5430S」「Thunder 1030S」などの入ったラックを展示。その場で160Gbpsの負荷をかけている様子をデモしていた。

DDoS防御専用製品「Thunder 6435 TPS」やCGN仮想アプライアンス「vThunder CGN」など
会場で160Gbpsの負荷をかけるデモ

Intel DPDKをLTEコアネットワークに応用

 SDI ShowCaseのIntelのブースでは、Linuxで通信機器を作るためのLinux用ライブラリ「DPDK(Data Plane Development Kit)」を紹介していた。DPDKでは、専用ネットワークプロセッサに匹敵する性能を汎用サーバーで実現するのが狙い。Linuxカーネルでパケットを処理するオーバーヘッドをバイパスしたり、パケット処理でマルチコアを有効利用したりといった手法を取っているという。

 ブースでは、DPDKをキャリアのLTEコアネットワークに応用する日立のコンセプトデモも展示されていた。LTEネットワークを構成するP-GWやS-GWにDPDKを使う例を、ストリーミングをサンプルにデモしていた。日立では、専用のATCA(Advanced TCA)機器でなく汎用サーバーとすることで、調達のスピードやコストのメリットを狙うという。

日立が、LTEコアネットワークにIntel DPDKを使う例を、ストリーミングをサンプルにデモ
DPDKの説明
ネットワーク仮想化関連の処理を強化したサーバー用40Gイーサネットアダプター(参考出展)

NTTコミュニケーションズのサービスをすべてSDN化するコンセプトデモ

 SDI ShowCaseのNTTコミュニケーションズのブースでは、「NTTコミュニケーションズのサービスをすべてSDN化したらどんなことができるか」というコンセプトデモ「AMPP(A Multiple southbound interface control Platform and Protocol system)」を展示していた。ユーザーからMPLSバックボーン、データセンター、インターネットまでの接続を疑似的に作り、独自開発のオーケストレーターとGUIからネットワークを操作。こうした仕組みによりユーザーが利用するまでのリードタイムを短縮するのが目的だという。

NTTコミュニケーションズのコンセプトデモ「AMPP」
モニター情報の表示
SDNによる仮想パッチパネル
ユーザーがインターネットの動画を再生できるようにするところをデモ
AMPPのデモのネットワーク構成
AMPPデモのラック

NTTデータ、通信キャリア向け広域SDNソリューション

 SDI ShowCaseのNTTデータのブースでは、通信キャリア向けSDNソリューションをデモしていた。広域のインターネット接続や広域イーサネットサービスを、物理的に一元化し、管理も一元化して、その上にSDNで個別のサービスを設定する。都道府県や市町村などの地理的な単位(ドメイン)に分け、それぞれにコントローラを設けることでスケールさせるという。

SDNにより企業拠点間のネットワークを作成
ネットワークが作成されて企業ユーザーの間でpingが通るようになった
NTTデータの通信キャリア向けSDNソリューション
日立電線の通信事業者向けApresia 12000

VMware、SDDCとネットワーク仮想化、デスクトップ&モバイル

 VMwareのブースでは、「Software-Defined Data Center」「Network Virtualization」「Software-Defined Workspace」の3つの製品群に分けて展示。「Software-Defined Data Center」では、vSphere、Storage(Virtual SAN)、Management、Automation、Hybrid Cloudの5つの製品群を紹介していた。

 Network Virtualizationでは、VMware NSXによるネットワーク仮想化と、そこでの分散ファイアウォールの実装方法について説明していた。VMwareでは、ハイパーバイザーESXiにファイアウォール機能を持つことにより、ネットワークのボトルネックや、VM間の通信の設定管理問題などを解決するという。

 また、Software-Defined Workspaceでは、デスクトップ仮想化製品VMware Horizon 6と、MDM製品AirWatchを紹介していた。

Network Virtualizationのコーナー。VMware NSXによるネットワーク仮想化と、そこでの分散ファイアウォールの実装方法について説明
ハイパーバイザーESXiのファイアウォール機能
Software-Defined Data Centerを構成する5つの製品群
Software-Defined Workspaceのコーナー。デスクトップ仮想化製品VMware Horizon 6と、MDM製品AirWatch

パロアルト、エンドポイントセキュリティやモバイル、VMwareとの共同ソリューションなど

 パロアルトネットワークスのブースでは、CYVERA社の買収により進出したエンドポイント向けセキュリティソリューションについて紹介している。また、WildFireプラットフォームによる標的型攻撃への対応や、モバイルのデバイスや通信を管理するMobile Security Managerなども展示している。

 さらにVMwareとの共同によるソリューション「VM-Series for VMware NSX」も展示。パロアルトのソフトウェアファイアウォール「VMシリーズ」をVMware vSphere上で動かし、ネットワーク仮想化製品VMware NSX上で通信をVMシリーズにリダイレクトすることで、ネットワーク上の必要な場所にファイアウォールを設置できる。

パロアルトネットワークスのエンドポイント向けと標的型攻撃対策
攻撃型対策のWildFire WF-500など
モバイルのデバイスや通信を管理するMobile Security Managerなど
Mobile Security ManagerのGP-100
VMwareとの共同によるソリューション「VM-Series for VMware NSX」
デモの構成
VMware NSXにファイアウォールのサービスを登録
ファイアウォールによりアクセスがブロックされたところ

IBM、SDNコントローラとOpenStack、仮想ロードバランサーを連動

 SDI ShowCaseのIBMのブースでは、OpenDaylightベースのSDNコントローラ「IBM SDN-VE(Virtual Environments)」とRed HatのOpenStackディストリビューションを組み合わせ、OpenStackから仮想ネットワークを操作するところや、A10ネットワークの仮想ロードバランサー「vThunder」をOpenStackのインスタンスとしてデプロイするNFVをデモしていた。

IBMブースのデモの説明。IBM SDN-VEとOpenStackを組み合わせる
OpenStackから見た仮想ネットワーク。vThunderも動いている
SDN-VEから見た仮想ネットワーク

マクニカネットワークスの扱うさまざまなソリューション

 マクニカネットワークスのブースでは、扱っている各社のさまざまなソリューションを展示していた。

 MobileIronは、スマートフォンやタブレットのセキュリティのためのMDM(Mobile Device Management)・MAM(Mobile App Management)・MCM(Mobile Content Management)製品。端末内を企業ゾーンとプライベートゾーンに分けて、それぞれの中に汎用アプリケーションを格納できるのが特徴。

 また、remotiumはスマートフォンやタブレットのアプリをデータセンター内のサンドボックスで実行し、画面転送のような形で端末から操作するソフト。そのため、端末にデータが残らない。

 CrowdStrikeの「Falcon Intelligence」は、サイバー攻撃に関する情報のサービス。元々インテリジェンスの世界出身の企業とのことで、攻撃者に関するデータやレポートを提供する。この情報を使ったエンドポイント(PCやモバイル端末)向けセキュリティ製品「Falcon Host」も提供している。

 boxは、企業向けのファイル共有サービス。アカウント権限管理やコラボレーション機能など、企業ユースに向けた機能を備える。

 Nutanixの「バーチャルコンピューティングプラットフォーム」は、サーバー複数ノードとストレージを1つの筐体に収納した製品。複数のハードディスクやSSDからなるストレージは、独自のファイルシステムで全体が1つのプールとなって分散書き込みされ、各サーバーノードから利用されるという。

 PLUMgridのソリューションは、オーバーレイ型の仮想ネットワーク製品。ネットワーク機能をオンデマンドで提供する機能などを持つ。MellanoxのNICを使い、AristaのスイッチにVXLAN処理をオフロードして、PLUMgridのネットワークで40Gイーサネットのワイヤレート近いスループットという実験結果も紹介されていた。

MDM・MAM・MCM製品のMobileIron。汎用のアプリを企業ゾーンとプライベートゾーンに分けて利用する
remotium。モバイルアプリをデータセンターで実行して端末から操作する
サイバー攻撃に関するインテリジェンス企業のCrowdStrike
企業向けファイル共有サービスのbox
Nutanixのバーチャルコンピューティングプラットフォーム。サーバー複数ノードとストレージを1つの筐体に収納
PLUMgridの展示は、マクニカネットワークスブースとSDI ShowCaseの両方に
VXLAN処理をオフロードして40Gイーサネットのワイヤレート近いスループットを出した実験

ネットワン、ベンチマークやイメージ移行に対応したマルチクラウド管理ツール

 SDI ShowCaseのネットワンのブースでは、マルチクラウド管理ツール「CliQr CloudCenter」をデモしている。パブリッククラウドからプライベートクラウドまで、さまざまなクラウドを統合管理するツール。対応しているクラウドについて、実際にベンチマークを取って、金額とパフォーマンスのマトリックス図を表示する機能を持つ。また、クラウド間のイメージ移行の機能もあるという。

マルチクラウド管理ツール「CliQr CloudCenter」
ベンチマークを取って金額とパフォーマンスのマトリックス図を表示する機能
VMware NSXインテグレーションやCisco ACIインテグレーションの紹介も

TIS、クラウドの障害時に別のクラウドにシステムをデプロイするソフト

 SDI ShowCaseのTISのブースでは、オープンソースで公開しているエンタープライズ向けのクラウドオーケストレーションソフト「CloudConductor」をデモしていた。クラウド上のシステム構成や設定をパターン定義として作成し、一度構築したシステムをほかのクラウドで再現できるようにする。さらに、クラウドの障害を管理ソフトで検知し、別のクラウドに同じシステムをデプロイしてDNSを向け替える機能などを持つのが特徴で、その様子をデモしていた。クラウドとしてはOpenStackとAWSに対応。ChefやZabbix、Rubyなどを内部で利用している。年内にバージョン1.0を目標としているという。

クラウドオーケストレーションソフトCloudConductorのデモ。右のPCに2つのクラウドと監視サーバーの画面が、左のPCにWebにアクセスするユーザーの画面が表示されている
画面左側のクラウドで障害が起きたのを監視サーバー(Zabbix)が検知し、画面右側のクラウドに同じシステムをデプロイした様子

ミドクラ、クラウドプラットフォームとのエコシステム

 SDI ShowCaseのミドクラのブースでは、OpenStackのようなクラウドプラットフォームとネットワーク仮想化製品「midonet」のエコシステムなどを展示している。

ミドクラのブース。midonetと各クラウドプラットフォームとのエコシステムなど
midonetのTopology viewer

Arista、100GラインカードやIPOの記念写真

 SDI ShowCaseのAristaのブースでは、6月末ごろ発売予定のArista 7500Eの100Gラインカードなどを展示した。また、6月6日に同社がIPOした記念の写真も紹介していた。

Arista 7500Eの100Gラインカード
6月6日のIPOの写真

APPS JAPANが同時開催

 Interop Tokyo 2014では、併催イベントとして、アプリ開発に関する専門イベント「APPS JAPAN(アプリジャパン)」も開催された。

 その中で、Web標準化団体のW3Cは「Open Web Platform Corner」として、W3C参加企業による取り組みを紹介していた。

 Mozilla Projectは、発電機能や、衛星ブロードバンドサービスIPSTARとKDDIのモバイル回線によるインターネット接続機能、無線LAN機能を備えた「Mozilla Bus」を展示した。

 AMEI(一般社団法人 音楽電子事業協会)は、W3Cで策定中の「Web MIDI API」への取り組みと、Web MIDI APIを使ったデモを展示した。1つは、タブレットの操作でMIDIの信号によりドラマーの人形が激しくドラムをたたくもの。もう1つは、「ポケット・ミク」と同じチップを使った、端子程度のサイズのボードが歌って演奏する「Standard MIDI FIle Player」だ。

 ACCESSは、ルネサスの車載情報端末向けSoC「R-Car H2」搭載ボードで、組み込み機器向けHTML5対応Webブラウザ「NetFront Browser NX」を動かしたものをデモ。ブラウザ上で3Dグラフィックを表示した。CPUが非力な中、GPUを生かして3Dを表示しているという。また、自動車向けのHTML5 API仕様策定への参加も紹介されていた。

 NTTコミュニケーションズは、HTML5のリアルタイム通信技術「WebRTC」で通信開始などのサーバー機能を提供するプラットフォーム「SkyWay」と、SkyWayを使ったビデオチャット「WebRTC Chat on SkyWay」を展示していた。ビデオチャット自体はP2P型のため、ユーザーが増えてもビデオ通信の負荷はサーバーにかからないという。

 そのほか、自動組み版ソフト「AH Formatter」のアンテナハウス、Webサイトやアプリ制作のoRo、Webデザイナー・エンジニア専門スクールのインターネット・アカデミーが、Open Web Platform Cornerで展示していた。

発電機能や、衛星ブロードバンドサービスIPSTARとKDDIのモバイル回線によるインターネット接続機能、無線LAN機能を備えた「Mozilla Bus」
AMEIのデモ。ドラマー人形が激しくドラムをたたくデモ(左)と、端子程度のサイズのボードが歌って演奏するデモ(右)
車載情報端末向けSoC「R-Car H2」搭載ボードで、ACCESSの「NetFront Browser NX」で3Dグラフィックを表示するデモ
NTTコミュニケーションズ。WebRTCのプラットフォーム「SkyWay」と、SkyWayを使ったビデオチャット「WebRTC Chat on SkyWay」
自動組み版ソフト「AH Formatter」のアンテナハウス
Webサイトやアプリ制作のoRo
Webデザイナー・エンジニア専門スクールのインターネット・アカデミー

 APPS JAPANには、「日本Androidの会」のコーナーも設けられていた。Oculus RiftやGoogle Glassの影響か、メガネやウェアラブル型のデバイスが多く並んでいた。

 「FakeRift」は、タブレット端末と100円均一ショップ商品で作った、Oculus Rift風の手作り3D VRゴーグル。ジェットコースターの乗客視点の3Dアニメーションを流しながら、タブレット端末で加速度や傾きを検知して画像の視線の向きを変える。

 infinitegraは、Androidでroot権限を取らずにUSBカメラを使えるライブラリを開発。応用例として、ゲームエンジンUnityでのカメラ画像の表示や、暗いところの撮影、ステレオカメラ、ヘルメットやメガネに付けた記録用カメラを展示していた。

 ブリリアントサービスの「mirama」は、メガネ型のスマートデバイスだ。メガネ前面に付いたカメラによるジェスチャー認識の機能も持つ。展示では、目の前の映像をメガネに映しつつ、目の前にかざした指の動きを認識して空間に線を描くアプリをデモしていた。機能やデザインなど完成度が高く感じた。

手作り3D VRゴーグル「FakeRift」でジェットコースターを体験
infinitegraのUSBカメラライブラリの応用例。ゲームエンジンUnityでのカメラ画像の表示
USBカメラライブラリの応用例。暗いところの撮影
USBカメラライブラリの応用例。ヘルメットやメガネに付けた記録用カメラ
ブリリアントサービスによるメガネ型のスマートデバイス「mirama」。ジェスチャー認識により目の前の空間に線を描けるARアプリをデモ

 ちなみにAPPS JAPAN会場には、芸人の“なすび”氏もいた。氏のキャラクターが目的地の方向を指し示す観光ナビアプリ「指さしナビ」(会津ラボ)のブースだった。

芸人の“なすび”氏がAPPS JAPANに!?
なすび氏のキャラクターが目的地の方向を指し示す観光ナビアプリ「指さしナビ」(会津ラボ)

高橋 正和