仮想化道場
クラウドプラットフォーム企業に変容するVMware (自社でクラウドサービスを開始)
(2014/1/24 06:00)
自社でクラウドサービスを始めるVMware
もう1つ、VMwareにとっての大きな変化は、自社でパブリッククラウドサービス自体の提供を始めたことだろう。
VMwareは、vCloud Suiteを中核して、オンプレミス、プライベートクラウド、パブリッククラウドなどに製品を提供していたが、VMwareベースのパブリッククラウドサービス自体は、提携しているクラウドプロバイダが提供していた。
日本国内に限っても、ソフトバンクテレコムのホワイトクラウド、伊藤忠テクノソリューションのTechnoCUVICなど、さまざまなクラウドプロバイダがVMwareベースのクラウドを提供している。
VMwareにとって重要な顧客となっていたのが、このようなクラウドプロバイダであり、昨年、このサービスが開始するまでは、VMwareはプラットフォームとなるソフトウェア(製品)を提供し、サービス自体はクラウドプロバイダが行うというすみ分けができていた。
しかし、2013年のVMWorldにおいて、VMware自身がクラウドサービス「vCloud Hybrid Service」を提供することが発表された。現状では北米におけるサービスだが、2014年中には、日本を含めたアジア太平洋地域でもサービスが提供される予定だ。
vCloud Hybrid Serviceの特徴としては、VMware自身がvSphere上での動作保証をした90以上のOS、数千のアプリケーションをサポートしていることが挙げられる。さらに、既存のデータセンターやオンプレミスサーバーとレイヤ2/3レベルで接続できるため、vCloud Hybrid Serviceと既存のデータセンターをセキュアな仮想ネットワークで接続して、パブリッククラウドを自社のデータセンターの一部として利用可能になる。
VMware自身がクラウドサービスに乗り出すのは、メリットとデメリットが混在する。
今後拡大していくクラウドというビジネスにVMware自体も乗り出すことで、ビジネスの拡大を目指せるのはメリットだろう。また、自社でクラウド事業を行えば、ユーザーがクラウドで必要とするソフトの開発をより進めていけるのもメリットといえる。このあたりは、MicrosoftがWindows Azureを展開する中で得ているものと同じだ。
しかし、大手顧客だったクラウドプロバイダと真っ正面から戦うライバル関係になるのはデメリットだろう。VMwareを採用しているこうしたプロバイダが、すぐにVMwareとの縁を切ると言うことにはならないが、VMwareのクラウドサービスが拡大していけば大きな問題になるだろうということは、想像に難くない。
パブリッククラウドに関しては、Amazon Web Services(AWS)がダントツのシェアを誇っており、IBMやMicrosoft、Googleなどのクラウドサービスの数倍もの規模を誇っている状況において、顧客とマーケットを取り合うのは得策とは思えない。
ただパブリッククラウドに関しては、トップ4(AWS、IBM、Microsoft、Google)以外にも、中小規模のクラウドプロバイダが数多く存在するが、将来的にこうした中小規模のクラウドプロバイダは、クラウドにおける“規模の経済”に押しつぶされ、その多くが淘汰(とうた)される運命にあると見られている。
vCloud Hybrid Serviceの大きなライバルとなるのは、VMwareベースのクラウドを提供しているクラウドプロバイダではなく、巨大な市場を持つAWS。そう考えての取り組みなのかもしれない。なお、PivotalがVMwareをインキュベータとして設立されたことを考えれば、vCloud Hybrid Serviceをベースとした子会社が設立される可能性もある。