ニュース
パナソニック コネクトのケン・セイン グループCEOが目指す「次の成長段階」とは?
2026年9月24日 06:30
パナソニック コネクトグループのケン・セイン(Ken Sain)グループCEOが、合同取材に応じた。
セイン グループCEOは、「これまでの変革の成果を土台にし、パナソニック コネクトを次のステージへと導く。お客さまの現場改革の支援に向けて、より強力なパートナーへと進化する」との方針を示した。
「One Connect」で事業の強みを統合
2026年4月にグループCEOに就任してから、記者会見を行うのは初めてとなる。
セイン グループCEOは、「半年間をかけて、コネクトグループの各事業部門をまわった。それぞれに独自の強みがあり、ほかの事業と共有できる部分があることもわかった」とした上で、「私の最初の目標は、パナソニック コネクトグループ全体にベストプラクティスを展開し、One Connectとして、各事業が持つ特徴を最大限に発揮できるようにすることである。これまでに築いた良いモメンタムを加速させ、次の成長段階へと進んでいきたい」との意気込みを示す。
また、「パナソニック コネクトグループには、強い事業、強い人材、お客さまとの深い関係がある。次なる成長は、これらの強みを、より効果的につなぐことで生まれる。ハードウェア、サービス、ソフトウェア、データ、AIのすべてを組み合わせ、ビジネスの成功と、持続可能でレジリエントかつ効率的な社会に貢献する」とも語った。
前任の樋口泰行氏は、3つの事業を売却し、9つの事業を終息し、5つの工場閉鎖を行って25%の人員を削減。その一方で、ソリューション人材比率を29%から51%にまで拡大させるという改革を推進した。また、社内のカルチャー変革を通じて、遅くて、重たいパナソニックからの脱却を図った。2017年4月のコネクティッドソリューションズ社の発足を起点にすれば、そこからの9年間は、まさに変革の経営であった。だが、コロナ禍による事業環境の激変の影響などもあり、力強い成長には至らなかったという反省もある。
これに対して、セイン グループCEOが今回打ち出した方針は、成長を重視するものであることがわかる。
セイン グループCEOは、「パナソニック コネクトのソリューションの強みは、MIF(Machines In the Field=顧客の現場に設置および稼働している製品)である。世界中でお客さまの現場で、膨大な数の機器が稼働しており、現場データやオペレーションに関する知見の獲得、お客さまからの信頼やサービス機会の創出にもつながっている。パナソニック コネクトの主要事業は、強固な市場ポジションを有しており、世界シェアNo.1の事業も多く、幅広い顧客接点を持っている。ハードウェアの強みを活用し、サービスとソフトウェアへと領域を拡大して、お客さまのための価値を生み出していく。成長への道筋は、MIFからメンテナンス、オペレーション、BPO、ソフトウェア、エンジニアリングへと事業を広げていくことである。製品中心の事業からサービスやエンジニアリングを通した継続収益型の事業へと成長させ、ビジネスモデルを進化させる」と述べた。
2030年にソリューション売上比率7割を目指す
パナソニック コネクトグループは、ミッションクリティカルな現場領域において、ソリューションの開発、製造、販売、サポートを行い、サプライチェーン、公共サービス、生活インフラ、エンターテインメント、航空などの環境を支えている。世界で2万9100人の社員を擁し、2025年度の売上高は約1兆3800億円となっている。
セイン グループCEOは、「パナソニック コネクトグループは、工場、倉庫、店舗、インフラ、公共サービス、航空機など、実際に仕事が行われる現場に直接関わっている。当社にとって重要なのは、事業規模以上に、お客さまの現場にどれだけ近い存在となり得るかということである」と語る。
パナソニック コネクトは、機内エンターテインメントシステムを手掛ける「パナソニックアビオニクス(PAC)」、サプライチェーンソフトウェアの「Blue Yonder」、半導体製造装置や実装機などを手掛ける「回路形成プロセス事業部(CPBD)」、国内ソリューションビジネスを担当する「現場ソリューションカンパニー(GSOL)」、レッツノートやタフブック、タブレット、決済端末を担当する「モバイルソリューションズ事業部(MSBD)」、溶接機や溶接ロボットなどの「溶接プロセス事業部(WPBD)」、高輝度プロジェクター事業を行う「パナソニックプロジェクター&ディスプレイ(PPND)」の7つの事業部門で構成している。
「それぞれの事業には共通項がある。いずれもミッションクリティカルな基幹業務に、現場オペレーションで携わっている点である」とし、「お客さま向けソリューション事業を拡大するための投資を継続的に行っており、ソリューションの比率が拡大している。リカーリングビジネスの規模も増えている。ソリューション人材の比率も高まっている。売り上げの質と、事業のレジリエンスが向上している。持続可能な収益力、より優れた実行力、質の高い成長を重視している」と自信を見せた。
パナソニック コネクトの2025年度実績ではソリューションの売上比率は65%だが、2030年にはこれを7割程度にまで引き揚げ、ソリューションが引き続き成長を牽引することも示した。
また、Blue Yonderについては、「全世界の企業がSCMに注目している。そのなかで、Blue Yonderは、SCMプラットフォームとしての完成度を高め、AIの統合を図り、規模の拡張を図っている。また、高い成長を遂げているだけでなく、顧客満足度は、数年前と比べても比較にならない水準となっており、お客さまからの信頼を得ている」と語った。
セイン グループCEOのバックグラウンド
セイン グループCEOは、1997年に米国ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院でMBAを取得し、1999年に、A.T. カーニー経営コンサルタント プリンシパル/マネージャーとして、運輸および物流企業の戦略コンサルティングに携わった。
「専門分野は航空やサプライチェーンである。このときの経験により、表面的なシステムを見るのではなく、意思決定の遅さ、情報の流れの悪さ、十分に活用されていない資産、適切なツールを持たない現場チームなど、根本的なオペレーション上の課題を見ることを学んだ」とする。
2008年にボーイングコマーシャルアビエーションサービスでディレクターに就き、2011年には、ボーイングプロフェッショナルサービス マネージングディレクター、2016年にはボーイングデジタルアビエーション COOに就任。2017年には、ボーイング傘下だったジェプセンのCEOに就任するとともに、兼務でボーインググローバルサービス デジタルソリューション・アナリティクスの副社長に就任した。
「戦略オペレーション、ソフトウェア、デジタルソリューションを経験するなかで学んだのは、方向性を決定するのは戦略だが、実際の成果を生むのは、現場での実行であるということ。これは、いまの私の考え方の根幹となっているものである」と語る。
2019年に、パナソニック入りし、航空機向けの機内エンターテインメントシステム、コネクティビティデジタルソリューション、メンテナンスサービスを提供するパナソニック コネクト傘下のパナソニック アビオニクスのCEOに就任し、現在でもその職を兼務している。
また、2022年には、パナソニック コネクト エグゼクティブ・ヴァイス・プレジデント、2025年には、パナソニック コネクトのシニア・エグゼクティブ・ヴァイス・プレジデントに就いていた。
パナソニックグループの事業会社としては、初の外国籍プレジデントとなる。
「パナソニック アビオニクスのCEOとして学んだのは、困難な状況であるほど、企業の本当の姿が鮮明に現れることである」とし、「入社してすぐにコロナ禍となり、航空業界は大きな打撃を受けた。だが、これはパナソニック アビオニクスにとって、危機であると同時に、私たちがどんな企業であり、今後どんな企業になるべきかを見つめ直す機会になった」と振り返る。
続けて、「アビオニクスは単なるサプライヤーと見られていた。だが、コロナ禍で航空会社が必要としていたのは、自社の課題を理解するパートナーであった。乗客の体験を向上させ、複雑さを軽減し、パンデミックを乗り越え、その後の回復に備えるためのパートナーを求めていた。テクノロジーを売る企業がパートナーではない。ともに、ビジネスの成功を生み出す存在がパートナーである。アビオニクスは、お客さまとともに課題を解決する真のパートナーへと姿を変えた」と位置づけた。
「ASTROVA」の成功モデルを全社へ
この変革の柱となったのが、機内エンターテインメントシステム「ASTROVA(アストローバ)」であった。
「ASTROVAは、単なる製品のアップデートではなく、業界全体における価値創出の在り方を再設計したものである。乗客の体験を向上させるだけではなく、ライフサイクルコストの低減、軽量化、サステナビリティを実現した航空会社向けプラットフォームとして投入した。これにより、デジタルサービスを通じて、航空会社と乗客とつながるための新たな基盤を生むことにつながった」と語る。
ASTROVAの導入によって、乗客はパーソナライズされた体験ができるようになり、航空会社は乗客とのエンゲージメントを高めることができたという。
また、航空機に搭載される機内エンターテインメントシステムは、使用期間が長い一方で、コンシューマ向けテクノロジーの進化が速く、そのギャップを埋めにくいという課題があったが、ASTROVAは、独自のモジュール設計を導入し、機体に搭載したままハードウェアを更新できるようにすることで、より低いコストでより大きな事業価値を提供できるようにした。これは業界で初めての取り組みだったという。
その結果、ASTROVAは、従来の3倍のスピードで導入が進み、40社以上の航空会社に採用。累計受注は50万座席以上となっている。
「ASTROVAは、史上最速で普及した機内エンターテインメントシステムとなった。この成功を生んだのは、お客さま中心の考え方であった。どんなテクノロジーだったら売れるのかではなく、乗客にとってより良い旅とは何かを考え、航空会社にとって成功とは何かを追求した。それが、価値を生み出した。機内エンターテインメントシステムは、座席に設置しているスクリーンから、航空会社のブランド価値を高める新たなデジタルチャンネルへと進化した」と、その成功の理由を説明。
その上で、「変革とは、単なるテクノロジーのトレンドではなく、航空会社と乗客の双方により大きな価値を生み出すビジネス機会になる。この考え方は、パナソニック コネクト全体にも当てはまる。この考え方に従って、お客さま中心の姿勢で、パナソニック コネクトを率いていく」と述べた。
顧客起点で進める3つの優先事項
また、「社員に伝える方向性は極めて明確である」と前置きし、「お客さまの現場オペレーションに、さらに深く入り込み、外部から訪れる人間ではなく、パートナーとして、業務フロー、制約、機会を理解することを重視している。パナソニック コネクトの価値は、現場の課題を起点とすることで生まれる。強みは製品ではなく、現場の理解、幅広いテクノロジー、お客さまとともに課題を解決し、データ、人、設備、意思決定をつなぐ力にある」とした。
セイン グループCEOは、重点事項として、「お客さま起点の価値創造」、「人材の可能性を最大限引き出す」、「お客さま・パートナーとの共創」の3点を挙げた。
「現場に寄り添い、お客さまが日々直面する課題を理解し、お客さまのビジネスニーズから価値を定義していく。また、人と組織を強化し、より迅速に対応し、より明確に考え、より確信を持って行動できるようにする。そして、お客さまの課題は、1社だけで解決するには複雑すぎるため、お客さまの知見、パナソニックのテクノロジーとリソース、パートナーの能力を組み合わせることで、市場をリードするようなソリューションを生み出す」とした。





