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本格的な影響が始まる 2017年のAIトレンド

 昨年のテクノロジー業界では、AI(人工知能)が重要なトレンドとして脚光を浴びた。Googleの「AlphaGo」がプロ囲碁棋士に勝利したニュースが大きく取り上げられ、Oracle、Salesforce.com、SAPなど主要なエンタープライズソリューションベンダーが次々にAIの要素を含む製品やサービスを発表した。2017年もAI分野は目が離せない。注目ポイントを俯瞰する。

「深層強化学習」と「敵対的生成ネットワーク」に注目

 MIT Technology Reviewは、「2017年のAI、5大予想」として5つのトレンドを予想している。うち2つは技術分野で、AIの進化が2017年も続くことを予感させた。2つの技術とは、「深層強化学習」(Deep Reinforcement Learning)と「敵対的生成ネットワーク」(GAN:Generative Adversarial Network)だ。

 深層強化学習は、AlphaGoの勝利に大きく貢献した技術と言われており、動物が、一定の行動がポジティブな結果を生むのか、ネガティブな結果を生むのかを学ぶ方法から着想を得たという。コンピューターに応用し、迷路脱出で挑戦と失敗を繰り返しながらポジティブな成果とそれにつながった行為を関連づける。マシンが人に教えられることなく自己学習できるメリットがある。

 この手法自体は以前からあるが、ビッグデータやニューラルネットワークと組み合わせて、AIが複雑な問題に取り組んだり、過去のゲームから分析したりすることが可能になったという。

 「2017年はこの深層強化学習の応用がさらに進む」というのがMIT Technology Reviewの予想だ。「自動運転、産業ロボットなどの分野に適用されるだろう。すでにGoogleはデータセンターの効率化に取り入れている」と述べている。ただし、このアプローチは、なお実験レベルの段階にあり、シミュレーションに時間がかかるなどの課題も挙げている。

 敵対的生成ネットワーク(GAN)は、AI研究の非営利団体OpenAIの研究者Ian Goodfellow氏が発明した技術で、「トレーニングセットから学習した後に新しいデータを生成するネットワークと、本物と偽物を区別することを目的とした別のネットワークで構成される」とMIT Technology Reviewは説明する。2つのネットワークを活用して現実的な合成データを生成するという。

 このアプローチのメリットについて、深層学習の産みの親の一人であるYoshua Bengio氏は「コンピューターがラベル化されていないデータから学習するにあたって優れた方法になる」と説明する。コンピューターを将来的に、さらにインテリジェントにするのに役立つという。