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“第3のプラットフォーム”が激震に――IDC Japan、2014年IT市場の主要10項目を発表

 IDC Japan株式会社は6日、2014年の世界IT市場のトレンド主要10項目を発表した。「第3のプラットフォーム」、すなわちモバイル、クラウド、ビッグデータ、ソーシャルによってもたらされる成長と革新によるインパクトがメインテーマとなる。

 IDC シニアバイスプレジデント兼チーフアナリストのフランク・ジェンス氏は「2014年にはクラウド、モバイル、ビッグデータへ主要なプレイヤーによる大規模な投資がみられ、今後10年間におよぶIT投資をけん引するソリューションを創造する開発者の心を掴む、し烈な争いを目撃することになる。IT業界の外では、第3のプラットフォーム技術が他産業すべてで価格破壊を引き起こす『アマゾニング』をリードすることになると見ている」と語る。

(1)世界のIT支出

 2014年の世界IT支出は前年比5%増の2.1兆ドル。第3のプラットフォームがけん引する。スマートデバイスの成長は依然として猛烈な勢い。サーバー、ストレージ、ネットワーク、ソフトウェア、サービス市場も2013年を上回る成長を示す。PC市場だけは前年比マイナス6%の成長となる。

(2)新興国のIT支出

 新興市場は10%成長に戻り7400億ドルとなり、世界IT市場の35%を占め、初めて世界IT市場の増加分の60%以上を占める。BRIC諸国では、IT支出は前年比13%成長となり、中国経済の回復がけん引する。中国のIT市場規模は米国市場の1/3であるが、中国のIT投資の増加額はドル換算で米国の増加額と同じ規模になる。そのほかの地域は成長率が不均衡であり、ポストBRIC時代の到来を予感させる。

(3)第3のプラットフォームの成長

 第3のプラットフォームは2014年のIT支出の29%、およびIT支出の増加率の89%を占める。第3のプラットフォーム上では付加価値がスタックの上位レイヤに移行する。すなわち、IaaSからPaaSへ、汎用PaaSからデータ最適化されたPaaSに移行する。後者はAWSによる一連のPaaSおよびビジネス向けサービスの発表が典型例と見る。第2のプラットフォームにおいてリーダーであった既存ベンダーも速やかに第3のプラットフォームでの戦闘態勢を整える必要がある。

(4)モバイル市場の競争

 モバイルデバイスの成長は2014年も続き、タブレットは18%、スマートフォンは12%の成長が見込まれる。Samusungが率いるAndroid連合は出荷台数でのAppleに対する優位性を維持し、Appleは単価とエコシステムでAndroidに対する優位性を保つ。しかしながら、Google Playのアプリダウンロードと売上は急速に追い上げており、2014年にはAppleとの差を縮める。モバイル開発者からのサポートを2倍に高める必要があるMicrosoftに残された時間は少なく、タイムリミットが近づいている。

(5)クラウド支出の大幅増

 クラウド支出は25%急増して1000億ドルを突破する。Amazonと競合する従来型のIT企業が息を吹き返す。こうした企業のクラウドデータセンター数の伸びはめざましく、グローバル規模に達するとIDCは予測する。この動きに伴って、業種特化型のIaaSサービスが増化し、クラウドサービス事業者の差別化機能となる。クラウドベースアプリ開発者間の競争が激化し、市場の伸びを後押しする。

(6)ビッグデータへのIT支出の急増

 ビッグデータへのIT投資は2014年に30%増加して140億ドルに達し、ビッグデータアナリティクスへの需要が供給能力を上回る。データ最適化されたクラウドプラットフォームの競争が始まる。これは大容量のデータやリアルタイムのストリームデータを処理できるものとなる。

(7)ソーシャル技術の組み込み

 ソーシャル技術は今後12~18カ月にわたり、企業アプリに統合されていく。顧客へのエンゲージやマーケット戦略に欠かせない構成要素となることに加え、ソーシャルアプリがもたらすデータが、製品・サービス開発プロセスに欠かせないものとなる。また、エンタープライズソーシャルネットワークが、クラウドサービス事業者から標準サービスとして提供されることになると予測。これにより、企業はソーシャルをワークフローに組み込むことが可能になる。

(8)データセンター投資の拡大

 クラウドに特化したデータセンター数が増え重要性が拡大するとともに、サーバー、ストレージ、ネットワークの市場がクラウドサービスによってけん引されるようになり、システムのコンポーネント化/コモディティ化が進む。そしてインテグレーテッドシステムとクラウドサービス事業者がデータセンター投資をけん引する。

(9)第3のプラットフォームによる市場再編

 第3のプラットフォームはすべての業種で市場シェア上位企業のシェアを浸食できるような、次世代の競争優位性をもたらす。これらの業種で競争に打ち勝つには、業種にフォーカスした革新的なプラットフォームを作り出す必要がある。このようなプラットフォームはイノベーターコミュニティを実現し、今後数年の内に同様のコミュニティが10個から100個程度生み出されると予測。これらの産業プラットフォームで使われるクラウドは新規に作られるのではなく、Amazon、Microsoft、IBM、Salesforceといった上位ベンダーと、そのほかのベンダーのクラウド上に構築されると見る。2014年、これらのITリーダーにとって、こうした産業プラットフォームでビジネスを勝ち取ることがビジネスクリティカルな課題となる。

(10)IoT(Internet of Thing)が第3のプラットフォームの成長を加速

 第3のプラットフォームは、2014年にスマートフォン、タブレット、PCを超えてIoTに広がっていく。2014年はIoT基盤が形成される年になるが、既存のITベンダーがグローバルの通信事業者や半導体ベンダーとの協業を加速し、家電やコネクテッドデバイス領域で統合製品やサービスを提供するという、新しい産業形態が生まれると見る。この種の協業・連携によって、2020年までに自律的に接続されるエンドポイントは300億台、IoT市場の売り上げは8兆9000億ドルに達すると予測する。

川島 弘之