「『Cloud 2』でITサービス産業のリーディングカンパニーへ」
セールスフォース・宇陀栄次社長

クラウド Watch新装刊記念・特別インタビュー


 株式会社セールスフォース・ドットコム(セールスフォース)は、6月22日、コラボレーションクラウドと呼ぶ「Salesforce Chatter」を発表した。人、グループ、ドキュメント、アプリケーションデータがリアルタイムで更新され、社内のあらゆる最新情報を把握し、これを迅速な意思決定に反映させることができる。

 宇陀栄次社長は、「Chatterは、『Cloud 2』を実現する新たな製品となる」と位置づける一方、「これまでにはない、神経細胞を張り巡らした情報システムが提案できる。これにより、経営の仕方、仕事のやり方が大きく変わり、競争力の差になって表れてくる」とする。

 セールスフォースは、これを戦略製品として、クラウド時代における事業拡大をさらに加速する考えだ。宇陀社長に、同社のクラウドへの取り組みについて聞いた。

クラウドは「Cloud」ではなく「Crowd」

セールスフォースの宇陀栄次社長

――2010年はクラウド・コンピューティングの変遷において、どんな1年になると見ていますか。

宇陀社長:大きな節目であることは間違いないですね。これまでは、バズワードのようにして、クラウドという言葉が使われてきたきらいがあったが、ここにきて、クラウドを正しく理解したいというユーザーが増えてきた。例えば、プライベートクラウドは、表紙を変えただけで、今までの概念のすげ替えにすぎないのではないかということも理解されようとしています。

 クラウドによる本当のメリットを享受するには、パブリッククラウドでなくてはいけない、ということも伝わりはじめている。わたしは、クラウドの表記は、「Cloud(雲)」ではなくて、「Crowd(群衆)」の方がいいのではないかと思っているのです。クラウドとは、膨大な群衆、知恵の集合体なんですよ。あるCIOが言っていましたが、「大多数のユーザーが利用することでもたらされるスケールメリットこそが、クラウドの本質である」と。これはわたしも同感です。

 だからこそ、Crowdという言葉の方があっている。ただ、Crowdには「混雑」という意味もありますから、この言葉ばかりが前面に出すぎると、混雑していて、パフォーマンスが悪そうに聞こえる(笑)。使い方に気をつけないといけないと思っているんです。

 一般的にソフトウェアは、1人の優秀な開発者が作ったというものが多いですよね。しかし、Salesforceの場合は、膨大な人たちの知恵の集合体でできている。GoogleもWikipedia、Yahoo!もそうです。Twitterをはじめとするソーシャルネットワークの世界も同じです。今の世の中は、こうした知恵の集合体で形成され、「Wisdom of Crowd(群衆の知恵)」といえる状況にあるのです。

 また、少し話は変わるのですが、わたしはクラウドについて、「『枯れた技術』である」という言い方をしています。あるいは「ジェネリック薬品と同じ」という表現を用いることもある。クラウド・コンピューティングというと、最先端技術という印象がありますから、みなさん「えっ?」という顔をしますよ。

――確かに、枯れた技術という言葉は似合わない気がしますね。

 しかし、考えてもみてください。クラウドの技術は、コンシューマWebで徹底的に使われた技術をベースにしています。つまり、数億人がデバッグしたものが活用されていることになる。当社が提供するサービスも、こうした技術や実績をベースにして、それを法人向けに、セキュアな環境で展開している。徹底的に鍛え抜かれた技術なんです。

 また、あるメインフレーマーの方からは、「ひとつの会社のひとつのシステムをバージョンアップするだけでも、必ずトラブルが起こる。しかし、Salesforceのバージョンアップはノートラブルで行われている。それが不思議で仕方がない」と言われた。

 これも理由はシンプルなんです。当社は、約8万社のユーザーに対して、たったひとつのシステムで提供できるようにしている。だからこそ、30回を超えるバージョンアップをしても、一度もトラブルがないんです。これに対して、企業で使われている情報システムは、分散したり、データベースのバージョンが違ったり、それどころか別の製品が共存して使われていたり、という場合も少なくない。複雑な組み合わせのなかで運用していますから、トラブルが起こるのは当然ですよ。

 ひとつのシステムを徹底して鍛えているから、最先端で、安くて、安定したものが提供できる。ですから、普通のことを普通にやっているだけなんです。多くの方に「すごい」といわれるのは、クラウドの本当の姿を知っている方が少ないということの裏返しではないでしょうか。

エコポイント制度での活用でユーザーの意識が高まった

Salesforceの画面イメージ

――ユーザーのクラウドに対する認識がまだまだだということですか。

 もっと理解を深めていただきたいですし、正しいクラウドとは何かということも知っていただきたい。これまでの情報システムの世界におけるトラウマとは、「新しいものには、トラブルが付きものであり、ひどい目にあうことがあるが、それに挑戦して成功すればメリットを得られる」というもの。

 しかし、今はそんな余裕はどこにもない。まずは利便性が高いのは何かということを判断しなくてはなりません。

 よくよく考えみると、自動車メーカーの人が、東京から地方に出張するときに、必ず自社が所有する車だけで移動するのかというと、そんなことはない。新幹線や飛行機だって使うんです。タクシーだって、利便性を優先する場合には、他の自動車メーカー製のタクシーは使わない、なんてことはないでしょう。

 個人でも、旅行の際には宿泊先でいちいちマンションを買う、なんてことはしませんよね(笑)。

 情報システムも一緒です。何が便利なのかという考え方をすれば、クラウドの選択は普通の話。所有するものもあれは、利用するものもあっていい。他の産業で普通に使われているサービスの概念が、IT産業にもビジネスモデルとして入ってきた。言い換えれば、IT産業がコモディティ化してきた証しではないでしょうか。

――ユーザーのクラウドに対する認知という点で、なにか変化を感じたポイントはありましたか?

 政府が実施したエコポイント制度の仕組みに、Salesforceが活用されたことで、ユーザーの意識はかなり変わりましたね。短期間でスタートしましたし、トラブルなく進めることができた。クラウドと既存の情報システムとの違いが明確に出た事例だといえます。
 これまでの情報システムは、ユーザーの要件を知り、設計をして、見積もりをして、契約を結んで、開発する。ビル一個を建てるのと同じです。このビル(著者注:取材をしたセールスフォース本社が入る六本木ヒルズ)を立てようと思ったら何年かかると思いますか?

 しかし、このフロアだけを借りて、内装をいじれば、1カ月もかからずにすぐにスタートできる。しかも、あとから自由に机を入れたり、レイアウトを変更したりすることができる。これぐらいスピード感に差がある。

 しかも、低料金で、システムを追加できるというのも従来の情報システムにはないものです。大企業は、「クラウドやSaaSは中小企業向けだ」というし、中小企業は、「大手企業向けのものだ」という(笑)。わたしにしてみれば、どちらの意見も間違い。

 中小企業だから機能が限定されるとか、大企業だから機能が豊富に必要という考え方も間違いです。むしろ中小企業の方が機能が必要だったり、大企業の方がスピードが優先されたりすることがある。それぞれの置かれた環境において、クラウドを活用すればいいんです。

 エコポイント制度で活用されたシステムは、「Salesforceを導入した」とは誰もいわない。総務省や経済産業省がシステムを買ったわけでもなく、使っているだけですからそうした表現になる。政府や企業も、自らが情報システムを保守しなくて済むから、自分のシステムという表現はしない。つまり、社会システムのひとつとして活用しているということでもあるんです。

ITサービスに特化しているのがsalesforce.comの強み

――クラウド・コンピューティング市場におけるsalesforce.comの強みとは何ですか。

 日本では、IT産業とITサービス産業を明確な形で区分けができていないと感じます。これは、ホテルを建てる建設会社と、ホテルを経営する会社とをひとつの産業のなかで語っているのと同じです。

 クラウドのビジネスは、建設会社の仕事ではなくて、ホテルを経営する会社のビジネスと同じサービス事業なんです。クラウドサービスのノウハウについては、salesforce.comは10年間の蓄積がある。また、サービスを運用するために、累計で1000億円以上を投資してきている。

 当社では、サーバーは何か、ルーターが何か、データベースのバージョンは何かなんてことを前面に出して、顧客に説明することはありません。それは建設会社(=ハードウェアベンダー)であれば必要な要素でしょう。わたしたちが考えているのは、サービスを提供する上でどんなことが要求され、それにどう応えるのか。サービスのクオリティ、機能などを毎日考えています。

 クラウドサービスを求める顧客が必要としているのはそこなんです。そして、このノウハウは、一日で蓄積できるものではありません。そこにsalesforce.comの強みがある。

――クラウドビジネスにおいて、課題をあげるとすれば何でしょうか?

 多くの会社がクラウド・コンピューティング市場に参入するのは歓迎だが、いい加減な会社がクラウド市場に参入し、そこから情報漏えいなどが起こったときの社会的な影響が、最大の懸念事項です。われわれに対するダメージも極めて大きいものになる。

 わたしは、市場を健全に成長させるためにも、きちんとしたサービスを提供できる会社には、第三者評価機関によるお墨付きが必要だと思っています。銀行にお金を預ける場合でも、どんな管理基準かわからないところには預けないですよね。

 長年の実績とか、第三者機関による審査をクリアした金融機関にお金を預ける。そこに安心感があるんです。金融サービスのような審査基準が、クラウドの世界にも必要なんです。そのときに、大手企業が良くて、中小企業が駄目というのでは困ります。広くチャンスを与えるべきです。

 当社は、どんな検査でも受けますよ。洗いざらい出します。実は、salesforce.comでは、第三者の監査機関が、データセンターに常駐し、毎日監査をしながら、常に最新のレポートを出すことができる。これだけ徹底した管理体制のもとで、サービスを提供しているのです。これはお客さまの要求によって実現したこと。つまり、お客さまに教えられて実行してきたことなんです。

 こうしたことひとつをとっても、今日からクラウドをスタートしましたという企業と、10年の蓄積を持つ当社の仕組みとは、まったく違うのです。

ソーシャルネットワークを活用した新たな世界が「Cloud 2」

――salesforce.comでは、「Cloud 2」という言葉を使っていますね。「Cloud 2」とはいったいなんでしょうか。

 わかりやすくいうと、ソーシャルネットワークを活用した新たな世界が「Cloud 2」だといえます。

 もともとクラウドの発想は、Googleのような仕組みを、企業内のシステムとして使えないかというものでした。これが「Cloud 1」だとすると、世の中にある社外の情報をもっと活用できるようにしよう、というのが「Cloud 2」だといえます。

 もはやTwitterをはじめとするソーシャルネットワークの利用は、個人ユーザーの間では普通のことになっています。笑い話なんですが、「自分の娘が、どんな彼氏とつきあって、どんなことを思って、どんな生活をしているのかということを、Facebookを見て初めて知った」という親もいるわけです(笑)。

 自分が関心を持ったことに対して、どこで何が起こっているのかということをすぐに知ることができるのが、ソーシャルネットワークの良さです。もし、その手法が仕事のなかに生かせたらどうか。ソーシャルネットワークを生かした形でシステムを企業向けに提供したらどうなるか。それを示したのが「Cloud 2」なんです。

 プライベートクラウドに対する注目が集まっていますが、これはあくまでも企業内システムをどうやって効率化するかといった点にとどまる。仮想化の技術を使ってはいるが、ソーシャルネットワークと組み合わせる発想はない。社会全体の効率化や企業間の効率化といったものも考えられていません。単に既存システムの表紙を変えただけに過ぎず、時代の流れにあったものではない。必ず自らの首を絞めることになりますよ。

“感じることができる”情報システム、プッシュ型情報配信の「Chatter」

コラボレーションクラウドアプリケーションの「Chatter」

――6月22日からChatterの提供を開始すると発表しましたね。

 これは世の中を変えるものになります。正直なところ、最初にChatterを見たときには、「こんなもの使えるのか」という疑問があった(笑)。「Twitterでぶつぶつつぶやいている時間があったら仕事しろ」ぐらいの感じでしたから(笑)。

 ところが、今では認識が大きく変わり、Chatterが生み出す世界がどういう意味かよくわかってきた。Chatterの最大の特徴は、情報を共有するというだけの話にとどまらず、必要な情報が、必要な人に迅速に入るという仕組みが構築されることにあります。

 つまり、Nervous System(神経系統)と同じ仕組みが、情報システムのなかにもできあがる。人間は、神経系統があるからこそ、靴のつま先部分に石ころが入っていても、痛いというのがわかる。脳が、いちいち、つま先に「石ころが入っていませんか」と聞くわけではない。向こうから発信してくる。しかも、痛さのマグニチュードの違いまで情報として伝達される。

 情報システムがこういう仕組みに近づくわけです。経営者にとっての悩みは、「情報システムに多大な投資をし続けて、いいと言われることはすべてやり尽くしてきたが、それでも必要な情報が入ってこない」ということです。

 Chatterの特徴はプッシュ型の情報配信であること。感じることができる情報システムなんです。

――Chatterに対して「コラボレーションクラウド」という言い方をしていますが、この意図は何でしょうか?

 例えば、(グローバル企業の)経営者がある競合メーカーの製品が気になったとします。「その価格はどうなのか?」といったことをソーシャルネットワークに書き込めば、あっという間に世界各国から返事が返ってくる。これはビジネスに活用できる客観的なデータとしても位置づけることができる。

 当社の社内でも、「SalesforceとNotesを連携したケースについての問い合わせがあるのだが」とつぶやいたら、世界中の社員からそれに関する情報が集まってくる。しかも、それをユーザーの出先で商談しながら、その場で情報を集めることができる。社内の知恵を集めて活用し、ビジネスを加速することができるのが、Chatterで実現する、リアルタイム型のコラボレーションクラウドの意味です。

 必要な情報に適したグループを形成し、そこでの情報がプッシュで入手できる。ある商談に関係する人たちが、営業部門だけでなく、SE部門、経営部門、そしてパートナーまでを含めた形でコラボレーションする。プル型のグループウェアとは比べものにならない成果があるのです。

――Chatterによって、仕事の仕方はどう変わりますか。

 ある商談をフォローしておくと、そのステータスが更新された途端にプッシュ型でアラームが表示される。それに対して迅速に対応することができます。

 しかも、ソーシャルネットワークを活用することで、世の中の動きを迅速にとらえることができる。ここに情報システムが神経細胞のような役割を果たす、という意味があるんです。自分が、主体的にこの商談は見ておきたい、この顧客の動きについては知っておきたいということを、自由に設定できる。ある商談の報告に関して、「なんで、わたしにメールを送っておかないんだ」ということがなくなるんですよ。

 送る方だって、本当はどの情報が欲しいのかわからない。それならば全部送信しておくのか、という話になる。無駄ですよね。経営者も現場も、必要な情報だけが欲しいんです。いらない情報ばかりがあるから無駄が増える。Chatterによって、必要な情報が、必要な人間に自動的に配信される時代がいよいよやってくるんです。

 そして、これは不要なメールが少なくなるという成果にもつながっている。(米Salesforce.comの)マーク・ベニオフCEOも、Chatterを使ってから、メールが40%も減ったといっています。

 一方で、最近注目されている防衛的な意味合いでの活用にもChatterは適している。なにか問題があったときに、ソーシャルネットワークで広がる兆候をとらえて、防衛的な措置を取れるようになる。これは経営者にとっても重要なことです。

 そして広い意味では、社会にとっても重要なことになります。企業でも、政府機関でも、対応が遅れると社会問題になることがある。社会問題になる前に、情報を入手して、その対策をしっかりと採ることが必要。最適な制度や仕組みに変えるといった行動に、迅速につなげることが必要なんです。

 今までの情報システムでは、大きな問題にならないと関知できなかった。それでは遅い。社会問題になるということは、社会不安が起こること。社会不安は景気の悪化につながる。社会問題になる前に対応するということは大きな意味があるんです。

――「Cloud 2」の世界においては、求められるデバイスの形は変わってきますか。

 パソコンそのものがプル型のデバイスであり、「Cloud 2」の世界には適していません。パソコンを起動させて、自分から見に行かなくてはならないのでは、情報を迅速に入手できない。

 しかし、携帯電話やスマートフォンはプッシュ型のデバイスですから、情報が到着すれば、どんな場所にいても、どんな時間でも、デバイス自らがそれを通達してくれる。これによって、情報のインターバルが短くなる。起動が早いiPadも同様に、「Cloud 2」のデバイスとして活用できるでしょう。

 モバイルとソーシャルネットワークとクラウドとが一体化していくのが、「Cloud 2」の世界だといえます。新たな神経系統の仕組みにおいて、クラウドが重要なのは、低価格に、短期間に導入できるという点にある。例えば、グループや取引先を含めて、30万人のユーザーを対象に、これを実現しようとしたら、費用や期間といった点で、自前でやるには障壁が大きい。しかし、これがクラウドを活用することで解決する。

 しかも、クラウドの良さは、APIが充実している点にありますから、既存システムとのインテグレーションも安くできる。神経系統も、足はくっついているが、手がくっついていないというのでは意味がない。それと同じで、末端までカバーするにはクラウドの活用は不可欠なんです。

IT世界の仕組みを変え、ITサービス産業そのものを変化させていく

――来年には、salesforce.comのイメージはどうなっているでしょうか。

 これまでsalesforce.comは、社名にもあるように、もともとSFAやCRMという世界で成長してきましたが、ここ数年、新たな世界への広がりを加速している。Force.comやChatterといったサービスによって、当社が提供するサービスの世界が広がっているからです。

 新たなサービスには、新たな価格体系も必要ですし、個別企業への採用だけでなく、業界団体に一気に導入するといった新たなビジネス展開も考えられるようになる。セグメンテーションやビジネスの仕方が変わってくる。今、salesforce.comはなんの会社と問われたら、それは、クラウド事業の会社である、といえます。

 しかし、今後は、単なるクラウドサービスを提供する会社ではなく、ITサービス産業そのものを変えようと思っています。

 当社のビジネスや、クラウド・コンピューティングの世界は、既存のIT産業に対して価格破壊ではないかといわれます。だが、そうではない。ユーザー企業は、価値を感じなければ投資はしません。クラウドの仕組みに価値を感じているからこそ投資をしているんです。

 しかも、その価値が安く手に入れば、その投資を別のIT投資に回すことができる。日本のIT産業全体でとらえれば、ビジネスチャンスが広がることにつながる。ITワールドの仕組みをチェンジさせ、ITのイメージを大きく変えることができる。そのなかで、当社は、ITサービス産業のリーディングカンパニーになりたい。そう考えています。

――今後、salesforce.comはどんな発展を見せますか。

 今後も、新たな技術を持っている中堅、中小企業の会社を買収していくことになります。日本においてもM&Aをやっていくつもりです。

 さらに、買収や資本参加というだけでなく、パートナーとの連携も強化していく。米国のApp Exchangeでは成果があがっているのに、日本にはまだ同じものがないといった領域に対して、パートナーと協業するといったことにも力を注ぎます。

 ISVのなかには、自前でやるのには参入障壁が高いが、当社が持つプラットフォームを活用すれば、成功につながるという場合も多いでしょう。こうした取り組みを通じて、日本のIT産業を発展させていていきたいと思っています。

――話は変わりますが、宇陀社長が今社内に言っていることはどんなことですか。

 「真剣にやろうよ」ということですね(笑)。いや、実はこれには、意味があるんです。この間、「真剣と深刻は違う」という話をしたんですよ。真剣な人は動きが軽い。軽いに「あ」をつけると「明るい」になる。真剣と明るいというのは共存するんです。

 一方で、深刻な人は、どうも暗い(笑)。こんな話をTwitterに書いたら、「真剣な人は前を向いて考えている人、深刻な人は過去の問題にしがみついている人」という書き込みがあって、なるほどなと。だからみんなで真剣にやろうということを言っているんです。怒られながら、嫌々仕事をやらされているのでは深刻になりますよ。

 前向きに、高いモチベーションで仕事に取り組んで、その成果を明るい話題として社員が共有できれば、それは好循環になります。

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