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富士通と東洋医学総合研究所、漢方医師の触診データ化を実現するグローブ型触感センサーを開発
(2015/12/10 11:58)
富士通株式会社と株式会社富士通研究所、学校法人北里研究所北里大学東洋医学総合研究所は10日、漢方医師の触診時の触感をデータ化するグローブ型触感センサーを開発したと発表した。
富士通、富士通研究所、東洋医学総合研究所は共同で、触診の現場において、手触り感を損ねることなく、触感のデータ化が可能なグローブ型触覚センサーと触診位置を検出して硬さのデータ取得が可能なシステムを試作開発した。
センサーを指の腹に装着し、触診時に医師が触った感覚を数値化した圧力データと医師の手の軌跡を連動させることで触感を定量化し、データとして記録することを可能にする。これにより、漢方専門医の触診を大量に蓄積・客観化し、医師の触診支援に繋げるとともに、未病の発見に貢献するとしている。
漢方医療において、腹部に直接触れて診断する触診は、病変や体調を知る重要な判断材料とされるが、その最終判断は医師の経験や知識に依存するため、診断基準を漢方医の継承や育成などに活用するには診断の形式知化や客観化が必要となる。また、医師の触診の感触をICTによってデータ化し、客観的にとらえて活用するためには、医師側にも患者側にも、違和感のない程度に柔軟で高感度なセンサーの実現が重要となる。
開発した技術では、電界が無くとも正負の電荷が分かれる性質をもつ誘電体薄膜(エレクトレット)を圧力検知素子として用い、加圧時に内部の電荷の状態が変化する特性を利用して、高感度な圧力センサーを実現。圧力検知の素子周囲を高絶縁膜で覆う構造にし、加圧時の電荷の漏れを最小限に抑え、圧力を最初に加えた時点から電圧応答が継続するように設計。誘電率の低い絶縁材料を使用することで、圧力を検知する素子の電気容量を小さく抑え、加えた圧力に比例する電圧の出力を増大させることで、高感度を実現した。
触診時の医師の手触り感を損ねることなくセンシングするため、ポリマーフィルムを使って薄さ100~300マイクロメートルの薄膜化を実現し、柔軟性を高めた。こうした技術により、患者に触れる圧力検知素子自体の駆動電源が不要で、高感度と安全性の高さを両立している。
触感センシングと同期して手の軌跡を高精度に検出する方法としては、グローブ先端の指先部に反射マーカーを取り付け、マーカーの動きを検知する近赤外線カメラにより、医師の手の動きを約0.2mmの精度で検知するシステムを構築。10ミリ秒ごとに触診の位置を取得でき、圧力センサーから取得したデータと組み合わせることで、触診の正確な位置と圧力を同期して記録できる。
今回、試作した触感データ取得システムを用いて、東洋医学総合研究所において触診を模したデータ取得実験を実施。加えた圧力に対する応答は線形の特性を示し、微小な触診圧力変化にも十分な反応を示しており、圧力センサーとして実際の触診に限りなく近い数値データを取得できることが確認されたという。
富士通、富士通研究所、東洋医学総合研究所では、センサー感度のさらなる向上や手のひらなど圧力センサーの適用範囲拡大を検討し、開発技術により漢方専門医の触診をデータ化し大量に蓄積・客観化して、医師の触診の支援に繋げていくとしている。