オンライン販売は不況に強い? 注目のブラックフライデー



 米国の年末商戦がスタートした。“ホリデーシーズン”と呼ばれる感謝祭からクリスマスまでの期間は、小売業が年間の売上高の30~40%を売り上げる大事な時期である。しかし今年は、大恐慌以来という景気後退の真っただ中で、消費者のマインドは冷え切っている。メディアも、これまで順調に拡大してきたオンラインショッピングの行方をかたずをのんで見守っている。


 感謝祭の翌日となる11月の第4金曜日(今年は11月28日)は“ブラックフライデー”と呼ばれ、年末商戦スタートの日となる。家族、友人が互いにプレゼントを贈り、米国人が最も買い物をするという時期の到来だ。この日、小売店は一斉に値引きをし、限定商品を並べ、先着順に特典を配るなどの販促活動を行う。

 小売動向調査のShopperTrakの推計では、ブラックフライデーの売上高は前年比3%増の106億ドル、翌日の土曜日(11月29日)は0.8%減の60億ドル、日曜日(11月30日)は2.3%減の35億ドルで、まだ今年の業績について、「単純に(良し悪しを)判断できない」としている。

 実際、ブラックフライデーは年末商戦の入り口にすぎない。前年よりよいといっても、クリスマスまでの残り期間も上向くと確信できるほど強い増加率ではなかった。実際、ShopperTrakによると、この期間の消費者のトラフィックは18%減少しており、ターゲットを絞って買い物をしたことがうかがわれるという。

 続いて注目された“サイバーマンデー”(12月1日 月曜日)は非常に好調で、comScoreのまとめによると、売上高は前年比15%増の8億4600万ドルだった。Nielsen Netratingsの調べでも、各ECサイトへのトラフィックは「予想を上回る」前年比10%増だった。サイバーマンデーは、勤務に戻った人々が職場のPCを使ってオンラインショッピングするという新しい習慣である。

 こうしたデータから、メディアでは「オンラインは不況知らず」といった見出しが躍った。とはいえ、やはり年末商戦は始まったばかりで、今後の推移を慎重に見極めたい向きが強い。消費者の行動パターンも変わってきているのだ。


 一方、オンライン小売を展開するIT大手も、さまざまな工夫をこらして売上増を図っている。

 Microsoftは、値引き合戦に参加して、「Live Search」のキャッシュバック(Live Searchを経由して参加小売店で対象商品を購入すると、一定のキャッシュバックがもらえる)プログラムを強化。また、ゲーム機「Xbox 360」もブラックフライデーの販売台数が、ライバルの「Playstation 3(PS3)」の3倍だったと発表した。

 Appleは、「iTunes」などの自社サービス向けの「ギフトカード」を用意し、サイトではクリスマスに間に合うよう出荷予定を知らせるコーナーを設けている。同社は、勢いをかって年末商戦も好成績が期待されている。Macworldが伝えた調査会社のPiper Jaffrayの推定では、ブラックフライデーでMacは1時間に13台、iPhoneは1時間に3.4台売れたという。両製品の11月の平均販売台数は、Macが1時間2台、iPhoneが1時間1.3台だった。

 ECサイトでは、Amazon、eBayなどが客を集めたようだ。AFPによると、Hitwiseのサイバーマンデーのデータで訪問者数が最も多かったのはAmazon、次いでWalmart.com、Target.com、BestBuy.comだった。Nielsenでは、1位eBay、2位Amazon、3位Walmartとしている。

 オンラインショッピングについては、Search Engine Watchが小売店に公開書簡を出している。ブラックフライデーのバーゲンでは、過去にも、開店直後に買い物客が殺到することで事故が起こっており、今年も店員が亡くなるという痛ましい事態になった。Search Engine WatchのKevin Ryan氏はこの書簡で、死者を出すようなディスカウント手法はやめて、もっとオンラインを活用すべきだとしている。オンライン小売業者には追い風だろう。

 ブラックフライデーは、もともとは1869年の株価大暴落が金曜日だったことからこう呼ばれるようになったという。だが、いまでは、ブラックサーズデー(1929年大暴落)、ブラックマンデー(1987年大暴落)など、不吉な「ブラック」に対し、どんな赤字店も黒字(ブラック)になるという、店にとっては一番ありがたい日とされている。

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(岡田陽子=Infostand)
2008/12/8 09:02