x86よりもお得でパワフルなOSS環境を~IBM、POWER7搭載のLinux専用サーバを発表
日本IBM 理事 システム製品事業 パワーシステム事業部長 高橋信氏 |
日本IBMは4月25日、IBM POWER7プロセッサを搭載した同社製品ファミリ「IBM Power Systems」のモデルとしてLinux専用サーバ「PowerLinux 7R2(以下、PowerLinux)」を発売、5月4日より出荷を開始すると発表した。日本IBM 理事 システム製品事業 パワーシステム事業部長 高橋信氏は「数多くのx86サーバーを抱えて管理/運用で困っている企業を性能面でもコスト面でも救うLinux専用サーバーがPowerLinux。オープンソースをミッションクリティカルな業務に使いたいが、増え続けるx86サーバーの扱いに頭を悩ませている企業に最適」と語る。
PowerLinuxは、3.3GHzまたは3.55HzのPOWER7プロセッサ(8コア/32スレッド)を2ソケット搭載、メモリ容量は64GB。最大64スレッドの並列処理を実行でき、OSにはRed Hat Enterprise LinuxかSUSE Linux Eneterprise Serverを稼働させることができる。本体価格は147万3780円から。同等スペックのx86を搭載した競合他社製品と比較しても抑えられた価格設定となっている。高橋氏は「POWERプロセッサを低いコストで使ってもらいたかったので、あえて価格面でも勝負した。OSのサブスクリプション料金を加えてもPowerLinuxのほうが低価格。TCOだけでなくTCAでも戦える製品」と戦略的な価格設定であることを明かす。
PowerLinuxの利点 | 他社比較 |
日本IBM システム製品事業 エバンジェリスト(Linux/OSS) 新井真一郎氏 |
最大の特徴はやはり、System Zなどスパコンでの搭載がメインだったPOWERプロセッサをLinuxサーバーに使っているところにある。その理由として高橋氏は「オープンソースをミッションクリティカルな業務やビッグデータ活用に取り入れたいという企業の需要は年々強くなっている。一方で、OSSを動かすための基盤としてx86サーバーを大量に導入し、その運用負荷に悩んでいる企業も多い。信頼性やスケーラビリティやパフォーマンスの面での不満の声もよく聞く」というx86サーバーに対する顧客の声を紹介、これに対しPowerLinuxが「パフォーマンスやスケーラビリティの問題はもちろん、x86サーバーに比べて1/5から1/8まで台数を減らすことが可能」とPOWER7の処理能力の高さを強調する。たとえばHadoopによるビッグデータ処理で大量のx86コモデティサーバを運用しているケースなどでは、その台数を大幅に削減でき、かつパフォーマンスの向上、処理件数の増大を同時に実現することが可能になるとしている。
日本IBM システム製品事業 エバンジェリスト(Linux/OSS) 新井真一郎氏は、PowerLinuxの位置づけとして、「信頼性や可用性、スケーラビリティを追求してきたPOWERファミリの一員であることが重要。顧客に本当に安心してLinuxを使ってもらうための新しい選択肢」と語る。
新井氏はPowerLinuxが実現できる代表的な機能として
・2Uで64スレッド、PostgreSQLも64スレッドまでスケール
・仮想化環境の高パフォーマンスでの常時稼動
・マルチスレッド+筐体内転送によるHadoopの高速化
・高セキュリティのハイパーバイザ
・無停止メンテナンス
などを挙げている。特に今後はPostgreSQLのようなOSSのデータベースをミッションクリティカルな業務で使いたいとする需要が増えるとIBMは見込んでおり、SRA OSS日本支社と協力してPowerLinux+PostgreSQL 9.1のベンチマークをとったところ、最大64スレッドまでスケールすることが証明できたという。「オープンソースのデータベースにスケーラビリティの物足りなさを感じていた顧客には最適」と新井氏。なお、PostgreSQLサポートに関してはSRA OSS日本支社のサポートプログラムが利用可能になっている。
また、独自の仮想化環境である「PowerVM for PowerLinux」にも注目したい。PowerVMはファームウェアレベルで稼働するため、データベースのパフォーマンスへの影響を最小限に抑えることができる。RHEL6とPostgreSQL 9.1の環境では、最大秒間処理件数で35万件を実現したというデータもあり、仮想化環境での高いパフォーマンス維持が期待できる。
データベース業務とともにビッグデータ対応もPowerLinuxの謳い文句のひとつだ。特にHadoopにおける分散処理速度の向上には自信を見せており、「1コアあたりで実行できるスレッドの数を2から4に増やし、ノードを仮想化してスイッチを経由しない筐体内での高速データ転送を可能にしている。これによりMapReduce処理は38%、データロードは60%の処理速度向上を実現した。これまでの分散処理の考え方を根底から変えるインパクトをもつ」と新井氏。大量のx86サーバで構成されたHadoopクラスタでは、ノード間のデータコピーに時間がかかっていたが、仮想化されたノード間ではあれば大幅にそのロード処理時間を短縮できるとしている。「x86+VMwareの組み合わせではMTUが9000までという制限があるが、PowerVMにはそんな制限はない。たとえばMTUを1500から6万5000までアップすると、仮想マシン間のコピー速度が大幅に向上することが判明している」(新井氏)
スケールアップでもスケールアウトでも優れた性能を発揮 | MapReduce処理は38%、データロードは60%の処理速度向上を実現 |
「PowerLinuxはエッジサーバーにはあまり使ってほしいとは思っていない。大量のx86の運用負荷に悩んでいるお客様に対し、TCOとTCAの両方の改善のために提案していきたい」と高橋氏。スパコンで培った技術が集約されたPOWERプロセッサ搭載のLinuxサーバーが、x86をしのぐ新たなコモデティとなることができるのかに注目していきたい。