大河原克行のクローズアップ!エンタープライズ

デルのパートナービジネスは今度こそ本気なのか? 8月に就任した松本光吉副社長インタビュー

EMCの買収はどんな影響を与えるのか?

 ところで、米国時間の10月12日に、DellがEMCの買収を発表したことは業界から大きな注目を集めている。

 2016年半ばにも取引が完了する、この動きはどんな影響を及ぼすのだろうか。

 松本副社長は、「現時点では具体的なことには言及できない」としながらも、「エンタープライズ分野におけるリーディングカンパニーが誕生することになる。それに対して、パートナーからの期待値が高っているのは明らかだ」とする。

 実は10月15日に、東京・芝公園のザ・プリンス パークタワー東京において開催された「EMC FORUM 2015」では、EMCジャパンの大塚俊彦社長が、デルによる買収についてコメント。「デルとEMCには補完関係があり、新たなデジタル時代の幕開けに対応できる企業となる。そして、エンド・トゥ・エンドのテクノロジーカンパニーになる」とコメント。EMC APJのデビット・ウェブスター プレジデントも、「これはIT業界の変化を示すものであり、多くのチャンスを与えるものである。そして、今後のビジネスの変革を促すものになる」と述べた。

 もともとストレージ分野では提携関係にあった両社だが、それはその領域においても補完できる関係があったからこそ成り立ったものだ。一部製品では重複領域もあるが、その補完関係はいまでも生きる。

 また、セキュリティにおいては、デルのセキュアワークスと、EMCのRSAとの補完関係、データ保護やモバイル管理、仮想化などの分野でも補完できる。そして、PCからサーバー、ストレージまでの幅広いハードウェアの品ぞろえもデルとEMCとの組み合わせによって実現できる。

 EMCが持つ大手企業を中心としたエンタープライズの強みと、デルが持つ中堅・中小企業における高い実績といった組み合わせは、パートナービジネスにおいても力を発揮することになるのは明らかだろう。

デルはパートナーにとって競合ではない

 松本副社長は、まずはこの1年で、デルは、パートナーにとって競合ではないという実績を作り上げる考えだ。

 「今後1年間で、『デル=直販』というイメージを完全に払拭することはできないだろう」としながらも、「デルがベストなビジネスパートナーであるという認識を持ってくれるパートナー企業が、いくつか出てくることを期待したい。デルは競合ではなく、パートナーである。デルを扱うことで新たなビジネスに踏み出すこともできる。そうしたことを感じ取り、デルとのパートナーシップに真剣に取り組んでくれるパートナーが出てくれば、空気が変わり、市場全体の認識も少しずつが変わってくることになる。そのためには、これまで以上に、『実行』することにこだわっていかなくてはならない。パートナーとの関係を緊密にしていくことを、より重視していきたい」とする。

 松本氏がデルに入ってからまだ3カ月を経過していない。長年の関係が重視されるパートナーとの協業成果を推し量るには時期尚早といえる。

 だが、仮に、来年にかけて、業界の「空気」が変わるようなパートナーシップの成果が生まれれば、デルのパートナービジネスは一気に加速することになるに違いない。そして、それが、日本のおけるデルの成長に貢献することになるだろう。

大河原 克行