米salesforce.com、TwitterのつぶやきをSalesforceで利用できる「Chatter」を発表

Dreamforce 2009基調講演

米salesforce.com、会長兼CEOのマーク・ベニオフ氏

 米salesforce.comは11月18日(米国時間)、年次ユーザーカンファレンス「Dreamforce 2009」を開催した。初日の基調講演では、同社会長兼CEOのマーク・ベニオフ氏が登壇し、最新サービス「Service Cloud 2」「Sales Cloud 2」「Salesforce Chatter」が紹介された。

 ベニオフ氏はまず、今回のDreamforce 2009の参加規模を発表。「厳しい経済状況の中、60以上の国・地域から、1万8000名以上の方に参加していただいた。今年は非常に苦労した年であり、参加者の皆さんに感謝したい」と述べ、それに応えるべく、3つの新サービスを紹介するとした。


コミュニティでのやりとりもナレッジ化できる「Service Cloud 2」

Service Cloud 2

 まず紹介したのが、今年9月に発表したService Cloud 2。これは同社のCRM製品と連動するカスタマーサービス製品の最新版。最大の特長が、ソーシャルコミュニティと連動することで、さまざまなチャネルでのサポートを実現している点。

 ベニオフ氏は、「既存のカスタマーサービスは、インターネットの各種サービスとかい離している。カスタマーサービスに問い合わせても、すぐにつながらない。また、正しい回答が得られないといった課題がある。結局、インターネットの検索サイトで同じような問題を抱えていたユーザーの解決策を調べた方が早いという例も多々ある。こうしたコミュニティサイトにあるナレッジと連携した環境を提供するのがService Cloud 2だ」と説明。

 デモでは、米Dellの導入例を用いてService Cloud 2のメリットを紹介。CRMと統合されたService Cloud 2をコールセンター側で使うことで、着信番号で顧客情報の確認から、問題解決策までを1つの画面で完結した操作が可能。操作のアドバイスが必要な場合も、図解されたナレッジを用いて、丁寧に紹介することができる。ポイントとなるのが、コールセンター側で使われているナレッジは、インターネットを介してユーザーにも公開されているところ。つまり、コールセンターに問い合わせた場合でも、インターネットで検索した場合でも、同じ情報にアクセスできるということだ、

 また、最近ではTwitterを用いたサポートもあるが、こうしたサービスとの連携も実現している。例えば、Twitterでの質問もService Cloud 2上で確認でき、解決策をTwitterでそのまま返信することができる。また、コミュニティサイト機能も用意しており、いい回答と評価されたものをService Cloud 2で再活用することもできる。


コールセンターの利用例。着信からやりとり内容、ナレッジベースへのアクセスなどがひとつの画面で行える商品情報など、コールセンター側で利用している情報を外部サイトにも公開することで、さまざまなチャネルからのアクセスに対応

FacebookのDellのコミュニティサイト。FacebookやTwitterなどからの問いかけも一元化して扱えるTwitterのつぶやき内容も一目で確認できるTwitterで回答した内容もナレッジとして保存される

レポート機能やトラッキング機能など、より強化された「Sales Cloud 2」

Sales Cloud 2

 次に紹介したのが、営業支援アプリケーションの最新版となるSales Cloud 2。最新版では、最新のWebテクノロジーを採用した新しいユーザーインターフェイスを搭載。従来型のユーザーインターフェイスで用いられていたタブの配列などは同じ形にしながら、スクロールすることなく、各種操作を完結できるほか、ドラッグアンドドロップでポータル画面を手軽にカスタマイズできる機能など、ユーザーの使い勝手が向上するように改良されている。このほか、Twitterとの連携、解析機能の強化なども行われている。

 デモでは、米Ciscoの導入例を用いてSales Cloud 2のメリットを紹介。見込み客のTwitterでのやりとりをリアルタイムに確認することで、営業のタイミングなどを発見できるほか、担当している案件と似た案件をほかの営業担当者がどのようにクロージングしたかを確認できるジーニアス機能を用意。また、プレゼンテーション用資料をSales Cloud 2上でそのまま保存したり、再利用したりできる機能など、生産性を向上する機能などが紹介された。

 このほか、スケジュールの調整を容易に行える機能、PDF生成機能を利用したプロポーザル作成機能など、営業活動を支援する機能も紹介。プロポーザル作成機能を利用することで、ファイルサイズの大きな資料もWebベースで配布でき、また顧客が実際に資料を確認したのかどうかをトラッキングすることも可能になる。


新しくなったユーザーインターフェイスタブの配置は換わっていないので、既存ユーザーも戸惑うことなく移行できると説明プレゼンテーション用の資料を再利用することも可能

スケジュールの空きを確認し、手軽に候補日を選択できるスケジュールを調整する相手も、候補日を選ぶだけと簡単な操作で完了

顧客向けに送られたメール。リンクをクリックするとWebベースの資料を確認できるPDFなどまとめられた資料を確認可能。どの資料に目を通したのかもトラッキングできるドラッグアンドドロップで不要な項目を削除できるなど、レポート作成機能も強化

次世代コラボレーションツール「Salesforce Chatter」

Salesforce Chatter

 そして最後に紹介したのが、はじめてアナウンスされた新サービス「Salesforce Chatter」。

 コラボレーションクラウドと同社が呼んでいるChatterは、FacebookやTwitterといったソーシャルネットワークを企業内でも利用可能にする製品。Facebookのような個人のポータルページを持ち、Twitterなどリアルタイムなコミュニケーションを、Salesforceのインターフェイス内で利用することができる。

 社内外のユーザーとやりとりできるほか、SAPやOracleといった企業内システムのイベントをChatter上で確認することもできる。「ユーザーのコメントだけでなく、アプリケーションのコメントも確認できる」(ベニオフ氏)と語るように、データオブジェクトが話しかけてくるように動作するところがユニークな点といえる。


ホーム画面に実装されたChatterのリンクアイコンChatterでのやりとりのほか、FacebookやTwitterのコメントをまとめて表示できる

システムからのイベント結果も同じ形式で表示されるSales Cloud 2と同じようにデータを添付することも可能

 「ここ数年、ソーシャルコンピューティングの力が非常に高まっている。私もFacebookを利用しているが、考え事などをコメントすると、すぐにさまざまなコメントが返ってきて、仕事をする上で非常に役立っている。しかし、企業のシステムとは分離してしまっており、どうにかして統合できないものかと考えて生まれたのがChatter」と、ベニオフ氏自身の経験も踏まえて、用意された製品であると紹介。

 ベニオフ氏は、「あくまでも次世代コラボレーションツールと位置づけており、ソーシャルネットワーク製品とは考えている。Chatterはまったく新しい分野の製品なので、どのような使い方がいいのか、Twitterとはどう違うのかといった点を今後さらに仕上げていく必要がある。企業によっては、ビジネスプロセスを大きく変革する製品かもしれないが、メールなどの登場により、すでにビジネスプロセスは変わってしまっていると考えたほうがわかりやすい。Chatterを使って、そうした新しいビジネスプロセスが記録できるのであり、より賢く仕事ができるようになるだろう」と、新しい情報活用ツールと位置づける考えを示した。

 Chatterは2010年初頭に提供される予定。Salesforce各エディションで利用できるほか、Salesforceを利用していないユーザー向けにも月額50ドルでの提供が予定されている。



(福浦 一広)

2009/11/19 11:18