x86サーバーのベンチマーク記録を塗り替える8ソケットサーバー「DL980 G7」


 以前、日本HPの8ソケットサーバー「HP ProLiant DL980 G7(以下、DL980)」のハードウェアなどを紹介した。その後、HPで、数多くのベンチマークなどが行われ、x86サーバーとしては、現時点において最高のパフォーマンスを記録している。

 今回は、ベンチマークのデータを元に、DL980がどのような用途に向いているのかを解説していこう。

DL980はどんなサーバー?

 以前の記事でも、ハードウェアの紹介はしたが、ここでは簡単にDL980の特徴を解説していこう。

 DL980は、高い性能、高い信頼性を実現するためにHP独自の「PREMAアーキテクチャ」を採用している。PREMAとは、Performance(性能)、Resiliency(回復力)、Efficiency(効率性)、Manageability(管理性)、Availability(可用性)の頭文字をとったモノだ。

DL980 G7の全面。大きさとしては、8Uを占有するサーバーだ。フロントの上段と下段にCPU、メモリモジュールが入っている。I/Oスロットは、背面に用意されているDL980 G7のスペック。ソケット互換のある次世代CPU「Westmere-EX(開発コード名)」へのアップグレードも保証されている
DL980 G7の特徴。8ソケットで64コア、最大2TBのメモリを搭載できる超ド級のサーバーだDL980では、PREMAアーキテクチャを採用している
DL980 G7では、独自のノードコントローラを開発することで、リニアにパフォーマンスをアップすることができる

 HPでは、スマートCPUキャッシングという独自のアーキテクチャを開発した。このアーキテクチャは、2個のXeon 7500番台を一組のモジュールとして、それぞれのモジュールをHPが独自開発したノードコントローラを経由して接続している。

 スマートCPUキャッシング アーキテクチャの最大のメリットは、CPUを増やしていっても、リニアにパフォーマンスがアップしていくことだ。このため、DL980は、Xeon 7500番台を8CPU使用した他社のサーバーよりも、高いパフォーマンスを示している。

 またDL980では、HP独自の「冗長システムファブリック」というテクノロジーを採用した。複数の要素からなるこの技術のうち、データパスを冗長化する「冗長データパス」は、通常のリンク容量に比べると50%以上性能が向上する。「動的ルーティング」は、データ経路を負荷に応じて、動的に変更することにより、高い負荷がかかっていてもシステムのエラーを低減している。さらに、「ラピッドリカバリー」では、不良データを検知するとOSレベルでログを記録して、トラブルを封じ込めることが可能になっている。

 今までのx86サーバーでは、こういったテクノロジーは採用されていなかった。しかし、ミッションクリティカル領域でx86サーバーを使用するためには、システムの冗長化は絶対に必要だ。そして、このようなテクノロジーは、以前よりミッションクリティカル領域をターゲットにしたサーバーを販売している企業が、もっともよく分かっている。そういった意味でも、DL980は、HPらしい製品といえるだろう。

世界最速をマークしたDL980

 冒頭でも述べたように、DL980は、数多くのベンチマークテストにおいて、世界最速の称号を得ている。

 例えば、多くのコンピュータの性能ベンチマークとして利用されるSPECint_Rate2006、SPECfp_Rate2006で第1位のパフォーマンスを実現している(8ソケットx86_64環境において)。

 整数演算のパフォーマンスを測るSPECint_Rate、浮動小数点演算のパフォーマンスを測るSPECfp_Rateは、サーバーシステム全体ではメーカーにばらつきはないと思っていた。しかしDL980では、前述した「スマートCPUキャッシング」により8ソケットのCPUを独自のアーキテクチャで接続しているため、他社のXeon 7500番台を採用したサーバーよりも、高いパフォーマンスを発揮している、ということなのだろう。

 同じXeon 7500番台を採用した他社サーバーでは、4ソケットまではリニアにパフォーマンスがアップするが、CPUが8ソケットになるとパフォーマンスが頭打ちになる。しかし、DL980では、8ソケットになってもリニアにパフォーマンスが伸びていく。

 なお、SPECint、SPECfpを行ったハードウェア構成については、SPECのサイトで確認可能だ。

複数のアプリケーションのパフォーマンスでも1位を獲得

 SPCEintやSPECfpは、ハードウェアの性能自体を測るベンチマークで、実際の環境においてどのくらいのパフォーマンスがマークできるのかは、分かりにくい。そこで、また異なったベンチマークの結果を見てみよう。

 その1つが、サーバーサイドJavaのパフォーマンスを計測するSPECjbb2005。Windows ServerのJavaビジネスアプリケーションのパフォーマンスとしては、DL980が第1位を獲得している。

 SPECjbb2005は、これまで使用されてきたSPECjbb2000と同様、SPECjbb2005は3階層のクライアント/サーバーシステム(中間層を重視)をエミュレートすることによりサーバーサイドJavaのパフォーマンスを計測している。

 このベンチマークでは、旧世代の8ソケットサーバー(DL785 G6)の実に約2倍のパフォーマンスを示している。さらに、同じくXeon 7500番台を8ソケット搭載したサーバーよりも13%ほど、同じCPUを使用していてもパフォーマンスが高くなっている。

 DL785 G6との比較においては、1つのCPUが搭載するコア数がXeon 7500番台になり、増えていることが大きな原因といえるだろう。ただ、同じXeon 7500番台を搭載している製品よりも高いパフォーマンスを示しているのは、DL980独自のアーキテクチャの差といえるだろう。

 また、多くのユーザーが気になるのは、データベースのパフォーマンスだろう。TPCのベンチマークにおいても、DL980は非常に高いコストパフォーマンスを示している。

ハードウェア構成とTPC-Hの結果(日本HPのサイトより

 この分野では、TPC-H 3TB非クラスター化(単一システム)部門で優れた結果を残している。TPC-Hは、ビジネスインテリジェンスソリューションのデータウェアハウスにおける複雑なトランザクションの性能を測定している。

 TPCに関しては、単純は性能だけでなく、システムのコストが大きく関係している。性能が高くても、高価で購入できないシステムでは現実味がない。やはり、高いパフォーマンスを示しながら、低コストで購入できるシステムでないと多くの企業にとっては、魅力のあるシステムとはいえない。

 DL980は、TPC-H 3TB部門において、競合他社のサーバーをしのぐパフォーマンスを持ちながら、データベースの1クエリあたりのコストが競合他社のシステムの1/8と、信じられないほど低コストになっている。

 さらには、実際、多くのユーザーが利用すると考えられるSAPのベンチマーク(SAP Sales and Distribution Standard Application Benchmark:SDベンチ)においても、競合他社を上回っている。

 SAP SDベンチなどの、実際に利用される環境に近いベンチマークで、これだけのパフォーマンスを示していることは、非常に驚きだ。また、同じXeon 7500番台のシステムを使用しても、メーカーによって独自のアーキテクチャを採用することで、これだけ差が出てくることにも驚いた。このあたりは、IA64の「HP Integrity」サーバーなど開発しているHPならではなのかもしれない。

HPのG7世代のほかのサーバーと比較しても、DL980 G7は非常に高いパフォーマンスを出している

DL980の良さは実際に使ってみて分かる

日本HPでは、DL980を90日間無料で貸し出すトライアルキャンペーンを11月30日締め切りで行っている

 ここまで、HPが行ったベンチマークのデータをもとに分析を行ってきた。しかし、実際には実機を触ってテストしてみないと分からないことは多い。そこで日本HPでは、DL980を90日間無料で貸し出すトライアルキャンペーンを実施している。

 多くのメーカーでは、購入を前提としたシステムの貸し出し、アプリケーションの移植や動作確認のためのシステム検証環境を用意はしている。しかしこういった場合、最大でも1カ月程度なのが普通で、短ければ2週間、ということも多い。しかし、DL980のトライアルキャンペーンでは、3カ月もの長期にわたって、貸し出しを行ってくれるため、じっくりとDL980の良さを試すことができるだろう。

 しかも、このキャンペーンでは、DL980(Xeon 7500番台を8ソケット分、メモリが512GB、146GB HDD×4など)のセットを10台貸し出すという。非常にぜいたくな構成のため、単に冷やかしで借りることはもちろんできないだろうが、実際に導入を検討している企業においては、実機でテストが行えるは大きなメリットだ。

 また、実際の購入は2011年の春以降になるが、開発やテストフェーズを先行して同じハードウェアで行っておきたい、と考えている企業にとっては、約3カ月もの間、無料で使えることを考えると、大きなコストメリットになる。日本HPでは、もし、実際に導入することになれば、トライアルキャンペーンで設置されているシステムをそのまま購入できるような仕組みも用意しているので、環境を継続利用できる点もメリットといえるだろう。

 なお、今回のキャンペーンの申し込み締め切りは、11月末の予定になっている。

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