日体大、「HP MultiSeat Computing」を図書館のPCエリアに導入

短納期・低コストでマルチユーザー環境を実現


 日本体育大学(以下、日体大)は、日本HPのクライアントソリューション「HP MultiSeat Computing」を、図書館(東京・世田谷キャンパス本館および横浜・健志台キャンパス別館)のPCエリアに導入した。「HP MultiSeat Computing」は、1台の専用ホストPC「HP MultiSeat ms6000 Desktop(以下、ms6000)」に、端末となるアクセスデバイス「HP MultiSeat t100 Thin Client(以下、t100)」をUSB接続することで、最大10名までのマルチユーザー環境を実現するソリューション。

 今回、「HP MultiSeat Computing」を導入した経緯やその用途、効果などについて、日体大 管理部 電算課 主任の荒井俊嘉氏と同 図書館課の衞藤俊介氏に話を聞いた。

東京・世田谷キャンパスの外観日体大 図書館(東京・世田谷キャンパス本館)のPCエリア

 日体大では、昨年5月に東京・世田谷キャンパスの新館が竣工、これにともない同キャンパスの2F・3Fフロアに旧館の図書館を移転し、7月にリニューアルオープンする計画が進んでいたという。「移転にともない、図書館の延床面積は約2013平方m、座席数は353席まで拡張されることになったが、このタイミングで、学生からの要望が高かった、図書館内で利用できるPCの台数増加に対応することを検討した。当初は、すべて通常のPCを導入する予定だったが、具体的な検討を始めたのは昨年5月からで、開館までの2カ月間でシステム構築するには納期が難しい状況だった。加えて、コスト削減の要求も厳しく、通常PCの導入は断念せざるを得なかった」と、荒井氏は当時を振り返る。

日体大 管理部 電算課 主任の荒井俊嘉氏

 どうすれば、納期とコストの課題をクリアしながらPC台数を増やすことができるのか。この問題を解決するソリューションとして、荒井氏が注目したのが日本HPのクライアントソリューション「HP MultiSeat Computing」だ。採用の経緯について荒井氏は、「HP MultiSeat Computingの存在については、ニュース発表された時点で知っていた。今回、図書館のPC増加にあたって、さまざまなソリューションを探した結果、短納期とコスト削減を実現できるソリューションは、HP MultiSeat Computingのほかに選択肢がなかった。HP MultiSeat Computingであれば、専用ホストPCにUSB接続するだけでマルチユーザー環境を実現できるため、短期間での導入が可能。そして、通常のPCを複数台導入するよりも、機器の費用はもちろん、電力面でも大幅にコスト削減できるのは明らかだった」(荒井氏)と説明する。

 導入において、唯一、不安だったのは導入事例が少ない点だった。これに対して日体大では、「HP MultiSeat Computing」のセミナー経験や導入実績をもつ代理店を日本HPから紹介してもらい、導入からシステム構築までを依頼。「機器の手配から設置、稼働までスムーズに導入を完了し、無事に7月の開館に間に合うことができた」(荒井氏)という。

専用ホストPC「ms6000」液晶ディスプレイの背面に設置されたアクセスデバイス「t100」

 日体大では今回、専用ホストPC「ms6000」を15台導入。「ms6000」1台に7~8台のアクセスデバイス「t100」を接続して共有するマルチユーザー環境を構築した。これにより、移転前までは、東京・世田谷キャンパス本館と横浜・健志台キャンパス別館あわせて40台だったPC台数を、現在では東京・世田谷キャンパス本館61台、横浜・健志台キャンパス別館36台、合計97台と、倍以上に拡大している。

 導入にかかったコストについては、通常のPCを100台設置して、1台ずつアプリケーションやOSのディスクイメージを作成したり、ネットワーク環境を構築した場合と比較して、機器とSI費用も含めて約1/5程度に抑えることができたという。さらに、運用コストに関しても、「専用ホストPCのみ保守契約を行い、安価なアクセスデバイスは故障時に買い換えることで対応するようにした。通常PCを導入した場合は、すべての台数を保守契約する必要があり、保守コストを削減できるというメリットも大きかった」(荒井氏)としている。

 図書館に設置されたPCは、開館時間内であれば自由に利用することが可能。テーブルには、アクセスデバイス「t100」が背面に設置された液晶ディスプレイとキーボード、マウスが置かれ、学生はログイン画面から個人のアカウントを入力してPCを利用する。

日体大の図書館に設置された「HP MultiSeat Computing」のPC端末

 「個人のログイン認証は開館から少し遅れて、10月からの対応となった。それまでは、誰がどの端末を使っているのか把握できない状態だった」と衞藤氏。この理由について、「従来は、学生1人が1つのIPアドレスを使うことを前提にしており、IPアドレスベースの認証を行っていた。そのため、マルチユーザーの認証には対応できていなかった。そこで、Active Directoryを新たに導入し、開館のタイミングには間に合わなかったが、10月からはマルチユーザー環境での個人認証を実現した」と説明する。

 また、認証のほかに、運用面で大きな課題となったのが、「HP MultiSeat Computing」では、DVDやUSBメモリなどの外部メディアを利用することができないという点だ。日体大では、この課題に対して、「まず、DVDについては、PCエリアとは別にAV室を設置し、そこにDVDを閲覧できる設備を用意することで課題をクリアした。そして、USBメモリの代替としては、PC教室向けに昨年6月から提供開始したWebストレージを活用することにした。このWebストレージは、学内のイントラネット上で運用しているもので、個人ごとに保存領域を割り当てている。図書館のPCで作成したデータは、Webストレージを利用して保存できる環境を整えた」(衞藤氏)と、運用面をうまく工夫することで対処している。

日体大 図書館課の衞藤俊介氏

 図書館の開館から約半年が経つが、学生のPC利用に関して大きなトラブルは起こっていないという。専用ホストPCを共有する環境であるため、PC利用の増加にともなうパフォーマンスの低下も懸念されるが、「新しい図書館になってPC台数が増えたこともあり、PCを利用する学生は確実に増えている。しかし、専用ホストPCにインストールしてあるアプリケーションはオフィスのみで、ほとんどの学生がWeb閲覧か文書作成で利用している。そのため専用ホストへの負荷は軽く、マルチユーザー環境でもパフォーマンスが低下することは全くない。また、図書館では、すべての利用者が同じ作業を集中的に行うケースはなく、負荷分散されるので、マルチユーザーでの利用に適している」(衞藤氏)という。

 なお、専用ホストPCの環境は日次でリセットされ、翌日の開館時には初期設定に戻るようになっている。インターネットセキュリティについては、コンテンツフィルタリングによって、悪意のあるサイトや有害サイトへのアクセスをブロックしている。

 今後の取り組みについて荒井氏は、「現在提供しているWebストレージはあくまで個人用で、グループ研究などでのデータ共有には対応できない。学生の利便性向上のために、USBデバイスを利用できるように検討していく。また、専用ホストPCが故障した場合、それにつながっている端末すべてが利用できなくなってしまう。そのため、専用ホストPCがダウンした際の迅速なリカバリ体制を整備していく必要がある」との考えを示した。そして、「導入事例が少ないこともあるので、今後もさまざまな情報提供を含めて、よりよい運用方法を提案して欲しい」と、日本HPへの要望を述べた。


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