ニュース
NTTドコモビジネス、2030年度に売上2.6兆円を目指す新事業戦略を説明 AI基盤の進化と社会実装を加速
2026年9月29日 06:15
NTTドコモビジネス株式会社(旧社名:NTTコミュニケーションズ株式会社)は28日、事業戦略について説明。同社が取り組む「AIインフラ戦略構想」の進捗や、「AI-Centric ICTプラットフォーム」による成長戦略などについて触れた。
NTTドコモビジネスは、2025年7月に社名をNTTコミュニケーションズから変更し、目指す姿として「産業・地域AXのプラットフォーマー」を掲げてきた。今回の事業戦略説明は、社名変更からの約1年間の成果を総括するとともに、2030年度に向けた方向性を示すものになった。
NTTドコモビジネスの小島克重社長 CEOは、「この1年でAIは急速に進化し、大きく期待が高まる一方、想定を超えるほど不安が大きく高まっている。さらに、フィジカルAI元年と言われるように産業用ロボットが進展し、フロンティアAIの進化による影響、ソブリンAIへの関心の高まりなどの動きが見られている」と、同社を取り巻く市場環境を分析。
「NTTドコモビジネスは、1年にわたり、AIを業務や社会に実装することを具体化してきた。その取り組みの中核となるのが、AI-Centric ICTプラットフォームである。コンピューティングだけでなく、ネットワーク、マネージドセキュリティを一体で進化させているのが特徴である」などと説明した。
さらに、「2030年度には売上収益で2兆6000億円を目指し、そのうち、重点4領域(AI、IoT、デジタルBPO、地域・中小DX)の売上収益で7000億円を目指す。重点4領域は今後5年間で2倍以上の成長を遂げたい。特にAIおよび地域・中小DXの成長を期待している」と語った。
2025年度の実績は、売上収益が2兆円となり、重点4領域の売上収益が3000億円超になったことを報告。重点4領域はそれぞれが前年度に比べて200億円規模の成長を遂げたことを強調しながら、「コンピューティング」、「ネットワーク」、「マネージドセキュリティ」の観点から、この1年の取り組みを振り返った。
「コンピューティング」では、新たに都市型AIデータセンターと、コンテナ型データセンターのサービス提供を開始したのに加えて、1GPUから利用できるGPUクラウドサービスGPUaaS(GPU as a Service)を9月30日から提供。
「用途や需要に対応できるコンピューティング環境を拡充した。都市型AIデータセンターや郊外型データセンター、エッジ型データセンターに加えて、新たなデータセンターサービスを提供することで、用途、規模、場所に応じて、コンピューティングを使い分ける提案が行える体制が整った」と総括した。
「ネットワーク」では、NaaS(Network as a Service)により、企業の拠点、IoTの現場、データセンターなどにあわせて、最適なネットワーク環境を提供できることをアピールした。
「NaaSは、利用状況に応じて、柔軟に帯域を変えることができるサービスである。AI時代の企業ネットワークであるdocomo business RINKのほか、IoT向けネットワークのdocomo business SIGN、データセンター向け大容量ネットワークであるdocomo business APN plusを提供しており、AI利用を前提とした日本初のセキュリティ搭載型ネットワークも実現している」と成果を示した。
「マネージドセキュリティ」に関しては、「フロンティアAIの進化によって、サイバー攻撃には、マシンスピードで対応する必要がある。NTTドコモビジネスが、長年にわたってマネージドサービスとして提供してきたセキュリティの知見を組み込んでいる。従来は数時間かかっていた大量ログの分析を10分で行えるようになり、特定した脅威を自動的に除去することができる」と述べた。
クローズドAIエージェントやTrusted Data Fabricの推進
小島社長 CEOは、今後の取り組みとして、「プラットフォームのさらなる進化」、「重点4領域のさらなる強化」、「パートナーリングのさらなる強化」の3点を挙げ、「AI実装力を新たなステージに引き上げ、次の成長につなげる」と、新たな方針を打ち出した。
「プラットフォームのさらなる進化」では、トラステッドAIおよびトラステッドデータ、分散コンピューティング、AIOpsおよびFinOpsがキーワードになるとした。
「AIを専門性の高いゾーンに広げる上で重要なのは、データの安全性とソブリンティである。技術文書や契約情報、顧客情報などの機密データを外部に出さずに、高度なAI活用を実現することが求められている。NTTドコモビジネスでは、業務データやプロンプトを外部へ送信せずに、専用環境で利用できるクローズドAIエージェントを提供している。重要データを自社の管理下に置き、ソブリンティを確保しながら、高度なAI活用を実現することができる」と述べた。
また、今後は、「Trusted Data Fabricと呼ぶアーキテクチャが重要になる」と指摘。AIを信頼して任せる仕組み、AIが使えるデータを格納する仕組みを重ねて提供することで、安全性の問題から使えなかったデータが使えるようになり、他社間でも安心してAIやデータが連携できるようになるという。
「Trusted Data Fabricは、AIの統制および制御を行うTrusted AI、AIの身元証明や認証、認可を行うTrusted Identity、機密データの活用および共有を行うTrusted Data Accessの3つの機能を提供することになる」と位置づけ、「10月7日にTrusted Data Fabricの詳細を発表する」と語った。
さらに、「AI時代であるからこそ、必要なときに必要な規模を柔軟に利用できる環境が求められており、分散コンピューティングが重要になる」と説明。国内最多となる70拠点のデータセンターを運用していること、GPUaaSと占有型GPUによるハイブリッド利用が可能な環境を日本で初めて提供すること、国内初となる大規模なAI処理を実現する分散GPU実証環境を提供していることを強調した。
特に、AIデータセンター向けに提供を開始したコンテナ型データセンターでは、「AIデータセンターアライアンス」を発足し、パートナー企業が所有する遊休地を活用した「コンテナDCパーク」を構築。「さまざまな企業と協議を進めているところである。準備が整い次第、順次発表していく」と、この取り組みが順調に進展していることを裏づけた。
AIOpsについてはすでに実装を開始しており、工程情報や障害履歴など、顧客ごとの運用データなどをAIで分析し、予防的対応を進めていることを紹介。また、FinOpsでは、AIモデルからSaaS、NaaSに至るまで、利用状況を横断的に分析し、必要な性能を維持しながら、リソースとコストのバランスを考慮し、最適化を図ることができることを示した。FinOpsは、2026年度下期の提供に向けて準備を進めているという。
「重点4領域のさらなる強化」を目指すFDE体制拡大とNTTデータ連携
今後の取り組みの2つ目として挙げた「重点4領域のさらなる強化」では、「AI実装を加速する伴走力を強化することが大切であり、特に、AI実装人材とセキュリティ対応強化が重要になる」と述べ、同社におけるFDEの取り組みについて触れた。
NTTドコモビジネスでは、AI活用人材として全国に1万4000人が在籍しているが、そのうち「業務特化型FDE」を、現在の500人から2027年度には1000人体制へと拡大。また、地域および中堅中小企業に向けて現場で伴走する「FDEライト」を5000人体制に拡大する計画を打ち出した。
小島社長 CEOは、「大企業に向けては、高度なFDEによって、AI導入支援を行うことになる。その一方で、地域および中小企業においては、AI導入ニーズがありながらも、社内の人材が限られていたり、社外からの支援を受けにくかったりする状況にある。そこで、FDEライトが、地域密着型で、全国のお客さまのAI活用を支援することになる」と位置づけた。
また、セキュリティ対応の強化では、NTTドコモビジネスとNTTデータの知見を組み合わせることで、アプリケーションからネットワークまでを対象に、修復、継続運用に至る一貫した対応が可能な体制を構築したことを示しながら、「NTTドコモビジネスとNTTデータが提携したのは初めてのことである。複数のフロンティアAIを活用して、自律的に脅威や脆弱性を発見し、対策を提案することになる」と述べた。
「パートナーリングの強化」による製造・物流・地域へのAI社会実装
3つ目の取り組みとして挙げた「パートナーリングのさらなる強化」では、産業および地域に向けたAXの展開と、パートナーの拡大を挙げ、社会実装に向けた共創拡大や、顧客接点の拡大を進める考えを示した。
AI-Centric ICTプラットフォームを活用したスマートファクトリーにおける社会実装としては、デジタルツイン技術を組み合わせて、製造現場における設備やロボット、人が連携して、さらなる改善や最適化、自律化を目指す仕組みを構築しているという。
また、サプライチェーン領域における社会実装では、全国にスーパーを展開するトライアルとともにAI-Centric ICTプラットフォームを活用した業界横断のデータ活用を実現。企業を超えたサプライチェーン全体の最適化を推進しており、1社では効果を出しにくい過剰生産や過剰在庫の削減、販売機会の損失を減らすことができたと説明した。
さらに、スマートシティにおける社会実装では、熊本県菊陽町や北海道千歳市において、半導体産業と連携した地域の未来づくりに取り組んでいることを紹介。全国のAI人材を活用し、地域の未来構想の実現に貢献していることを示した。
このほか、NTTドコモビジネスが2025年度から新たなパートナープログラムをスタートさせたことを紹介。同社が提供するサービスやソリューションを、全国、地域、業界に展開するパートナーは約200社にまで拡大しており、「パートナーとともに顧客基盤を拡大させ、事業成長を加速させる。パートナーを通じた収益率を、現在の約20%から、2035年度には50%にまで高めたい」と述べた。
「テクノロジーロードマップ2026年度版」の公表
なお、同社では、「テクノロジーロードマップ2026年度版」を公表した。
同社が取り組む技術領域を、「AI/ロボティクス」、「IoT/データ/デジタルツイン」、「オーケストレーション」、「データセンター/量子」、「セキュリティ」、「ICTインフラ(IOWN)」、「宇宙/モバイル」の7つの領域に整理し、それぞれを短期(2026~2027年)、中期(2028~2030年)、長期(2031~2035年)の3つの時間軸にわけて技術進化の方向性を提示している。各領域の技術が生み出す価値を、具体的なシナリオとともに解説している点も特徴だ。
また、3つの未来社会像として、産地や製造、物流をつなぎ、変化に強い産業基盤を目指す「産業構造のアップデート」、暮らしや環境の変化を先読みし、都市と地域が自ら応える社会を実現する「都市と地域のアップデート」、距離や違いを超えて、人の力と知恵が活きる社会を目指す「技能と身体のアップデート」を掲載している。
小島社長 CEOは、「NTTドコモビジネスは、先端技術をいち早く取り込むことで、プラットフォームを継続して進化させていく」と語った。



















