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「2026年はAIが業務を完遂するようになる」――AI insideがAIのトレンドを予測
2026年1月16日 12:11
AI inside株式会社は15日、2026年のAIトレンド予測について説明会を開催した。説明にあたったAI inside 代表取締役社長 CEOの渡久地択氏は、これまでのAIの発展と現状を振り返ったうえで、「今後1年でAIは、チャットなどのコミュニケーションだけでなく、実際に仕事をこなすようになるだろう」と述べた。
渡久地氏によると、AIの進化を支える要素は、計算リソース、アルゴリズム、データ量の3つ。それぞれの要素について渡久地氏は、「過去4年でAI向けの計算リソースは約100倍に拡大し、アルゴリズムの精度も毎年3~4倍のペースで向上してきた。データ量も爆発的に増加し、インターネット上のデータは枯渇するともいわれている。これらを掛け合わせると、AIの性能は4年で1万倍にもなっている」と話す。
また渡久地氏は、過去1年を振り返り、「AIは単なる計算機から、国家の主権や文化、経済安全保障を左右する基盤になりつつある。防衛、医療、金融といった重要分野でAIが停止するリスクは看過できず、各国で国産AIの必要性が議論されるようになった」とする。
ビジネス面では、AIエージェント元年といわれた1年で、より高度なタスク処理への期待が高まった。モデルの能力も拡大し、長時間タスクをこなすモデルも登場したが、「運用体制は整わなかった」と渡久地氏。企業内データの扱いや、国外サーバーにデータを送ってよいのかといった懸念点もあり、業務プロセスをAIに任せる段階までは進まなかったという。
「仮に昨年の段階でAIを業務に投入した場合、時間と責任という2つの問題に直面しただろう」と渡久地氏はいう。短いタスクであれば高い精度を発揮するものの、長時間の業務では誤りが連鎖し破たんするリスクもある。また、AIに任せたことで生じるミスの責任分界もあいまいだったことから、業務運用には至らなかったと渡久地氏は分析している。
今後AIに長いタスクを任せるには、責任の分界をどう定義するかが重要だと渡久地氏は語る。「AIが誤った場合に誰が責任を負うのか、どこまでをAIに委ねるのかといった基準が必要。この点は議論されながらも明確な結論が出ていないが、2026年にはこの領域が標準化されるのではないか」と渡久地氏は述べている。
技術的には、すでにAIによる長時間業務も可能になっている。例えばAnthropicのClaudeでは、Opus 3.5の段階で7時間連続のコーディングが可能になり、Opus 4では24時間連続でゲームをプレイしてクリア、さらにSonnet 4.5では30時間以上の自律コーディングができるようになった。
これは、AIが思考を段階化し、途中で戻って確認し、もう一度試行するという「プラン」「アクト」「チェック」のような基本動作ができるようになったためだという。こうしたモデルの登場により、「考えて答えを出すことがAIの基本動作となった。その結果、長時間タスクをこなす能力がどんどん伸びている」と渡久地氏は説明する。
すでにAIのモデル性能は十分高まっていることから、渡久地氏は「競争軸がモデル性能から『安心して任せられる運用』へと移っている」と話す。精度に対する議論は終わり、長く動き続けられる自律型AIを前提に、「失敗の連鎖をどう制御するか、責任をどう扱うかといった運用がポイントになるだろう」と渡久地氏はいう。
そのために必要なのが「責任の持ち方を設計すること」だ。誰が責任を負うかではなく、どのように責任を分担して業務プロセスを設計するかが重要になるという。業務の目的を人間が定め、どこまでAIに任せるかを事前に決め、実行部分はAIが担い、完了後の是正やルール更新は人間が行うといった具合だ。
単発タスク中心の導入では必要なかった設計だが、業務を完遂するには重要な点だ。「2026年は企業側の評価軸も、AIで何ができるかではなく、AIで業務を完遂できるかどうかへと変わっていくだろう」と渡久地氏は述べている。
なお、市場ではAI投資がさらに加熱する一方、「タスク単位のAIや学習前提のAIは淘汰(とうた)が進む」と渡久地氏は見ている。導入の単位もタスクではなく、見積もりから契約獲得までといった業務全体へと広がり、どこで人間が介入するかを含めたワークフローの設計が求められる。これに伴い、企業内の実データの重要性が増し、RAGの価値も高まっていくとの見方を示した。
さらに渡久地氏は、企業内のデジタルデータだけでなく、「現場の状況を把握するリアルタイムのデータも不可欠になる」と語る。2026年には学習に用いるデジタルデータが枯渇するといわれる中、リアルワールドのデータや合成データを活用する流れが強まり、「現実を観測し続けるPhysical AIも重要なテーマになるだろう」と渡久地氏は述べている。
最後に渡久地氏は、「2026年に重要になるのは業務完遂AI。AIが長く働けるようになったことで競争軸は運用へと移り、責任設計が不可欠になる。企業のAIを使いこなす力にも差がついてくるだろう」と締めくくった。






