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リコージャパンが中堅・中小規模の製造現場DX事業を強化、ネクスタと資本業務提携

 リコージャパン株式会社は26日、製造業の製造現場DX(デジタルトランスフォーメーション)推進のため、製造業向けサービスを開発する株式会社ネクスタと資本業務提携を行うと発表した。製造業では、バックオフィスに比べ製造現場のDXが進んでおらず、リコージャパンは、「今回のメインターゲットとなる中堅・中小の製造現場DXは、伸びしろが大きい重要市場」(リコージャパン 取締役常務執行役員の宮本裕嗣氏)として、この分野でのビジネスを強化する考えを示した。

 今回の提携で、ネクスタが開発した製造業DX基幹システム「SmartF」を軸とした製造現場のDX、リコージャパン社内の製造ソリューションを提案する人材の育成などを行い、2030年までにリコージャパンの顧客1000社へのSmartF導入を目指す。

今回の協業について

 リコージャパンとネクスタは資本業務提携を行うが、「具体的な金額等は非公開とするが、経営権などに関わるようなパーセンテージにはならない」(ネクスタ 代表取締役の永原宏紀氏)としている。

株式会社ネクスタ 代表取締役の永原宏紀氏(左)、リコージャパン株式会社 取締役常務執行役員の宮本裕嗣氏(右)

 リコージャパンの顧客のうち、製造業向けの年間取引構成比は17.5%で、そのうち中堅・中小企業の割合は34.2%。リコージャパン全体から見ると決して大きな割合ではないが、「中堅・中小企業のお客さまは、バックオフィスのDXは進んでいるが、製造現場のDXは進んでいないことが多い。その分、伸びしろが大きいと感じている」(リコージャパンの宮本常務執行役員)と分析。中堅・中小企業の製造現場DXを重要市場と位置づけ、ビジネスを拡大につなげたいと説明する。

リコージャパン株式会社 取締役常務執行役員の宮本裕嗣氏

 製造現場のDXが進んでいない理由について、多くの製造現場へのシステム導入経験を持つネクスタの永原代表取締役は、「製造現場はとても複雑で、それぞれ独自の業務フローを導入している」ことを挙げる。

 「複雑な仕組みだけに、システム導入にあたっては個別カスタマイズが当たり前で、数千万円を超える導入コストとなるケースが多く、中堅・中小規模の製造業にとっては導入が難しい状況にある。しかも、現場への落とし込みがとても難しく、導入してもうまく運用できていない企業が多い」(ネクスタの永原代表取締役)。

 ネクスタの創業者で代表取締役である永原氏は、キーエンス勤務後、父親が創業したシステム開発会社で新規事業をスタート。その後、独立し、製造業のIT化に取り組むネクスタを設立した。

株式会社ネクスタ 代表取締役の永原宏紀氏

 「キーエンス時代、システム開発会社時代に多くの製造業のお客さまを見てきた。そうした経験を生かして開発したSmartFは、個別カスタマイズが不要で、業務が複雑な幅広い現場にフィットし、低コストで導入できる。また、導入後に運用がうまくいかないという事態を防ぐために、全顧客に既存業務と導入後業務のBefore/After設計を行う提案力、手厚い導入支援を強みとしている」(ネクスタの永原代表取締役)。

 SmartFは、受注から計画・発注・生産・在庫など、工場生産にまつわる一連の業務を効率化するシステム。幅広い製造現場への導入が可能で、食品、化粧品、衣料品、産業機械、組立部品、金属加工、樹脂部品、基板部品、自動車部品、化学品など、幅広い業界への導入実績があるという。

 製品はクラウドベースで、段階的な導入やトライアル導入に対応するほか、幅広い機能を備え、複雑な要望にも個別カスタマイズをせず、詳細な機能や設定で対応可能になる点が特徴という。また、現在も週に1回のアップデートを行っており、今後もさらに機能拡張を続けていく。

 さらに、現場に詳しいネクスタならではの運用提案力を持ち、迅速な営業対応が可能な点も強み。業務改善提案付きのサポート体制も持つため、導入したものの使えないという状態になることなく、継続して利用していけるとした。

SmartF
ネクスタの競争優位性

 このスマートF提供開始後、ネクスタの業績は拡大し、ストック売上は直近2年半で約7倍に拡大。従業員数は2023年3月時点では19人だったが、2025年3月には120人にまで拡大している。

 リコージャパンは、こうした実績を見て提携を決定した。「これまで、全国規模での販売は行っていなかった。これから全国規模での販売をスタートし、1000社導入を実現したい」(リコージャパンの宮本常務執行役員)。

 また、現在リコージャパンで進めているスペシャリスト人材の育成においてもネクスタとの連携により、製造ソリューションエバンジェリスト120人の育成を目指すとしており、製造DXを実施する際の核となる、知識、技能を持ち、成果を出せる社員を育てていく考えだ。

 ネクスタ側でも、「複数の販売パートナーと取引を行ったが、顧客基盤と営業リソースが多く、ソフト販売経験も豊富で、営業力があり、会社としてDXを推進しているといった当社が求める条件に最も合致しているのがリコージャパンだった。その結果、今回の戦略的提携に至った」と説明している。