組み込みへのフォーカスを強めるJava~日本オラクルがJavaの動向を説明

Java EE 7でのクラウド対応は見送りへ


 日本オラクル株式会社は13日、「Javaテクノロジーに関する説明会」をプレス向けに開催。9月30日から10月4日に米国で開催された「JavaOne」での発表をもとに、現状に関する説明を行ったが、Fusion Middleware事業統括本部 ビジネス推進本部の伊藤敬シニアマネジャーによれば、「今回のJavaOneでは、これからのJavaをどうしていくかという点について、具体的な発表にこだわってメッセージを出した」とのことで、各製品についてのロードマップが示されている。


Fusion Middleware事業統括本部 ビジネス推進本部の伊藤敬シニアマネジャー今年はJavaOneに加えて、Embeddedに特化したイベントも開催されている

 

順調に普及するJava SE 7

 まずJava SEについては、2011年の夏から提供が始まったJava SE 7が、旧バージョンから順調にシェアを奪っているとのことで、特に4月からはダウンロードのデフォルトがJava SE 7に変わったり、自動アップデートが開始されたりしたことで、急激にシェアが伸びているという。

 また、従来はAppleを経由して提供されていたMac OS X版が、Windows版などと同じように直接Oracleから提供されるように変わったことで、最新のセキュリティアップデートをタイムリーに届けられるようになったほか、「ARM版の提供によって、データセンターで使われるようなMicro Serverにおいても、LinuxでJava SEが使えるようになった」(Java Embedded Global Sales Unit シニア・セールス・コンサルタントの笹沼満氏)とした。

 次期バージョンとしては、2013年後半にJava SE 8の提供が予定されているが、これについては「ラムダ式を導入し、コンパクトでシンプルなコーディングが可能になるし、新しいJavaScriptエンジンのNashornの導入、特定メモリ領域であるPermGenの撤廃、新しいAPIの導入など、多くの機能強化が予定されている」(笹沼氏)と話している。


Java SE 7の普及状況Java Embedded Global Sales Unit シニア・セールス・コンサルタントの笹沼満氏Java SE 8で予定されている新機能

 

増える組み込み市場でのニーズに対応

 続いては、組み込み向けであるJava Embeddedの動向説明が笹沼氏から行われた。

 たくさんのデータをリアルタイムに処理するといったニーズが増大する中で、組み込み市場が急速に拡大しているが、「日本オラクルではデバイスにビジネスチャンスがあると考えている。そこにJavaを採用してもらえれば、サーバーのロジックに合わせたアプリケーションの開発も可能になるし、セキュリティの機能強化、リモートアップデートなどに使えるだろう」と笹沼氏が述べるように、同社では組み込み市場の拡大に大きな期待を持っている。

 そうした中で、JavaOneでは2つの新製品が発表された。それがJava ME Embedded 3.2、Java Embedded Suite 7.0の両製品で、前者は、マイコンクラスの小型機器に向けたJavaプラットフォームで、センサーモジュール、M2M通信モジュール、個人用医療機器などでの利用を想定。一方の後者は、ゲートウェイ/コンセントレータ、ネットワーク機器、M2Mローカルデータストアなどでの利用を想定したパッケージ製品となる。

 このうち、特にJava Embedded Suite 7.0について笹沼氏は、「M2MやInternet of Thingsの世界にすぐに適用できるよう、Java DBとGlassFishなどのコンポーネントを組み合わせてパッケージ化している点が、今までとの違い。LAMPの概念をJavaの世界へ持ってくると考えるとわかりやすい」と説明している。

 なお現在のラインアップでは、スマートフォンやタブレット、組み込みサーバーなどに向けたSE Embedded、テレビやBlu-ray、ネットワーク機器のCDC、携帯電話や通信モジュールに適したCLDC、そしてカードデバイスのJava Cardが用意されているが、来年以降は、従来のSE EmbeddedとCDCの領域がJava SE Embedded 8に統合されるほか、CLDCの領域がJava ME Embedded 8として提供されるようになるとのこと。

 Java SE Embedded 8では、要件に合わせてサイズを選択できるようになるため、現在のSE Embeddedでは140MBあるフルJREに対して、もっとも小さいCompactプロファイル(仮称)では、最小10MBからの導入が可能になる。


急速に拡大する組み込み市場組み込みJavaの新製品Java SE 8のCompactプロファイル

 

Java EE 7でのクラウド対応は見送り

 最後は、Fusion Middleware事業統括本部 ビジネス推進本部 シニアJavaエバンジェリストの寺田佳央氏より、Java EEの説明が行われた。

 2013年春ごろの提供が予定されている次期バージョンのJava EE 7では、クラウド対応を目玉としていたが、これがJava EE 8へ延期されたというのが最大のトピック。寺田氏はこの理由として、「Javaは標準技術であり、末永く使ってもらうことを考えているので、先出しして使われない技術になっては意味がなく、きちんと議論を重ねてじっくりと進めようということで対応を見送った。主要なメンバーからは、この決定に賛同してもらっている」と説明した。

 では、何がJava EE 7ではメインテーマになるのかというと、HTML5対応と開発生産性の向上だという。具体的には、Java Caching API(JSR-107)、Batch Application(JSR-352)、Java API for JSON(JSR-353)、Java API for WebSocket(JSR-356)が新規追加される。寺田氏はこのうち、WebSocketへの対応を特に取り上げ、うまく活用することで、サーバーやネットワーク帯域に対する負荷を大幅に軽減できるとした。


Java EEの将来Java EE 7でのアップデート
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