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Dell Technologiesは次の産業革命に備えるためのインフラを提供する――、マイケル・デル会長

Dell EMC WORLD 2016基調講演

 米Dell Technologiesは、10月18日~20日(現地時間)までの3日間、米国テキサス州オースティンのオースティンコンベンションセンターにおいて、プライベートイベント「Dell EMC WORLD 2016」を開催した。

 昨年までは「Dell World」として開催していたが、9月7日付けで米Dellによる米EMCの買収が完了したのに伴い名称を変更。第1回目の「Dell EMC WORLD」と位置づけた。

米国オースティンで開催された「Dell EMC WORLD 2016」

 会場には、世界36カ国から、約8000人が参加。日本からはデルの平手智行社長や、EMCジャパンの大塚俊彦社長をはじめとする同社関係者のほか、パートナー企業などから約120人が参加した。

 会期中には、基調講演やゼネラルセッションのほか、120のブレイクアウトセッションを実施。展示会場であるソリューションショーケースにはDell Technologiesの各種ブランドの製品に加えて、パートナー企業によるソリューションが展示された。会場では、IoTソリューションやデータセンターソリューションなどに注目が集まっていた。

展示会場であるソリューションショーケースの様子

次の産業革命に備えるための重要なインフラを提供できるプロバイダー

 開催2日目となった10月19日午前9時から行われた基調講演では、マイケル・デル会長兼CEOが登壇。今回のイベントのテーマである「LET THE TRANSFORMATION BEGIN」を切り口に、スタートしてわずか6週間を経過したばかりのDell Technologiesの取り組みについて説明した。

Dell Technologiesのマイケル・デル会長兼CEO
イベントのテーマは「LET THE TRANSFORMATION BEGIN」

 デル会長は、ロック調の音楽が鳴り響くなか、ゆっくりとした足取りで登場。「第1回目のDell EMC WORLDにようこそ」と切り出し、「昨年のDell Worldの直前に、EMCの統合を発表した。わずか1年前のことである。いまや、Dell Technologiesは世界で一番大きなIT企業になった」と語り、会場から大きな拍手が沸いた。

 「デジタル技術により、仕事も、生活も、学習も、コミュニケーションの仕方も変わってきた。適切なテクノロジーを開発すれば、我々の進化はさらに増幅し、改善することができる。だが、この旅路を始まったばかりである」と切り出す。

 続けて、「いまでは80億台のデバイスが、インターネットに接続されているが、15年後の2031年には2000億台以上のデバイスが接続されるだろう。これは世界人口の25倍の規模であり、新たなタイプの情報を生み出し、世の中をより良くすることにつながるだろう。それが我々の世代でやるべきことであり、歴史的に見ても、すばらしいチャンスが巡ってきている」との予測を紹介。

 そして、「コンピューティングの処理能力、ネットワークの帯域、ストレージ容量などが、5年で10倍になっている。15年後を考えれば、10×10×10となり、パワーも、スピードも、キャパシティも1000倍になる。これを活用すれば、スマートシティの誕生によって生活を豊かにし、自動運転によって交通事故もなくなるだろう。癌の克服もできるだろう。翌日宅配では遅いという時代もやってくるだろう。教師がいなくても学習ができるようになるかしれない。大小様々な新たなイノベーションが起こり、予想もつかないような未来がやってくる。新たなデジタル時代の夜明けが訪れている」との未来を予測してみせた。

 デル会長によれば、さまざまな業界のエグゼクティブを対象に実施した最近の調査では、デジタル化によってもたらされる新たな世界に備えたいとの回答は約8割に達したものの、45%の企業が3~5年後には存在できないかもしれないと懸念しており、48%の企業が3年後に業界がどうなっているのかわからないと回答しているという。

 また、78%の企業がデジタルスタートアップ企業の存在を脅威に感じていることを示しながら、「デジタルの恐怖や脅威が近づいている。それは準備をしていても、しなくても訪れるものである。だからこそ、Dell Technologiesという会社を設立した」とした。

 続けて、「DELL EMC、Pivotal、RSA、SecureWorks、Virtustream、VMwareといったさまざまな企業が傘下にあるDell Technologiesは、サーバーやストレージ、仮想化、セキュリティ、クラウドインフラ、クラウドソフトウェアといった数々の分野で、ナンバーワンのシェアを持っている企業でもある。ガートナーのマジッククアドラントでは、20の領域においてナンバーワンのリーダーであり、2万件以上の知的財産を持ち、毎年45億ドルをR&Dに投資している。これは2位の企業に比べて2倍の投資規模。さらに、事業部門を飛び越えた効率の高い強力なサプライチェーンを持っている。フォーチュン500社のうちの98%がDell Technologiesの技術を活用している。その技術とイノベーションを活用することで、もっとも信頼できるパートナーになれる会社がDell Technologiesだといえる。みなさんと一緒にデジタルの将来を構築していきたい」と語った。

 このほか、DellとEMCとの統合によって、アナリティクス、ハイブリッドクラウド、セキュリティ、データセンター、ゲートウェイ、PC、エッジデバイスまでを取り扱うことができ、他社にはないグローバルサポート体制やコンサルティング体制が実現できることを強調。パートナーを含めて6万人のサービスプロフェッショナルがいることや、12万人の認定パートナーがいること、それを165カ国で展開していることなどを示した。

 また、「非上場会社であることも重要であり、この立場を最大限に活用している。長期的な成功にフォーカスできる一方で、四半期ごとの一株あたり利益などは気にすることがない。独立系のエコシステムやオープンアーキテクチャにも投資ができ、顧客に対しては、Dell Technologiesファミリーとして、選択と柔軟性が提供できる」と語り、「Dell Technologiesをひとことでいえば、次の産業革命に備えるための重要なインフラを提供できるプロバイダーである」と位置づけた。

統合後わずか6週間で登場した「VXRail」

 今回のDell EMC WORLD 2016では、いくつかの新製品を発表した。

 そのなかでも、デル会長自らが紹介したのが「VXRail」である。Power Edgeサーバーを統合したハイパーコンバージドアプライアンスであり、「DellとEMCとの統合からわずか6週間で、DellとEMC、VMwareの技術を結集した世界一流の製品が登場した。ITの民主化を実現する技術が登場し、データセンターの将来を担うことになる」とアピールした。

VXRailを紹介

 またデル会長は、今後はハイブリッドクラウドが重要な役割を担うと指摘しながら、「ここではモダナイズ、オートメイト、トランスフォームという3つのステップを踏むことになるが、それぞれにDell EMC、VMware、Virtustreamという3つの製品によってカバーすることができる。これによって、ほかのパブリッククラウドでは実現できない高い可用性や信頼性、SLAを提供でき、さらにマルチクラウドを活用できる選択肢も提供できる。そして、VMware、Pivotal、Boomi、Virtustreamの活用によって、ハイブリッドクラウドを管理、運用できる環境も整う」と述べた。

PCやセキュリティの取り組みにも言及

 デル会長兼CEOは、PCの取り組みについても言及した。

 「PCビジネスは、Dell Technologiesにとって、重要な事業のひとつであり、戦略の中核を占めるものである」とし、「これまでにもPCの開発に積極的な投資をしてきた。その結果として、さまざまな表彰を受けてきた。結果として、15四半期連続でPC市場におけるシェアを拡大しており、最新四半期では、他社がPC市場におけるシェアを縮小させるなかで、デルだけが市場シェアを伸ばした。IoTの広がりにより、エッジの部分でさまざまなイノベーションが起きており、15年後には、1000倍も進化した技術が使われるようになる」という点を指摘。

 そして、「データセンターやクラウドに接続されているデバイスが2000億に達するとも予測されている。こうしたことを考えると、様々な領域で、クライアントソリューションが活用され、このビジネスがますます重要になってくることがわかるだろう」と述べた。

 さらにデバイスの広がりに伴い、セキュリティが重要視されてくること、すでにサイバー犯罪による被害がすでに2兆1000億ドル規模に達していること、一度の攻撃で1億500万ドルの被害ができることなどを指摘。

 「テクノロジーの変革やワークフォースの変革と並んで、3つめの柱となるのがセキュリティの変革である。セキュリティポリシーは、ビジネスの変革を支えるものであり、阻害するものになってはいけない。Dell Technologiesは、RSA、SecureWorks、NSX、AirWatch、DDP(Dell Data Protection)といったプロダクトやソリューションによって、セキュリティ課題を解決できる。我々ほどセキュリティを提供するのに適した企業はない」と語った。

 最後に、「Dell Technologiesのストーリーは、これで終わりではない。デルとEMCが一緒になったことで、存在意義をさらに高め、世の中に大きなインパクトを与え、プラスの変革を起こしたい」と語った。

デジタル変革の近道はDell Technologiesの技術を活用することだ

 基調講演では、Dell EMCのインフラストラクチャーソリューショングループのデビット・グールデンプレジデントや、ジェフ・クラーク副会長も登壇。さらに、Alienwareの創業者であるフランク・エイゾール氏も特別ゲストとして登壇した。

 グールデンブレジデントは、「トラディショナルITに対しての投資は頭打ちとなり、今後は、クラウドネイティブなITへの投資を拡大していく流れがある。そして、プライベートクラウドと複数のパブリッククラウドを結んだハイブリッドクラウドが今後の主流になるなかで、すでに24%のコスト削減効果を達成したり、コスト削減ができた4割の費用を新たなイノベーションの開発にまわすことができるというメリットがある」とする。

 また、「デジタル変革の近道は、Dell Technologiesの技術を活用することである。あらかじめ検証されたものを活用したり、モダナイズ、オートメイト、トランスフォームに最適化した製品を利用したりできる。サーバー、ストレージ、ネットワークのほか、仮想化、オーケストレーション、プラットフォームといったクラウドを構築するために必要なものを提供でき、ハイブリッドクラウドを短期間で展開できる」などと主張。

 その上で、「クラウドアプリを自分たちで開発したいという場合や短期間でハイブリッドクラウドを構築したいという場合に、Dell Technologiesは、魅力的なオファーができる。市場において、リーダーとなっているサーバー、ストレージ、ネットワーク製品が強みである。デルとEMCのポートフォリオを組み合わせることでパワフルな製品を提供できる。技術はこれからも進化していく」と、自社をアピールした。

Dell EMC インフラストラクチャーソリューショングループのデビット・グールデンプレジデント

 クラーク副会長は、「企業の大小を問わず、仕事のやり方が変わってきている。PCでコンテンツが作成され、コラボレーションが行われ、クラウドで情報が共有されるといったことが、考えつかなかった規模で行われている。オフィスのスペースは10年前に比べて6割も削減されており、端末は小型軽量化されており、仕事はどこでもできるようになっている。これによって、1日のうち2時間は公共の場所で仕事をしているというデータもある。また、社員の50%は私物のデバイスを持ち込んでおり、複数のデバイスを利用している人は6割に達している。これはIT部門の負担が増えていることにつながっている」との現状を紹介。

 一方で、「セキュリティは大きな課題となっており、過去2年間で、侵入および侵害が40%も増加している。Dell Technologiesでは、MozyやRSA、VMware、AirWatchによって、データ、脅威、アイデンティティ、マネジメント領域での課題に対応できる。クライアントソリューショングループでは、さまざまな企業が連携できるようになった環境を生かしている」などと述べた。

 また、Alienwareのエイゾール氏は、ゲーミングPCの技術やノウハウを活用して、AR(拡張現実)をビジネス領域に活用することに取り組んでいることを示し、今後事業化していく姿勢を示した。

Dell Technologiesのジェフ・クラーク副会長
さまざまなセキュリティや管理のソリューションを持つ点も強みという
Alienwareの創業者であるフランク・エイゾール氏

 なお、2017年5月8日~11日には、これまで「EMC World」としてラスベガスで定期的に開催されていたEMCのプライベートイベントが、新たに「Dell EMC World」として開催される予定となっている。これが、今回のDell EMC WORLD 2016に次いで2回目の開催となる。今後は、Dell EMC Worldは、春にラスベガスで定期的に開催されることになり、デルの本社があるオースティンでの開催はこれが最後になりそうだ。

会場にはすでに来年5月にラスベガスで開催されるDell EMC Worldの告知も出ていた