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HP撤退、Oracle本格参入…… パブリッククラウドの波乱

AWSがエンタープライズ・パブリッククラウドを支配する?

 パブリッククラウドに挑戦して敗退していったサービスはHPだけではない。Rackspaceは今年になってパブリッククラウドサービスを終了すると発表。Dellも2013年に撤退した(ただし、VMwareの買収でまた間接的に参戦することになるようだ)。IBMでも、SoftLayerを買収した際に、SmartCloud Enterpriseを捨てている。パブリッククラウド市場では、敗れた企業には事欠かない。その一方で、強者はますます強くなっている。Amazon、Microsoft、Googleだ。

 業績から見ると、Amazonの中でAWSの第3四半期(7-9月期)の売上は79%増の20億9000万ドル(前年同期11億7000万ドル)とアナリストの予想を上回った。うち営業利益は5億2100万ドルで、利益率は25%だった。一方、成長では及ばないもののMicrosoftも、Windows AzureやOffice 365を含むインテリジェントクラウド部門の四半期の売上は82億ドル(為替変動補正後)で14%増を記録した。オンプレミス・ソフトウェアグループの売上高が8%減となる一方で、Azureは倍増、Office 365は70%増という好調ぶりだ。

 InformationWeekによると、特筆すべきは、何よりAWSのビジネスが「高度に自動化され、スケーラブル」であることだという。例えば、IBMの過去1年間のクラウドの売上は94億ドルだが、このうちコンサルティング、レガシーシステムからの移行、オンプレミスのプライベートクラウドの構築などが半分以上を占めるという。ランレートから推計した「高度に自動化され、スケーラブルなサービス」は45億ドルにとどまる。しかし、AWSでは、ほぼ100%が、こうしサービスの売上だという。

 AWSの急成長に、クラウド業界ではAmazonがエンタープライズクラウドを独占してしまうのではないか、との懸念も出ているという。コラムニストのDavid Linthicum氏は、これに対して「Amazonのクラウドを恐れるには早すぎる」と題してInfoWorldに寄稿。次のように述べている。

 「確かにAWSは大きな成功を収めたが、クラウドコンピューティングはなお初期段階だ。クラウドにあるエンタープライズ・アプリケーションとデータは全体の1~3%にすぎない。残りはまだ伝統的なデータセンターにある」と述べ、AWSに神経質になるような時期ではないと主張する。「パブリッククラウドへの移行は始まったばかりだ。AWSはリードしているが、誰にもまだチャンスがあるのだ」。

(行宮翔太=Infostand)