日本HP、8ソケットのx86サーバー「DL980 G7」のXeon E7搭載モデルを発表

80コア、2TBメモリの“モンスターマシン”でスケールアップの活用を


 日本ヒューレット・パッカード株式会社(日本HP)は15日、x86サーバーの最上位である8ソケットサーバー「HP ProLiant DL980 G7」において、インテルの最新CPU「Xeon E7シリーズ」搭載モデルを提供すると発表した。同シリーズから新たに提供された10コアのCPUを搭載した場合、最大80コア、160スレッドのサーバーとして利用可能。エンタープライズサーバー・ストレージ・ネットワーク事業統括 サーバーマーケティング統括本部の上原宏統括本部長は、「社内で“モンスターマシン”と呼ばれているこの製品を、今まで単体のサーバーでは間に合わなかった業務エリアへどんどん提案していきたい」と、意気込みを述べた。


HP ProLiant DL980 G7エンタープライズサーバー・ストレージ・ネットワーク事業統括 サーバーマーケティング統括本部の上原宏統括本部長

 DL980 G7は、HP ProLiantシリーズのラインアップの中で最上位に位置する8ソケットサーバーとして、2010年7月に発表された。その当時から、独自の高信頼機能「HP PREMAアーキテクチャー」に基づき設計されたほか、最大2TBのメモリを搭載でき、PCI Express(PCIe)スロットを16本備えるなど、単体での性能・信頼性を追求したモンスターサーバーとして、注目を集めていた。

 CPUは当初、Nehalem世代のXeon 6500番台/7500番台(開発コード名:Nehalem-EX)を搭載できたが、今回の新モデルでは、最新のXeon E7シリーズ(開発コード名:Westmere-EX)の搭載が可能になった。

 Xeon E7シリーズでは、AES暗号の暗号化・復号をCPUで行う「AES-NI」命令や、「Intel トラステッド・エグゼキューション・テクノロジー(TXT)」をサポートしたほか、2つのDRAMチップ障害時にもエラー修復できるDDDC(Double Device Data Correction)にも対応し、信頼性が向上。さらに、Xeon 6500番台/7500番台の最大8コアから、最大10コアへとコア数が拡大したことにより、性能向上も果たしている。

 この点について、エンタープライズサーバー・ストレージ・ネットワーク事業統括 サーバーマーケティング統括本部 製品戦略室の山中伸吾室長は、「80コア、(Hyper-Threadingによって)160スレッドが可能なだけでなく、最新CPUを8基搭載しても1200万円程度で購入できる。80コアのUNIXサーバーやメインフレームは、これまで億を超える価格であったが、これだけの価格で購入できるのであれば、新しい使い方がどんどんできる可能性を持っている」と述べ、魅力をアピールする。


Xeon E7シリーズの搭載による強化点。低電圧メモリも選択可能になっている80コア、160スレッドの巨大サーバーを構成できる

 この新しい使い方、という点でポイントになるのが、スケールアップ手法への回帰だ。

 アプリケーションの処理に高い性能が必要となっても、性能の高いサーバーは非常に効果だったため、スケールアップではなくスケールアウトでシステムとしての処理性能を稼ぐ手法が、今では一般的に行われている。しかし山中氏は、「スケールアウト型の分散処理は、アプリケーションとネットワークの力でパフォーマンスを生み出しているので、分散処理を行うためのリソースが必要となるほか、消費電力も増大する。さらに、サーバーが増えてOSが増えるということは、メンテナンス工数も増大してしまう。アプリケーション側の対応も大変」と、この手法が万能でないという点を指摘。

 その上で、「スケールアップサーバーを用いれば、多少の調整は必要は必要かもしれないが、スケールアウトよりも簡単に高パフォーマンスを出せる。また物理台数が削減されるので、OSの数も減って工数も下げられるし、消費電力も下げられる。また、マルチコア環境を生かしてCPUの数を減らせば、ライセンスコストも減らせる」として、DL980 G7のような巨大サーバーを使うスケールアップで、メリットを提供できると主張した。


スケールアップサーバーの活用によるメリットエンタープライズサーバー・ストレージ・ネットワーク事業統括 サーバーマーケティング統括本部 製品戦略室の山中伸吾室長

 具体的な用途としては、1)巨大データベースやデータ活用ソリューション、2)CPUやメモリ、IOを大量に必要とするアプリケーション、3)超高密度仮想化の3つを紹介。1)では、最大2TB(将来的には4TB)搭載できるメモリ空間を生かして、SAPジャパンのインメモリカラム型データベース「SAP HANA」での活用例を紹介。

 「例えば、8時間かかるバッチ処理時間が数分や数秒へと劇的に短縮される。今、業績などのビジネスの数字を出すのはどんどん複雑になっているが、SAP HANAとこうしたモンスターマシンを使うことで、これを短縮できる。時間が短縮できれば、新しい分析もまた行えるようになり、新しいことにもチャレンジできる。億単位のサーバーが1000万円で買えるようになれば、こうした活用も可能になる」(山中氏)と述べた。


適用領域の1つとして紹介された、SAP HANAたくさんあるPCIeスロットを利用し、半導体ディスクによる超高速ストレージを構成する例
超高密度仮想化により消費電力を削減超高密度仮想化を応用すると、DRサイトをDL980 G7+仮想化で構成する非対称DRも可能になる

 ただし現実に、80コア、160スレッドをフルに使って性能を生かせるアプリケーションは、まだまだ少ないのだという。こうした現状に対し、日本HPでは積極的にISVに働きかけて、対応ソリューションを増やしていきたいとしており、米国など海外での取り組みとあわせて、活用範囲を広げていくとした。なお日本HP社内の検証で利用しているマイクロソフトのSQL Serverについては、直線的に性能が伸びている点が確認されているとのことだ。

 DL980 G7の最小構成価格は、363万900円からである。

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