クラウド特捜部

SoftLayerを武器にクラウドをロックオンしたIBM

 2013年に大手クラウド事業者のSoftLayerをIBMが買収し、IBM自体も事業の中核をクラウドへと大きくかじを切っている。ただ、日本国内においては、SoftLayer自体の知名度が高くなく、同社のクラウドサービス自体がそれほど知られていなかった。このため、IBMの事業変革にばかり注目が集まっていた。

 そこで今回は、SoftLayerのクラウドサービスとしての機能や、IBMがSoftLayerにより実現しようとしているIT環境がどのようなものかを、日本IBM グローバル・テクノロジー・サービス事業クラウド・マーケティング シニア・マーケティング・マネージャーの北瀬公彦氏に聞いた。

自社IaaSをSoftLayerへ切り替え

――SoftLayerを買収する前から、IBM自身でクラウドサービスを提供しましたが、なぜ自社独自でサービスを続けずに、SoftLayerに集約することにしたのでしょうか?

日本IBM グローバル・テクノロジー・サービス事業クラウド・マーケティング シニア・マーケティング・マネージャーの北瀬公彦氏

 SoftLayerを買収する以前は、IBM Smart Cloud Enterprise(IBM SCE)やIBM SmarterCloud Enterprise+(IBM SCE+)といったクラウドサービスを展開していました。しかしSoftLayerを買収したことで、IBM SCEはサービス自体を終了し、SoftLayerへの移行を進めています。IBM SCE+は、マネージドタイプのクラウドサービスになっているので、利用する目的が異なることもあり、現状ではそのまま提供をしています(注:現在はIBM Cloud Managed Servicesという名称になっている)。

 ワールドワイドのIT環境を考えていったときに、クラウドサービスというのは非常に重要なポジションを占めると考え、今までのIBM SCEのようなIBMネイティブではなく、オープンプラットフォームのクラウドが必要になると考えて、SoftLayerを買収しました。SoftLayerの買収時期には、x86サーバー事業の売却などもあり、IBMにとってはオープンなクラウドサービスに大きくかじを切ったといえるでしょう。

 SoftLayerはセルフサービス型のクラウドサービスで、OpenStackをベースとしてIaaSが提供されています。また最近では、SoftLayerのインフラを利用して、Cloud FoundryベースのPaaSとなる「BlueMix」も提供されていますね。

 一方、IBM Cloud Managed Services(IBM CMS)は、マネージドタイプのプライベートクラウドサービスです。IBM CMSは、IBMデータセンター内に設置されたIBM保有のハードウェアリソースを使うサービスでしたが、最近では、お客さまのデータセンターに設置したIBMのハードウェアリソースを、IBMがリモートで運用する、といったタイプも提供するようになりました。このサービスを利用すれば、システムやデータをクラウドのように社外に置けない、システムを社外に持ち出したくないというユーザーのニーズに応えられます。

 ただIBM CMSのようなサービスは、クラウドサービスといっても(一般的なIaaSに比べると)コスト的に高額になります。SoftLayerに関しては、一般的なITサービスとしてクラウドを利用できるように、コスト面でも、先行のAmazon Web Services(AWS)やMicrosoft Azure、Googleなどに対して競争力のあるサービスとして提供しています。

(山本 雅史)