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NTT Com、キャリア品質のクラウドでグローバル市場へ拡大~有馬社長講演
(2013/10/24 15:27)
NTTコミュニケーションズは10月24日・25日から2日間の日程で、企業向けの自社イベント「NTT Communications Forum 2013」を開催中だ。開催両日とも代表取締役社長の有馬 彰氏の基調講演が行われる。ワールドワイドに展開するNTT Comのクラウド戦略とその状況、および今後の展開について解説した基調講演をレポートする。
今後のクラウドは“コアシステム”への導入が進む
「NTTコミュニケーションズのグローバルクラウドビジョン2013 ~これまでの取り組みと今後の展開~」と題して行われた基調講演で有馬社長は、まず日本と米国におけるクラウドの利用状況をグラフで示した。日本では、すでに導入している企業が21%で、2011年の14%、2012年の19%から徐々に伸びている。導入を検討中もしくは興味があるとした企業は37%。震災の影響で一時的に増加していた2011年の42%から2012年の20%へといったん大きく下落した後、2013年になって再び増加に転じた形だ。一方、米国企業では導入済みが44%、検討中は45%となっており、日本よりクラウドの浸透が大きく進んでいることがわかる。
クラウド化の対象となるシステムは、アクセンチュアの調査によると、現在はキャンペーンサイトや電子メールなどの情報システムのような、いわば“ノンコアシステム”と言えるサービスで導入されている。しかし、今後は企業活動の“コアシステム”となる会計・財務管理、サプライチェーンマネジメントなどにおいても導入が進むと見ている。
また、これまではコスト削減やシステムの効率化のためにクラウドを採用する例が多かったところ、“コアシステム”への導入が始まりつつある現在は、「新しい事業の拡大や、今の事業構造を変えたい、あるいはグローバル展開を加速させたり、事業継続性を強化するためにクラウドを導入する事例が増えてきていることを実感している」(有馬社長)と説明。クラウド採用がコスト削減という守りの投資だけでなく、攻めの投資となってきている点を指摘した。
ネットワーク事業者ならではの高品質・高信頼のクラウドをアピール
ここで有馬社長は、実際にNTT Comのクラウドサービスを導入した3社の事例について簡単に紹介した。商品のブランドごとにバラバラに管理されていた顧客情報をクラウドに移行し統合することで、異なるブランド商品のクロスセルを推進し収益を拡大した例、店舗の海外展開を加速化するために柔軟かつ迅速に利用できるクラウドを導入した例、地震などの天災に備えて冗長性のあるクラウドを導入することで事業継続性を高めた例を挙げた。
これらの企業におけるクラウド化は、NTT Comが2011年10月に発表した「Global Cloud Vision」という取り組みがベースとなっている。低コストかつグローバルレベルで最適化され、安心・安全に利用できるICT環境を実現するクラウドサービスとして展開しているものだが、この価値向上に向けた取り組みには3つのポイント、「通信事業者ならではのクラウドの展開」、「グローバルでのサービス提供力の強化」、「ネットワーク仮想化技術を用いた新たな付加価値の提供」があるとし、同サービスの利点を強調した。
1つ目の「通信事業者ならではのクラウドの展開」について有馬社長は、「あらゆる事業者がクラウドサービスを提供しているが、当然ながらクラウドの利用にはネットワークが必要。私どもはネットワーク事業者なので、グローバルのネットワークに直結した品質・信頼性の高いクラウドを提供できる」とし、クラウドとネットワークを一体的に運用・保守できる点がメリットだと語った。
2つ目の「グローバルでのサービス提供力の強化」では、「顧客に全世界でのサービスへの提供力を強化してもらいたい、という形で取り組んできた」ことから、世界38の国・地域の100都市にクラウドを提供するための拠点を整備していること、日本・米国・アジア主要各国を相互に低遅延で結ぶ海底ケーブルを敷設していること、160カ国にネットワークサービスを展開していることを明らかにした。
また、現在準備中のものも含め、データセンターは世界150拠点、クラウドサービス自体も世界12拠点で提供。NTT Com自身がサービスを提供するだけでなく、海外企業のM&Aも推し進めることで、グローバルにおける事業の拡大・強化を行ってきていることも報告した。
最後の3つ目の「ネットワーク仮想化技術を用いた新たな付加価値の提供」では、NTT Comのクラウドサービスで顧客自らが利用できる「カスタマーポータル」にて、ネットワーク機器の設定や変更等を可能にする仮想ネットワーク技術を提供している点を挙げた。この仮想ネットワークは、データセンター内だけでなく、データセンター間、それらをとりまくWAN、さらには顧客のLAN環境へと適用範囲を順次拡大しているところだという。
インフラ、ネットワーク等、多方面からクラウド時代に攻め込む
NTT Comが今年度から推進している「Global Cloud Vision 2013」では、現状各企業がオンプレミスで運用・管理している各種アプリケーション、サーバー、ネットワークをクラウド中心のアウトソーシングへと移行し、「ICT環境の改革をしていただく」(有馬社長)というもの。これにはインフラやネットワーク、セキュリティや運用管理など、9つの特長があると語った。
例えばインフラにおいては、データセンターの拠点増を順調に進めており、低遅延ネットワークを実現する海底ケーブルもハイペースで増設・拡張。2014年にも日本とアジア各国9カ所を結ぶ新たなケーブルが開通予定となっている。
仮想ネットワークでは、2012年6月に世界初となるデータセンター内での仮想ネットワークの商用利用を開始したのを手始めに、2013年6月からはネットワークセグメントやIPアドレスを変更することなく既存のオンプレミス環境からクラウド環境にマイグレーション可能にする「オンプレミス接続オプション」を提供している。
2014年4月には、クラウドに移行しにくいシステムをコロケーションという形でNTT Comに預ける場合にも、既存のオンプレミス環境のネットワークセグメントやIPアドレスを変更せずに利用できるようにする「コロケーション接続オプション」も提供を予定。
仮想ネットワークを駆使して接続することにより、データセンター内のコロケーションだけでなく、データセンター間のコロケーションも実現し、複数のデータセンターにまたがっていても別途回線負担なしに1つのデータセンターのように運用できるのが大きな特徴だという。
その他、NTT Comが提供する「Bizホスティング Enterprise Cloud」サービスとグローバルネットワークとの接続において、従来のベストエフォート型に加え、低いコスト負担でありながらより安定した高速通信が可能なギャランティ型の提供をこの2013年10月から開始。この接続自体も2014年の夏をめどに自動化され、従来の手動による手続きと比べ圧倒的に短い期間で利用可能になることを明らかにした。
さらに、M&A等で拠点を追加した際に、既存の物理ネットワーク構成を変更せずにセキュリティを保ちつつシステム統合を行える「仮想ネットワーク オーバーレイ機能」も2014年3月に提供可能となる見込みだ。
有馬社長は、これら数々のサービス、ソリューションは「当然私どもだけでは実現できない」として、「アプリケーション事業者やコンサルティング企業、SIer、通信事業者、NTTグループ各社とパートナーシップをさらに強化して、お客さまの役に立つクラウドソリューションを展開したい」と結んだ。