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「ビジネスの構造変化はあちこちで起こっている」~富士通・山本正已社長

富士通フォーラム基調講演レポート

富士通の山本正已社長

 富士通株式会社は、5月15日・16日の2日間、東京・有楽町の東京国際フォーラムで、同社最大のイベントとなる「富士通フォーラム」を開催している。

 今年のテーマは「Human Centric Innovation」。進化するICTの力で「人」を支援することで、イノベーションの創出を加速。顧客のビジネスやさまざまな社会課題の解決に貢献していくことを意味するという。

 このテーマにあわせて、基調講演をはじめとする12の特別講演、74のセミナー、4つの特別セミナーなど、全90の講演およびセミナーを用意。社会、ビジネス、ICTを切り口に、さまざまなテーマやキーワードに沿った内容にしている。

 15日午前10時から行われた、富士通の山本正已社長による基調講演では、「ビジネス革新と豊かな社会の実現に向けた挑戦 ‐Human Centric Innovation‐」をテーマに、富士通が取り組むビジネス革新と、豊かな社会の実現に向けた挑戦について説明。急速に進む技術革新や、経済のグローバル化を受けた市場変化を背景に、環境汚染や資源・エネルギー問題、自然災害への備えなど、より大きな課題への対応が急務となるなか、富士通の最新のICTソリューションなどに言及しながら、企業経営に役立ち、豊かな社会を実現するイノベーションへの挑戦などについて触れた。

ハイパーコネクテッドの時代が到来した

川崎フロンターレの大久保嘉人選手が日本代表に選ばれたことを祝福

 冒頭、山本社長は、富士通がスポンサードするJリーグの川崎フロンターレの大久保嘉人選手が日本代表に選ばれたことに触れるとともに、レーシングカーの進化にスーパーコンピュータが活用されていることなどを紹介。

 また、「ハイパーコネクテッドな時代の到来」という言葉を使いながら、スマートフォンの広がりによって、新たなサービスが次々を生み出されていること、ソーシャルメディアによって人がつながることが当たり前になってきたこと、センサーの活用などにより、今後数年で500億個とも1兆個ともいわれる「モノ」がネットワークにつながることを示し、「すべてのものがつながる時代の入り口に立っている。こんな時代になると、なにが起こるのか。ビジネスの日常、生活の日常が大きく変わる。これまでにはできないこと、ありえないことが可能になり、圧倒的な競争力を生み出す大きなチャンスである。イノベーションという点でも、おもしろい、エキサイティングな時代になると確信している」などと語った。

 一方で、「これまで参入が難しかった分野にも新たな企業が参入するチャンスになる」とし、ハイパーコネクテッド時代には、新たな競合、パートナーが出てくることにも言及。Amazon.comの例をあげながら、「米国のA社は、ネット通販の事業者でありながら、クラウド競争相手でもある。パートナーにも、競合にもなりうる。こうしたことは、総合スーパーが、野菜の生産、物流、製品加工を行うといったように、小売りと農業の融合による新たな業態が生まれたり、ソーシャルメディアを利用して、個人が旅行者に宿泊場所を提供するといったことも行われている。意外なところから新たな競争相手が登場するといった、ビジネスの構造変化はあちこちで起こっている」と語った。

 その一例としては、山本社長はこんな事例をあげてみせた。

 「日本や米国ではガムの販売量が落ちている。その理由は、スマホの普及によるものだという説がある」というのだ。

 ガムの需要は、待ち時間の暇をつぶすという役割があったが、その立場がスマホに奪われたという。「この説は正しくないかもしれないが、ここにはある心理があるといえる。ここでガムそのものにお金を払っているのではなく、ガムがもたらす体験にお金を払っているという点だ。主体性を持ち、多くの選択肢を持った消費者は、体験を重視しはじめている」と語った。

(大河原 克行)