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クラウドでBIを Amazonの新サービス「QuickSight」

クラウドは"if"から"when"へ

 AWSはIaaSとしてスタートした。その後、Google、Microsoftなどの競合に直面しているが、その勢いは衰えるどころか増すばかりだ。

 AmazonはこれまでAWSの業績について決算で内訳を公表してこなかったが、4月に公開した2015年第1四半期からは開示している。The Platformが伝えたre:Inventのスピーチ内の報告によると、AWSのランレート(実績値に基づく予想値)は73億ドル。これは1年前の81%増という。確認できているだけでも顧客数は100万社以上あり、EC2インスタンスの利用は前年同期比95%増、S3のデータ転送量は同120%増(いずれも2015年第2四半期)という。例えば、S3の成長率は前年の102%増をさらに上回っているとのことだ。

 また、エコシステムも拡大し、AWSのクラウド上で利用できるソフトウェアやサービスを購入できる「AWS Marketplace」上では800社から2300種以上の製品が提供されているという。

 当初のAWSの主要顧客はベンチャー企業やSMBだったが、大手の採用事例も増えている。大企業でNike、PfizerなどがAWSを利用しているのは有名だが、re:InventではGE(General Electric)のCIOが自社の取り組みを語った。同社は9000あるワークロードのうち60%を今後3年から5年でAWSに移行させる計画で、34あるデータセンターを統合して、最終的には4つにまで減らすという。

 The Platformは「今後5~10年で、同じようなことを言うCIOがたくさん出てくることだろう」と記し、クラウドが企業のIT戦略の一部になったとの認識を示している。

 これはもちろん、AWSの望むところだ。シニアバイスプレジデントとしてAWS事業を率いるAndy Jassy氏はRe/Codeのインタビューで、「(クラウドは)"if"(もし導入したら…)の会話だった」とする2~3年前と比較しながら、「現在、"if"はなくなって、"when"(いつ導入するか)の会話になった」と答えている。

 オンプレミスの既存顧客にクラウドを売り込むために“ハイブリッドクラウド”アプローチを取るIBM、Hewlett-Packard(HP)、Oracleなどのベンダーとの競合については、これらのベンダーにとってAWSは破壊的であるとしながら、「顧客は迅速にAWSにワークロードを移行させることで、われわれに票を投じた。これらのベンダーは最初パブリッククラウドを軽視してプライベートクラウドをプッシュしていたが、現在では、パブリッククラウドを構築しようとしている」と優位性を強調した。

 AWSはre:Inventの会期中、ほかにも、ストリーミングデータをAWSに読み込む「Amazon Kinesis Firehose」、モノとクラウドをつなぐIoTサービス「AWS IoT」などを発表した。Reutersは「イノベーションという点で、Amazonが群を抜いているということに異論がある者はいないだろう」というBenchmarkのアナリストの言葉を紹介している。

 クラウドを軸に展開するAWSの勢いはなお続きそうだ。

岡田陽子=Infostand