Windows Server 2012 RC版ファーストインプレッション


 Windows Server 2012 RC版を、早速インストールしてみた。当初、6月頭にWindows 8と一緒に公開するといわれていたので、5日ごろの公開では考えていた。

 しかし、いい意味で予想が裏切られたという印象だ。このことからも、Windows 8/Windows Server 2012の開発が非常に順調に進んでいる証拠だろう。

 

進化したカーネル

 Windows Server 2012は、1台のサーバーで最大64CPUソケットで640論理CPU、メインメモリは4TBをサポートしている。仮想環境においては、Windows Server 2008 R2から比べると、論理CPU数で5倍、メインメモリ容量で4倍にもアップしている。Windows Serverはこれだけ大規模なハードウェア環境をサポートできるように進化している。

 もう1つ注目されているのは、NUMA対応だ。

 これだけ多くのCPUやメモリを構成するためには、CPUとメモリを1つのユニットにして、複数のユニットを組み合わせ、大規模なサーバーを構成する(NUMA=Non-Uniform Memory Access)ことになる。つまり、CPUから見れば、自分が管理しているメモリ以外に、別のCPUが管理しているメモリが存在するということだ。このため、CPUから均等にアクセスできるフラットなアーキテクチャのメモリ構成をOSが前提としていると、別のCPUが管理しているメモリに頻繁にアクセスすることになり、パフォーマンスが低下する可能性が高くなる。

 そこで、あるCPUが必要とするデータは、できる限りそのCPUが管理しているメモリに集めておく必要がある。Windows Server 2012 RCでは、このようなNUMAアーキテクチャ対応をよりチューンナップして、性能を向上させている。

Windows Server 2008 R2とWindows Server 2012のスペック表。Windows Server 2012は、すべての項目で5倍以上の性能向上が行われているWindows Server 2012では、NUMAアーキテクチャ対応がよりチューニングされている

 

Hyper-Vのスペックが向上

 Windows Server 2012 RCの新しいHyper-V(MicrosoftではHyper-V 3.0ではなく、新しいHyper-Vと表している)は、1つの仮想マシンあたり、64個の仮想CPU数(vCPU)、1TBの仮想メモリ容量(vMemory)を扱えるように拡張性が向上している。

 ここまでハイパーバイザーの機能アップが行われたのは、パブリッククラウドのWindows Azureを提供している経験がフィードバックされているからだろう。

 新しいHyper-Vでは、仮想マシンあたりの仮想CPU数、仮想メモリ容量のスペックアップだけでなく、1台のサーバーで動作する仮想マシンの数も1024仮想マシン(Windows Server 2008 R2では384仮想マシン)にアップしている。さらに、クラスタのノード数も64台(Windows Server 2008 R2は16台)に向上し、1クラスタ全体では4000仮想マシンが管理できる(Windows Server 2008 R2では1000仮想マシン)ようになっている。

 新しいHyper-Vの最大の特徴は、ライブマイグレーションにクラスタ環境が必要なくなったことだ。これにより、ライブマイグレーションの環境作成が非常に簡単になった。つまり、ライブマイグレーションを行うサーバー間をネットワークで接続するだけで、ライブマイグレーションが行える。

 またストレージに関しては、以前のiSCSIだけでなく、CIFSやNFS環境をサポートする。このため、Windows Server 2012のファイルサーバーをネットワークストレージとして利用し、ライブマイグレーションを行うことが可能になる。

 このほか、ディザスタリカバリを考えたHyper-Vレプリカ機能の追加、OS側でのNICチーミングとQOS機能、ストレージマイグレーションなどさまざまな機能がサポートされている。

 もう1つ注目されているのが、プライベートVLAN(PVLAN)機能だ。この機能を利用すれば、1つのクラウド上に同じIPアドレスグループの仮想マシン群を設置することができる。

 つまり、同じIPアドレスを利用している異なる会社のサーバーをクラウドに持ち込む場合は、今まではパブリッククラウドベンダーが付与するIPアドレスに変更する必要があった。簡単にIPアドレスが変更できるならいいが、アプリケーションによってはIPアドレスが決め打ちでプログラムに入っている場合がある。こういったアプリケーションが存在する環境では、パブリッククラウドにオンプレミスサーバーを移行することができなかった。

 しかしPVLAN機能を使えば、1つのパブリッククラウドに同じIPアドレスのグループを作成することが可能になる。もちろん、A社の仮想マシン群を使っている時に、B社のクライアントを接続することはできない。A社とB社のサーバー群が、同じIPアドレスグループであっても、きちんと区別して管理される。

Windows Server 2012のPVLAN機能を使えば、同一のクラウドの同じIPアドレスグループのサーバー群を設置することができるPVLANを使えば、それぞれのグループが分離しているため、同じIPアドレスグループでもきちんと分離されて問題なく利用できる新しいHyper-Vでは、NICEのSR-IOVをサポートすることで、直接仮想マシンからNICが利用できるようになる。仮想スイッチなどを経由しないため、NICのパフォーマンスは向上する。さらに、複数の仮想マシンからのアクセスも可能だ

 

Windows Server 2012 RCをインストールしてみた

 早速、Windows Server 2012 RCをダウンロードしてインストールしてみた。現在、ダウンロードページには、ISOとVHDの2種類が用意されている。ただし、ISOには日本語版が存在するが、VHDは英語版のみとなっている。

 実際インストールしてみて感じたのは、起動直後にデスクトップ画面が表示されることだ。

 Windows 8ではMetro UIが表示され、Metroにデスクトップというタイルが用意されていた。やはり、サーバー環境でMetro UIが全面に出てくるのは、あまり使い勝手がよくないという判断があったのだろう。

 デフォルト設定では、デスクトップ画面にサーバーマネージャーが起動する。Windows Server 2012 RCのサーバーマネージャーは、パワフルなツールに全面改良されている。実際にサーバーマネージャーを使ってみると、ほとんどサーバーマネージャーだけで管理が行えるようになっている。

 さらに、新しいサーバーマネージャーは複数のサーバー管理ができるようなインターフェイスになっている。すべての操作が、サーバーを指定してから、操作を行うようになっており、例えば、「役割と機能の追加」でも、サーバーを指定してから、どの役割と機能を追加するのかを選択することになる。Windows Server 2012を単一のサーバーで利用するだけでなく、複数のサーバー環境でも簡単に管理ができるように、最初から考慮されているようだ。

 またOSをインストールするオプションには、コマンドラインのフル機能サーバー(サーバーコア)、GUIが入ったフル機能サーバーが存在する。以前のサーバーコアでは、フル機能がサポートされていなかったため、インストールできるアプリケーションに制限があった。しかし、Windows Server 2012では、サーバーコアでもフル機能がサポートされている。つまり大まかにいえば、GUIのある/なしの違いになる。

 加えてWindows Server 2012では、インストールオプションでGUIありを選択しても、後でGUIなしのサーバーコアに変更できる。この機能を使えば、「GUIありでインストールして、Active Directoryへの登録やアプリケーションのインストールを行う。サーバーが安定的に動作するようになったら、GUIなしに変更し、ほかのサーバーマネージャーやSystem Centerなどで統合的にサーバー群を管理する」といったことも可能になった。

 安定的に運用するまでは、GUIがあった方が、メンテナンスなどを考えれば使いやすい。しかしいったんシステムが安定した後は、サーバーマネージャーで一括管理するため、個々のサーバーのGUIを省き、メモリを多量に使用しないコマンドラインモードでの運用を行う、といったケースが考えられるだろう


Windows Server 2012 RCのインストール画面。Windows Server 2008 R2とほとんど変わらないが、バックグラウンドの色は変わった今回のWindows Server 2012 RCは、Datacenter版となっている。インストールオプションとしては、Server CoreとGUI使用サーバーの2種類があるWindows Server 2012 RCのログイン画面
パスワード入力画面。キャプチャーできなかったが、マウスをパスワード欄に持って行くと、目のアイコンが表示される。これをクリックすると、入力したパスワードの平文が表示されるWindows Server 2012 RCを起動すると、デスクトップ画面とサーバーマネージャーが起動される。Metro画面が起動後の画面にならないので、サーバーでは使いやすいサーバーマネージャーは、Windows Server 2008 R2と同じような項目が表示されている
コンピュータ名を変更してみた。このあたりUIやプログラムは、以前のWindows Server 2008 R2と同じようだWindows Updateの設定。自動更新を有効にするすでに更新プログラムが配信されていた
更新プログラムをインストールサーバーマネージャーのツールから、ほとんどの管理ツールにアクセスできるサーバーマネージャーで役割と機能の追加を行った。まずは、役割や機能を追加するサーバーを選択する。サーバーマネージャーで複数のサーバーが管理できるようになっている
Windows Server 2012 RCもWindows 8と同じコードベースで作られているため、サイドにチャーム画面が表示できるMetro画面に切り替えてみた。Metroアプリは、ほとんどインストールされていないMetro画面に表示されているIEタイルをクリックすると、デスクトップ版のIEが起動される
アプリの検索画面の右下に表示されているMetro版IEをクリックするAdministratorアカウントでサポートされていなかった別のアカウントに変更すれば、Metro版IEが起動できた
Windows Server 2012/Windows 8のデスクトップでは、左下にマウスを動かし、Metroのスタートのサムネイル画面が表示された時に、右クリックをすれば、コンパクトなプログラムメニューが表示される

 

 Windows 8でも感じたのだが、Metro UIは使いやすそうに感じる反面、いくつかの設定画面が分散しているため、少しとまどう面もある。Windows Server 2012 RCでも同じような印象だった。

 例えば、コントロールパネルはチャームの設定もしくは、デスクトップの左下を右クリックしてメニューを表示すしてから選択する必要がある。コントロールパネルのUI自体は、Windows 7/Vistaとほとんど変わらない。このあたりは、Metro UIとの統合があまり進んでいない感じる部分だ。

 できれば、サーバーOSであるWindows Server 2012では、すべての操作がサーバーマネージャーからできるようになってほしい。そうすれば、サーバーではMetro画面を表示することは一切なくなる。

 また、Windows Server 2012 RCのAdministratorアカウントでは、Metro版のIEは利用できないようになっていた(ほかのアカウントでログインすると利用できた)。Windows Server 2012 RCのMetro画面には、Windows 8で登録されているMetroアプリは全くインストールされていなかった。なんと、ストアのタイルも存在しなかった。Windows Server 2012では、Metroアプリをインストールして利用するというシーンをあまり考えていないということだろう(逆に、勝手にサーバーにアプリがインストールされないようになっているようだ)。

 なお、今回は時間を優先したため、機能の紹介はほとんど行えなかったが、今後詳細にWindows Server 2012の機能を紹介していきたい。Windows Server 2012もついにRCとなったため、機能としてもUIとしてもほとんど確定したと考えていいだろう。

 リリースに関しては、Microsoftでは年内としているが、6月頭にRC版リリースということを考えれば、大きなトラブルがない限り9月ごろにはRTM版がリリースされるだろう(もっとも、RTM後すぐに出荷されるかどうかはわからない)。Windows 8も同じようなスケジュールになるのではないかと予想している。

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