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“ボイスファースト”に猛ダッシュ 中国ネット大手「BAT」

中国は世界で優位?

 火花を散らすBAT各社は、それぞれが強みを持つ足場から音声アシスタント市場を攻略してゆく構えだ。

 中国最大のeコマース企業Alibabaの最大の強みは、ユーザー4億5000万人の決済サービスAliPayだ。自社の運営するサイトだけでなく、莫大なオンライン購入を取り込める可能性がある。技術ニュースサイトRead Multiplexの創設者兼編集者Brian Roemmele氏は「(Alibabaは)Tmall Genieユーザーのためだけに大幅割引セールを行うだろう。AlipayとTmall Genieの組み合わせは非常にパワフルになる」とQ&AサイトQuoraの質問に対して解説している。

 Baiduは自動運転車などのプロジェクトを持ち、AIに特に大きなリソースを投入。音声アシスタントは大きなAI戦略の一部に位置づけている。DuerOSのプレスリリースでは「(DuerOSの)目標は、あらゆる音声デバイスの基本的なオペレーティングフレームワークになることであり、本質的に“AI時代のAndroid”を創り出すことだ」と述べている。

 Tencentはソーシャルネットワークやメッセンジャーなどの巨大なユーザーベースと傘下の多彩なサービスが足がかりになる。Techinasia.comは「Tencentは、配車サービス、食糧配達、検索エンジンなどさまざまな企業を保有しており、(WeChatとQQという)中国最大のソーシャルネットワークの2つを運営している。WeChatのみで月間9億3000万人のアクティブユーザーを擁し、その全部をXiaoweiで接続できる」とその強みを解説する。

 ディープラーニングを基盤とするAIソリューションでは、データの量がモノを言う。それぞれ膨大なデータを最初から持っているBATは、この点で欧米の企業よりも恵まれたポジションにある。それだけでなく、中国企業は多くの点で優位と考えられている。

 例えば、The Economistは、AI分野で中国が優位に立てる要素として次のようなものを挙げている。▽漢字の入力が面倒なことから欧米と比べて音声認識が早く普及▽世界の5分の2以上ともいわれるAI科学者の数▽活発な投資で次々にAI関連スタートアップが生まれる環境▽政府の強力な支援▽インターネットとAIサービスに対する若者の関心――など。

 中国AI企業がさらに力をつけていけば、音声アシスタント市場の勢力地図も大きく変わるかもしれない。現時点では、英語と中国語という言語の壁が音声アシスタント市場の“棲み分け”の形をつくるとの見方が強いようだ。が、“中国が圧倒”となる可能性もあるかもしれない。