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“ポスト・ポストPC”それとも“Vistaの二の舞”? 「Windows 8」プレビュー


 “Microsoft”“Windows”の文字が久々にメディアの見出しを飾った。Microsoftは先週、米ロサンゼルスで「BUILD」カンファレンスを開催。来年秋登場予定の次期OS「Windows 8(開発コード)」のユーザーインターフェイスなどを公開した。Appleは、スマートフォンに続きタブレットでも成功を収めており、Googleも生産性アプリ、スマートフォン、そしてOSでMicrosoftのテリトリに進出しつつある。MicrosoftはBUILDを機に逆襲を図ろうとしているようだが、どんな展開になるのだろう。

 

「Windowsの再イメージ」、タブレットとPCの両方を狙う

 BUILDはソフトウェア開発者を対象としたカンファレンスで、会場には約5000人が詰め掛けた。Microsoftはここで、Windows 8の詳細を披露。開発者プレビューをリリースして開発者にアピールした。

 Microsoftは今年1月、モバイル端末で広く利用されているARMとの提携を発表しており、Windows 8では、長年のパートナーであるIntelのプラットフォームに加えて、ARMもサポートする。MicrosoftはBUILDで、最新のUI/アプリ実行環境「Metro」、「Windows Phone」で導入したタイルを使ったGUIなどを披露した。Metroでは、C/C++、C♯/Visual Basic、Silverlight、XAMLに加え、HTML5とJavaScriptで作成したアプリも動くという。開発したアプリはアプリストアの「Windows Store」を通じて提供できる。

 Windows開発を統括するSteven Sinofsky氏は、BUILDを盛り上げるため、1カ月前にブログ「Building Windows 8」を新設して情報発信を開始していた。Sinofsky氏はBUILDのステージでWindows 8を搭載した小型PCを手にしながら、「チップセットからユーザーインターフェースまで、完全に見直した」と述べた。

 開発者の奨励に徹したCEOのSteve Ballmer氏は、2011年のWindows端末の出荷予想台数は3億5000万台であるとした上で、Windows 8を中心に「Microsoftを再考し、再構築し、再イメージしている」と述べた。Sinofsky氏は、「Windows 8ローンチ時に4億人をターゲットにできる」とぶち上げた。

 

Appleの先を行く?−−ポスト“ポストPC”

 MicrosoftがBUILDで明らかにしたWindows 8構想は、多くのメディアを喜ばせたようだ。

 BGRは「Microsoftはコンピューティングの近未来のビジョンを示した」と手放しで絶賛した。そのビジョンとは、将来はPCでもタブレットでもなくすべてであり、携帯性と使いやすさというタブレットの強み、パワフルと多機能というPCの強みを1つのプラットフォームで実現・提供することだとしている。

 また、「iPad」やAndroidタブレットでは実際の作業は難しいなどの難点を挙げ、タブレットで先行したAppleが打ち立てた「ポストPC」に対し、MicrosoftがWindows 8で示した世界は、さらにその先を行く「ポスト・ポストPC」だと持ち上げた。

 Beta NewsのJoe Wilcox氏は、Microsoftの戦略を、PC、スマートフォン、サーバーで動くWindowsをハブに据えた「賢明な展望」とした。CNet.comは、(処理能力を必要とするコンピュータとちょっとした用途に最適なタブレットと、別のOSを持つAppleに対し)1つでさまざまなニーズに応える“スイスアーミーナイフビジョン”と形容した。

 eWeekは、「10の根拠」を挙げ、iOSとAndroidのタブレットにとって、Windows 8が脅威になると主張した。その主張は「結局のところ(最大のシェアを持つ)Windowsである」「企業ユーザーはWindows 8を選ぶ」「ベンダーの支持」「Microsoftは大金をはたいて投資する」といったエコシステム関連が中心。だが、さらに技術面でも「OSが堅牢」とWindows 8を評価する。

 そして、Hewlett-Packardが発表した「webOS」端末の開発打ち切りに象徴されるように、タブレット向けOSが早くも統合に向かいつつあることを指摘。GoogleのMotorola Mobility買収を受けたAndroidベンダーが流れ込む可能性なども挙げながら、市場の競争環境でもWindows 8がiOSとAndroidを脅かす可能性があると分析している。

 

Windows Vistaと同じ運命?

 eWeekは企業ユーザーに好材料としたが、これには異論もある。Silicon.comとFoxNewsはともに、「企業ユーザーは、Windows XPからWindows 7へのマイグレーションを進めているところだ」とのGartnerのレポートを引用した。つまり、「Windows Vista」は発売して5年が経過するが、企業への導入率は欧州で10%、米国で15%程度にとどまっているということだ。

 そして、Windows 8は、Windows 7へのマイグレーションがやっと終わるころに登場する。FoxNewsは「“マイグレーション疲れ”が出て、企業の多くが(Windows 8を)スキップするだろう」というGartnerのMichael Silver氏の言葉を引用した。さらにSilver氏は、Windows 7はVistaのマイナーアップグレードだったから成功したが、Windows 8は技術的に大きな変化であり、企業は、こうした大きな変化をしばしば敬遠すると指摘している。

 だが、そのSilver氏も、タブレットとなるとWindows 8の展望は明るいと見ている。「市場は、iPadに対抗できるタブレットOSがMicrosoftから出てくることを期待している」(Silver氏)という。他方、Enderle GroupのRob Enderle氏は、Metroインターフェイスやタッチが受け入れられなかった場合、Windows 8はVistaと同様、失敗に終わるとFoxNewsに述べている。

 Silicon.comは企業向けという面ではネガティブな予想をしながらも、これまでMicrosoftが明らかにしたWindows 8関連情報はコンシューマにフォーカスしたものであることに留意。ビジネス向けの機能がまだよく分かっていないこと、PCやタブレットなどさまざまな端末で動き、クラウド技術も統合されていることなどを挙げ、企業にアピールする可能性はあるとみる。

 

次世代コンピューティングを説得できるのは?

 BUILDは話題づくりという点では成功したといえるし、会期中に公開した開発者向けプレビュー版のダウンロードは50万回を超えて好調と伝えられている。まずまずの滑り出しである。だが、まだこれからだ。

 ARMでレガシーのWindowsアプリが動くのかなど、調整や具体化しなければならない部分は多い。AppleやGoogleも次の手を出してくるだろう。10月になると、Appleが「iPhone 5」を発表すると言われており、また話題をかっさらうかもしれない。Microsoftにとって、気の抜けない日々が続く。

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