大河原克行のキーマンウォッチ

「Integrated IT Company」の意味を郡信一郎社長に聞く

「技術」を語り始めたデルが目指す新たなフェーズとは?

パートナー事業強化が最大のゲームチェンジ

――ところで、2014年は、Dellの日本法人にとってどんな1年でしたか。

 4月の消費増税による需要の変化や、Windows XPのサポート終了に伴う駆け込み需要、そして、そのあとには、急激に需要が減少するといったように、変化の激しい1年でもありました。2014年の年初に、私は「ゲームチェンジを行う1年にしたい」と言いましたが、その言葉通り、デルでは、いつかの新たな取り組みを行ってきました。

 中でも、最大のゲームチェンジは、パートナー事業を強化したことです。パートナービジネスの人員を強化し、新たな施策も打ち出した結果、パートナーからは、「デルは本気でパートナービジネスに取り組むつもりだ」という言葉をいただいた。大きなゲームチェンジに踏み出した成果が出ているといえます。

 しかし、これが完成系に近づいたなどとは思っていませんし、来年に向けても、再来年に向けても力を入れていくつもりです。これによって、毎月、毎年という積み重ねのなかで、パートナーとの信頼関係、協業関係を強化していきたいと考えています。

 この1年、社内に向けては、「進取の精神」を徹底してきました。私は、今年の書き初めでもこの言葉を書きました。ちょっと、お見せできるような文字ではないのですが(笑)、社内にも張り出しています。

 私は、人や企業が変革をしていく、あるいはゲームチェンジをしていく上で、先取りの精神は大切であると考えています。人が変化したから、私も変わるというのではなく、変化することを予測して、自らが先に変化していかなくては意味がない。

 一般論として、日本の企業や外資系企業の日本法人は、急激な変化を自ら起こしていくことは得意ではないといえます。改善は得意でも、改革は得意ではないという言い方ができるかもしれません。

 仮に、変化の大きな波が来そうだと思った時に、誰かが変化を起こして、それについて行くというのではなく、全員が変化に取り組んでいて、それによって、企業が一気に変化していくという姿が最適だと思います。

 ここに「進取の精神」の意味があります。改革を先取りするのは、日本人にとって苦難が伴うかもしれません。そして、できれば日本人が得意なところもしっかりと残しながら、先取りするという改革の意識を植え付けたい。ですから、半年や1年で意識や文化が大きく変わるとは思っていません。

 そうした点からも、進取の精神の実効については、定量的な成果を推し量るには時期尚早です。しかし、なにかが成功したという水準に到達したものがあったとすれば、それは変化や改革によるものでありますし、進取の精神が反映されたものである、という見方もできるのではないでしょうか。

 例えば、PC事業に関しては、中小企業市場のようにわれわれが狙った市場領域においては、着実にシェアを拡大しています。これは進取の精神が功を奏したものだといえると思います。

――「進取の精神」という言葉は、当面使っていくつもりですか。

 それはこの年末に考えたいと思っています(笑)。2年連続で使用するとキーワードとしての新鮮味がなくなったり、浸透するのが難しくなったりということも起こりがちです。ただ、この精神は、デルの日本法人のなかに徹底したいものですし、数年に渡って使うことができるキーワードであるとも考えています。デルをさらに強めていくことができる重要な言葉だと思っています。

(大河原 克行)