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NECフィールディング、相模原テクニカルセンターのロジスティクスDXを公開――「Skypod」や「ORV」導入で保守部品供給を高度化
2026年4月13日 06:00
NECグループのサポート/サービス機能の中核会社であるNECフィールディング株式会社は、保守部品の補給機能および供給機能を担う神奈川県相模原市の相模原テクニカルセンターの様子を公開した。
仏Exotecが開発した倉庫自動化システム「Skypod」を導入し、2026年1月から稼働。さらに、オカムラが開発した自動搬送システム「ORV」の導入によってロジスティクスDXを推進し、倉庫業務の自動化や作業負担の軽減、作業品質の向上などにつなげている。物流現場における労働力不足の解消という社会課題解決に向けた実践例のひとつとも位置づけられ、この成果は、BluStellarのシナリオのひとつとして提供することも検討するという。
24時間365日の保守体制を支えるNECフィールディングと相模原TCの役割
NECフィールディングは、ICTシステムのライフサイクル全領域をカバーしたワンストップサービスを提供。オファリング型マネージドサービス、運用サービス、メンテナンスサービス、ソリューションサービスを通じて、コンサルティングから設計、構築、保守、運用に至るまでのサービスを提供している企業だ。
「NECフィールディングは、デジタル環境から人の暮らしまでを守り続けるトータルサポートサービスカンバニーを目指しており、NECグループ全体の成長をリードするDX企業に変化し、お客さまシステムの安定稼働とDX推進を支えることになる。地域と時間を問わず、現場システムを支え、お客さまのビジネスを止めないことが強みである」(NECフィールディング経営企画統括部の遠藤真由氏)とする。
売上高は1827億円(2024年度実績)、社員数は主要パートナーを含め7267人、エンジニア数は同4783人。全国192カ所のサービス拠点と、150カ所の常駐拠点から、24時間365日でのサポートを提供しており、年間対応実績は約107万回に達する。
2026年4月1日付で、NECの100%子会社であるNESICホールディングスの傘下となり、2027年3月には創立70周年を迎える。
2017年からは、社内DX化を推進。NECが持つAIや量子コンピュータなどの最新技術を、社内システムに実装しているのも特徴だ。2022年9月には、NECの疑似量子アニーリング技術を用いて、保守部品の配送計画立案システムを稼働。熟練者が2時間かけていた保守部品の翌日配送計画の立案作業を、10分の1となる12分に短縮するなどの成果を上げている。
今回取材した相模原テクニカルセンターは、2024年4月から、保守部品の配送拠点として新たに稼働。既存の川崎テクニカルセンター(神奈川県川崎市)とともに、保守部品の安定的な供給体制を実現している。
JR横浜線や京王相模原線などの橋本駅から、車で約15分。物流施設である「GLP ALFALINK相模原2」のなかに、同社相模原テクニカルセンターがあり、同センターの総面積は6569平方メートル、倉庫エリアは約5300平方メートルとなっている。東名高速や圏央道へのアクセスがよく、関東広域配送の物流拠点として最適な立地だ。また、免震装置や非常用電源などが導入されており、保守部品の供給において、事業継続性を高めることができるという。
NECフィールディングが取り扱っている保守部品は、約100万点。ICT機器だけでなく、店舗系設備、医療機器などもサポート対象としているほか、NEC以外のメーカーのICT機器の保守部品の在庫保管や運用保守の改善提案に加え、メーカーから受託した保守部品管理をオファリング型マネージドサービスのメニューのひとつとして提供している。
また、サプライ倉庫を持ち、プリンターなどのカートリッジやトナーなど、NECグループによる用品販売向けサプライ商品も在庫管理している。こうした取り組みを通じた実績をもとに、倉庫業務を変革。従来のコストセンターから、新たにプロフィットセンターへと転換する取り組みも進めている。
相模原テクニカルセンターでは、保守部品の「補給機能」と「供給機能」の2つの役割を持つ。
「補給機能」は、2026年5月から開始する機能であり、集中倉庫と位置づける全国10カ所のパーツセンター、中規模倉庫とする全国51カ所のパーツブランチに保守部品を供給し、部品在庫を補充することになる。1日1700件を出荷するという。保守部品を供給するパーツセンターやパーツブランチからは、修理を行う顧客企業のもとにパーツを配送したり、全国309カ所の保守拠点や、45カ所の拠点機材倉庫などを通じて、顧客企業のもとに保守部品を配送したりすることになる。これまで川崎テクニカルセンターで行っていた補給機能も、今後は相模原テクニカルセンターに統合する計画だ。
また、「供給機能」は、障害発生時に、顧客企業のもとに保守部品を配送。修理部品の到着にあわせて、エンジニアは顧客企業に出向き、修理や交換を行うことになる。相模原テクニカルセンターは、神奈川県および西東京エリア向けに緊急配送を行っている。緊急の場合には、構内に音楽が流れ、優先的に対応する指示が行われ、10分~15分でピックアップし、出荷し、すぐに現場に届けるという。
現在、相模原テクニカルセンターでは供給機能として、1万5000種類の保守部品を保管しているというが、補給機能が稼働すると莫大(ばくだい)な種類の保守部品を取り扱うことになるという。
また、サプライ販売倉庫としての役割では、午後5時までに注文を受けたものは当日中に出荷。1日600~800件に対応しているとした。
なお、供給機能は、当面、川崎テクニカルセンターと共存していくことになるが、川崎テクニカルセンターは施設の老朽化が進んでいることから、今後は、最新機能を備えた相模原テクニカルセンターを、保守部品の補給および供給する主力拠点とすることも検討することになりそうだ。
IT機器保守に自動倉庫システム「Skypod」を導入し作業効率を向上
相模原テクニカルセンターは、2024年4月の開設当初から、ロジスティクスDXを推進する現場に位置づけており、NEC自らが0番目のクライアントとしてDXを実践する「クライアントゼロ」を実践する場にもなっている。
中でも、目玉となるのが、自動倉庫システム「Skypod」の導入である。同システムは、フランスのExotecが開発したもので、エンジニアリングや据え付け、アフターサービスはIHI物流産業システムが担当している。
国内では、ECサイトを運営する企業の倉庫に導入されている実績があるが、保守部品を中心にIT機器を取り扱っている企業へのSkypodの導入は国内初となる。
NECフィールディングが導入したSkypodでは、商品を保管するためのコンテナ(保管ビン)が1万818ビン。自動倉庫内を15台のロボットが移動し、倉庫内の保守部品のピッキングを行い、3つのステーションに払い出しを行う。
これにより、保守部品の入出庫作業は、従来に比べて約8分の1に短縮。部品の入出庫を自動化することによる作業時間の短縮と、正確な入出庫処理によるヒューマンエラーの低減を実現した。業務を標準化でき、ピッキング作業に発生しがちな属人化を抑制することができる。
NECフィールディング ロジスティクス統括部 東日本ロジスティクスグループ 相模原テクニカルセンター長の益山猛志氏は、「ロボットが移動する倉庫内は人が入れないようになっており、すべてをシステムが管理しているので、人は、どこに部品が収納されているのかを気にする必要がない。3つのステーションに配置されたモニターへの表示内容をもとに作業指示を行い、保守部品をピッキングできる。人の作業を標準化でき、属人化も排除できる。また、これまでは、作業者がピックカートを持って移動し、高い場所に部品を保管している場合は、その場所まで高所作業車を持ち込み、それに登って部品をピッキングしていた。そうした手間がなくなる」という。
ピッキング作業の担当者は、構内を1日3万歩も歩いていたが、これが大幅に削減されるという。
また、出庫能力は1時間あたり360件で、1件あたり13.8秒で入出庫の作業が行える。15台のロボットは、在庫点数や入出庫の頻度などをもとに設定したもので、業務の拡張などに伴い、増やすことが可能だ。
さらに、天井近くの高い位置まで収納できる構造となっており、ロボット自らがラックを昇降して、対象の部品を作業者の手元まで搬送する「Goods to Person」方式を採用。3次元高速ピッキングシステムの特長を生かして、上部空間を活用したり、通路はロボットが通れる幅に狭められたりするため、保管スペースの有効活用が可能になる。保管密度は、川崎テクニカルセンターに比べて1.7倍に増加しているという。
益山センター長は、「倉庫のピッキング作業や仕分け作業の自動化と効率化を実現するとともに、在庫管理の精度を向上させることができる。緊急で保守部品を出荷する場合にも柔軟かつ迅速に対応でき、さらに、高いセキュリティ環境下で部品を保管できる」と語る。
相模原テクニカルセンターでは、一度出荷した保守部品は、使用していなくても、再度検査を行って在庫しなおしたり、川崎テクニカルセンターで修理した部品を在庫したりといったこともある。こうした複雑な入出庫にも対応する形でSkypodを利用しているケースは国内でも珍しいという。
Skypodを通じて、保管する部品に対する高いセキュリティの実現と、複雑な入出庫にも対応する柔軟な在庫管理を実現している点は、外部企業からの保管サービスや配送サービスの受託においても、大きな効果を発揮することになりそうだ。
オカムラの自動搬送システム「ORV」を導入
もうひとつの取り組みは、自律走行が可能な自動搬送システム「ORV(Okamura Robot Vehicle)」の導入である。
オカムラが開発したORVは、本体に搭載したセンサーで、周囲の環境を把握し、周辺地図の作製および自己位置推定を行う「SLAM(Simultaneous Localization and Mapping)」技術を活用。カゴ車を自動認識して取りに行き、カゴ車を目的の場所まで搬送。障害物を避けたり、小さく旋回したり、バック走行ができたりする。狭い空間にすき間なくカゴ車を整列配置させることも可能だ。また、自動的に充電も行う。
300kgまでのカゴ車の搬送が可能であることから、相模原テクニカルセンターでは、大型保守部品などが入ったカゴ車も自律的に搬送させており、現在は、保守部品の保管棚と出荷バースの2拠点間の移動に活用。1日240往復の運搬能力を持つという。
また、ORVは、タブレットなどを通じてマップを作成することで、柔軟に走行ルートを変更可能であるため、今後は、補給機能の開始に伴う出荷量の増加にあわせて、複数拠点を結んだ搬送を想定。これにより、単純な移動作業に関わる人手を大きく削減できると見ている。
さらに、特筆できるのが、倉庫エリア内に最先端のセキュリティ技術を活用していることだ。
建屋への入館にはQRコードを使用しているほか、オフィスエリア、倉庫エリア、倉庫内に入るためにもそれぞれにセキュリティを通過することになる。セキュリティの強化によって、外部からの倉庫管理業務の委託にも十分に対応できる環境を整えている。
AIなどを駆使した「保守業務全体のDX化」への取り組み
NECフィールディングでは、相模原テクニカルセンターでのロジスティクスDXの取り組みだけにとどまらず、保守業務全体のDX化にも取り組んでいる。
保守部品の倉庫への受け入れや保守対応への準備、コールセンターによる受付、問診から、部品の選定および手配、エンジニアの出動、現場作業、作業完了、さらには改善および教育までを一気通貫でサポートするDX化に取り組んでいる。
例えば、コールセンターにおける修理の受付業務では、AI音声認識技術を活用して、電話応答の待ち時間を短縮したり、AI問診では、NEC Generative AI Service(NGS)を活用した会話内容の自動要約を行い、障害の難易度の特定や被疑部品の選定につなげたり、SalesforceのService CloudおよびField Serviceを活用した保守支援システム「CS-Force」により、障害内容と過去のデータを照らし合わせ、最適な対応者を自動アサインするとともに、現場ナビを活用した作業プランの自動生成も行っている。
こうした取り組みにより、受付要員数は29%の省人化を達成したほか、エンジニアの手配に関わる業務工数は15%削減し、現場作業時間は13%削減したという。さらに、データをもとにした被疑部品の特定率は94%という高い精度を達成。AIによるログの自動解析により、作業時間を180分から15分へと大幅に短縮したという成果もあがっている。
NECフィールディング 執行役員常務 SI・サービスユニット長の平井真樹氏は、「NECフィールディングは、メンテナンス事業におけるサポートサービスフォーメーションを、より強固なものとし、万が一、お客さまのシステムが停止した際もスピード感を持って復旧させ、持続可能性を高め、安心・安全な社会を創造することを目指す。また、運用、SI構築においても、DX化を進めることで、お客さまのDXの推進を支えることになる」と述べた。
NECフィールディングでは、相模原テクニカルセンターなどで取り組んでいるクライアントゼロを通じて蓄積した先進的テクノロジーの活用や、ビジネス変革の知見と経験を生かした成果を、オファリングやシナリオとして体系化した「BluStellar」にも展開する考えも示した。
NECでは、4月1日に、NECフィールディング、NECネッツエスアイ、NECネクサソリューションズでも、BluStellar事業を開始すると発表しており、こうした動きとも連動することになる。
















